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[ニュース分析]韓米、最先端兵器の導入に合意…北東アジア軍備競争の懸念も

登録:2017-09-23 02:04 修正:2017-09-23 08:05
文在寅大統領が今月21日(現地時間)米ニューヨーク国連本部で開かれた第72回国連総会で基調演説をしている間、最前列に座った北朝鮮代表団がこれを見ている=ニューヨーク/キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 国連総会に出席するために米国を訪問した文在寅(ムン・ジェイン)大統領の外交・安保の歩みは21日(現地時間)、両極端を行き交った。国連総会会場では朝鮮半島の平和の切迫性を訴え、核問題の解決と平和的・外交的・政治的努力を強調したが、その後開かれた韓米首脳会談では最先端兵器の導入に合意し、東アジアの軍備競争の軌道に乗った。

 韓米首脳会談が開かれるわずか1時間前に、文大統領は国連総会の舞台に上がり、「平和」と「ろうそく」をキーワードに基調演説を行った。彼は「私たちのすべての努力は戦争を防ぎ、平和を維持するためのもの」としたうえで、「過度に緊張を激化させたり、偶発的な軍事的衝突に平和が破壊されることがないように、北朝鮮の核問題を巡る状況を安定的に管理していかなければならない」と強調した。文大統領の大統領選挙キャンプに関与したある外交・安保専門家は「文大統領の国連演説で最も印象に残ったのは『平和は紛争を平和な方法で扱う能力を意味する』というロナルド・レーガン元米大統領の言葉を引用した部分」とし、「平和は平和的手段としてのみ達成できるという点を強調したもの」だと話した。

 しかし、国連演説直後、文大統領はドナルド・トランプ米大統領と首脳会談を開き、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対抗し、韓国が米国から最先端兵器を導入したり独自開発して国防力を強化することで合意した。韓国と周辺地域における米国の戦略資産の循環配備も拡大することにした。大統領府のパク・スヒョン報道官は、首脳会談直後の記者会見で、「両国首脳は北朝鮮の脅威的な行動を抑制し、非核化に向けた措置を取るため、北朝鮮に対する最高強度の圧迫と制裁が必要ということで意見の一致を見た」と明らかにした。文大統領はまた、首脳会談の冒頭発言では、前日トランプ大統領の国連総会の演説について「非常に強烈な演説だったと思う。私はそのような力強さが北朝鮮を必ず変化させるものと確信する」と述べた。北朝鮮を多いに刺激したトランプ大統領の「完全破壊」発言に相づちを打ったのだ。

 文大統領が最先端兵器導入・開発に合意したのは、兵器輸出を重視するトランプ大統領と自主国防を強調してきた文大統領の政策方向が一致したためとみられる。トランプ大統領は「ロビイスト大統領」と言われるほど、兵器契約・販売承認に力を入れてきた。サウジアラビアを訪問し1100億ドルの武器販売契約を結び、中国の強力な反発が予想されるにもかかわらず台湾に13億ドル分の武器販売を承認した。彼が海外に向けた兵器販売に執着するのは、自分の国内政治基盤と深い関連がある。ロッキード・マーチンやボーイングなど米国の軍需業界は、米国内でも年俸が高い“質のよい”雇用とされる。また、兵器の購入はあまりにも大きな規模で取引されるため、後方産業への影響まで考えると米国の雇用創出に相当な寄与をするものと評価されている。トランプ大統領が「強い軍隊の再建」を掲げ、来年度の国防予算を10%増額させたのも、自分の積極的な支持基盤である白人労働者層の軍需業界での雇用を念頭に置いたものという分析もある。

 文大統領が先端兵器の導入に関心を注ぐのは、米国に頼らなくても北朝鮮の脅威に独自に対抗できる能力を確保するためだ。北朝鮮指導部に対する精密打撃戦力のキルチェーン、韓国型ミサイル防衛システム、大量反撃報復体系を内容とする「3軸体系」の早期構築は、戦時作戦統制権を取り戻すために文大統領が推進している独自的抑止力の確保と自衛権の増大の中核を成している。文大統領は原子力潜水艦の導入についても積極的な意志を示してきた。先端兵器の導入は北朝鮮の脅威による保守層の安保不安を鎮め、「強い安保大統領」というイメージを刻印させる国内政治的効果もあるものと見られる。

 問題はこの過程で朝中ロなど周辺国の懸念と強い反発が予想されることにある。韓国が防衛力を高めれば、周辺国が脅威を感じることになる、これまで韓国が感じていた脅威が一層大きくなる典型的な「安保ジレンマ」だ。朝鮮半島における緊張の高まりを武器販売の“チャンス”として利用しようとするトランプ大統領の“戦略”に次第に巻き込まれるのではないかという指摘もある。

 文大統領は同日、韓米首脳会談に続き、日本の安倍晋三首相も出席した韓米日首脳午餐会で、3カ国協力に対する意志を固めた。しかし、これもまた文大統領が国連演説で強調した多国間主義とは程遠い。彼は国連演説で「北朝鮮の核問題を根本的に解決するためには、国連憲章が示している安保共同体の基本精神が朝鮮半島と北東アジアでも実現されなければならない」とし、「北東アジアの安保の基本軸と多国間主義が賢明に結合されなければならない」と述べた。文大統領が言及した「多国間主義」構想の青写真は、北朝鮮の核・ミサイルの解決策に最も近いものと評価される9・19共同声明(6カ国協議共同声明、2005年)と、その履行計画である2・13合意(2007年)に盛り込まれている。北朝鮮が核・ミサイル廃棄に進む段階ごとに、停戦協定の平和協定への転換▽朝米、朝日国交正常化▽対北朝鮮経済・エネルギー支援などを交換する方式だ。朝鮮半島の非核化が完成段階に達すると、6カ国協議の参加国が安保・経済共同体を構築するという構想だ。文大統領が強調している韓米同盟を軸にした3カ国協力は、現存する北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対抗するうえで有用ではあるが、朝中ロとの対立・競争構図をもたらす。大統領府の事情に詳しい南北関係の専門家は「現在としては北朝鮮を圧迫して対話に導くために、3カ国協力体制が維持されているが、北朝鮮核問題の解決策の局面では多国間主義に進むしかない」としたうえで、「3カ国協力の枠組みの中で、多国間主義に向け漸進的に移動していくための空間を確保しなければならないが、現実的に容易ではなさそうだ」と指摘した。

チョン・インナン、キム・ジウン記者、ニューヨーク/キム・ボヒョプ記者、ワシントン/イ・ヨンイン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/812194.html 韓国語原文入力:2017-09-22 21:49
訳H.J(2831字)

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