「原審判決を破棄する。被告人は無罪」
30日午前、ソウル瑞草洞(ソチョドン)のソウル高裁505号法廷。裁判長が判決を終えると、被告人席でチャン・ウィギュンさん(66)が静かに頭を下げた。1987年「在日留学生スパイ団事件」に巻き込まれて投獄され、30年間付きまとっていた「スパイ」のレッテルから解放されたチャンさんは、「ありがとうございます」と何度も繰り返した。
ソウル高裁刑事10部(裁判長イ・ジェヨン)は同日、国家保安法違反の容疑で8年間刑務所に入れられたチャンさんに対し、再審で無罪を言い渡した。裁判部は「有罪の証拠が相当部分、不法逮捕・監禁など違法行為で得られたものであり、証拠能力がない」として、このように判断した。
チャンさんは、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権の終盤に企画されたスパイ事件の被害者だ。日本留学生時代、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)所属の在日朝鮮人たちと接触し、スパイ活動を行った容疑で、1987年7月拘束起訴された。令状なしに不法逮捕された後、国軍保安司令部(保安司)で監禁された中で行った虚偽の自白を根拠に、懲役8年の確定判決を言い渡された。当時、裁判過程で「10日間寝かせてもらえず、たくさん殴られた。事実通りに供述書を書いても修正を強要され、認めていないにもかかわらず、(自白趣旨で)書かれた部分が多かった」と主張したが、認められなかった。服役中にも何度も転向を迫られたが、「やってもいないことを認めるわけにはいかない」として収監生活に耐え続け、1995年に満期出所した。再び「被告人」として法廷に立つのが怖かった彼は、2014年10月にようやく再審を請求した。
裁判所は、チャンさんを連行して捜査する過程が違法だったことを確認した。裁判所は「チャン氏は相当な期間監禁された状態で、弁護人の助力もなく取調べを受けた」とし、「虚偽の供述を誘発したり、強要する危険がある状態で行われた自白の供述には証拠能力がない」と述べた。また、チャンさんが家族に日本の朝鮮総連活動などを紹介したことについても「大韓民国の存立や安全に危害を加える明白な危険性があったとは断定できない」と判断した。夫人のユン・ヘギョンさん(62)は、ハンギョレとの電話インタビューで、「30年ぶりに名誉を回復したが、国の違法行為に苦しめられた個人が直接乗り出さなければならない現実が残念だ」とし、「被害者たちに任せるよりも、政府が過去事問題の解決に、より積極的に乗り出してほしい」と語った。