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[書評]在韓米軍の防衛費分担金を計算し直してみると

登録:2017-07-07 03:56 修正:2017-07-07 09:07
『トランプ時代、防衛費分担金を正しく知る』(パク・キハク著、ハヌルアカデミー)//ハンギョレ新聞社

 2015年10月12日、米国のニューハンプシャー州マンチェスターの遊説現場で、ハーバード大学に在学していたチェ・ミンウさんは演壇の前に出て、当時共和党大統領候補だったドナルド・トランプ氏にこう語った。「事実関係を正したいと思います。韓国は(在韓米軍の駐留費用として)毎年8億6100万ドルを支払っています」。4日前にドナルド・トランプ米大統領が「フォックスニュース」に出演し、「我々は韓国を事実上タダで防御している」と発言したことに対する反論だった。トランプ氏はチェさんにこのように答えた。「ちょっと待ってください。実際の価値に比べれば、それは端金に過ぎません。端金です」

 パク・キハク「平和と統一を開く人々」(平統人)平和統一研究所所長が書いた『トランプ時代、防衛費分担金を正しく知る』によると、トランプ大統領のこのような主張は彼がついてきた数多くの嘘の一つに過ぎない。パク所長は、国内外の資料を幅広く検討すると共に、国防部など政府機関に情報公開請求を通じて確保したデータまで積極的に活用し、韓国の主権を侵害するレベルの違法かつ非合理的な防衛費分担の現状を暴いた。

 2013年第9次防衛費分担特別協定の交渉当時、米国は韓国に分担金の増額を要求した。2010年基準の韓国の防衛費分担金7904億ウォン(約773億円)は在韓米軍の非人的駐留費総額1兆6845億ウォン(約1647億円、そのうち米国の負担額は8941億ウォン<約874億円>)の46.9%に過ぎず、米国が半分ずつ分担することにした合意には及ばないという論理だった。

今月4月27日、慶尚北道星州郡ゴルフ場に電撃配備されたTHAADの装備=星州/キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 しかし、米国が除外した項目を入れて再び計算すれば 全く違う結果が出ている。韓国の間接支援と直接支援の中でもKATUSA(Korean Augmentation Troops to United States Army)の運営費や民間人所有の不動産購入費、米軍基地移転費などがそれに当たる。これを防衛費分担金と合わせれば、韓国国防部の集計を基にした2010年基準の在韓米軍支援額は1兆6749億ウォン(約1638億円)だ。同年、米国政府予算における在韓米軍の非人的駐留費は8941億ウォンだった。この数値を基に再計算すれば、韓国の分担率は65.1%となる。平統人が計算したこの結果に対し、国防部の防衛費分担の担当者は、平統人側に「防衛費分担金20年の歴史で最も画期的な事件」だとしながら、驚きを隠せなかったという。

 韓国の分担割合65.1%という数値も、国防部基準で計算したもので、これさえも平統人の判断では抜け落ちた項目が多い。米軍基地移転費用6967億ウォン(約681億円)以外にも▽土地賃貸料の低評価分5648億ウォン(約552億円)▽米軍の弾薬貯蔵・管理費973億ウォン(約95億円)▽弾薬庫の敷地・施設費のような間接費、部隊運営費がそれに当たる。このすべてを入れて計算すると、韓国の防衛費分担率はおよそ77.2%に達する。世界最高レベルだ。

 防衛費分担金の根拠となるものは、韓米駐留軍地位協定(SOFA・ソファ)第5条に対する特別措置協定(防衛費分担金特別協定)だ。SOFA第5条第1・2項によると、韓国は在韓米軍に施設と敷地だけを提供し、残りの在韓米軍のすべての運営維持費は米国が支払うことになっている。米国もこの点を知っているがために、SOFA第5条の適用を暫定的に中断する特段の措置を取るように韓国に強制した。それが「SOFA第5条第2項に規定した警備に加え、在韓米軍の韓国人雇用員の雇用のための経費一部を負担し、必要な場合は他の経費の一部も負担できる」とした、「防衛費分担金特別協定」だ。

 条項では「一部」とされたが、実際には大半であり、暫定的処置は1991年の施行以来、これまで続く常時的処置となった。もはや米国が負担すべき莫大な米軍基地移転経費まで、その大半を防衛費分担金として韓国に転嫁する方法として活用されている。そして、2017年度の韓国国防予算のうち、駐韓米軍関連予算は4兆6752億ウォン(約4580億円)に達する。平沢(ピョンテク)米軍基地移転費用も当初より6兆ウォン(約5886億円)も増えた16兆ウォン(約1兆5643億円)になり、両国が半分ずつ負担するという公表事実とは異なり、92%を韓国が支払うことになった。

 国防部は今年初め発表した「2016国防白書」は、朝鮮半島防衛の中心的役割を在韓米軍が担っているとし、防衛費分担の必要性を強調している。しかし、著者は「韓国の防衛費分担が多すぎるだけでなく、韓国の安保・財政主権を深刻に侵害する違法かつ非合理的なもの」だとしたうえで、在韓米軍が果たして韓国防衛の中心的役割を担っているのかを突き詰めて考えてみる必要があると主張する。

 著者によると、北朝鮮より44倍も多い国防費を使っている韓国は、戦闘力・国力においてすでに北朝鮮をはるかに上回っている。韓国はすでに対北朝鮮抑止の役割の大半を引き受けるほどに独自の防衛能力を備えている。U-2偵察機や偵察衛星、核抑止力などは、米国に依存しているが、ほとんどの戦略戦術信号情報と戦術映像情報など情報力も、ほとんど100%自立の段階にある。在韓米軍の機能も、対北朝鮮抑止から中国・ロシアを含む東アジアや中東などグローバルな次元の米国世界戦略遂行へと、急速に重点を移している。

 パク所長は再びトランプ大統領に問い返す。「派兵国が駐留費を負担する」という国際的原則を崩してまで、しかも、便法を講じたり不法な手段を動員して、米軍の駐留費用を韓国に払わせるのは、果たして妥当なのかと。

ハン・スンドン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/801822.html 韓国語原文入力:2017-07-06 20:17
訳H.J(2669字)

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