本文に移動

[寄稿] テロ防止法に限界はない

登録:2016-03-07 21:14 修正:2016-03-08 07:59

 別名「テロ防止法」はテロ防止に特別役立つものではないが、国民査察法、政敵監視法という指摘は国会のフィリバスターを通じて詳しく知らされた。 したがってすぐ本論に入ろう。 なぜこの法が国民査察法であり政敵監視法として悪用されうるのか、実際の条文から探る必要がある。

 この法は「テロ」と「テロ危険人物」という定義規定に極端な危険性がある。 先ず、この法のテロの定義によれば、昨年11月の民衆総決起や2009年の龍山での惨事のような事態をテロと規定できる条項がある(第2条第1号1、2)。 実際、セヌリ党のチョン・ガビュン議員は昨年の民衆総決起大会に対して「暴動を越えて大韓民国国民に向けられた明白なテロ犯罪」と規定したことがあり、龍山の惨事の直後である2009年1月21日には国会行政安全委員会で当時ハンナラ党のシン・ジホ議員は、この時の惨事を都心テロと規定したことがある。 今回の総選挙に出馬する当時ソウル警察庁長官を務めていたキム・ソクキ氏も準都心テロ云々として、自身の過剰鎮圧を合理化した。

 このようなテロ概念をほとんど無制限に拡張するものが「テロ危険人物」概念だ(第2条3号)。 この概念で問題になるのは「その他テロ予備・陰謀・宣伝・扇動をしたと疑うに足る相当な理由がある者」という部分だ。 予備というのは犯行道具の購入などのように犯罪の実現のための一切の準備行為をいう。 陰謀とは犯罪行為を謀議することをいう。 宣伝とは不特定多数に何らかの主義・主張を知らせ、理解を求めたり共鳴を求める一切の行為をいい、扇動とは他人をして一定の行為を実行する決意をさせたり、すでにできた決意に刺激を与えることを意味する。 テロ概念とテロ危険人物の概念の定義を合わせてみれば、龍山の惨事や民衆総決起のような事態に関連した人々の範囲は、予備、陰謀、宣伝、扇動の概念を通じてほとんど無制限に拡張される。 その上「したと疑うに足る理由」まで包括すれば、事実上テロ危険人物の範囲は無限大になる。

 するとテロ危険人物と名指しされれば、どんな取り扱いを受けることになるのか? この法の第9条を見よう。 テロ危険人物に対しては(1)出入国・金融取引および通信利用など関連情報の収集(2)位置情報、個人情報収集(3)追跡(4)盗聴のような通信制限措置を行うことができる。 すなわち、あなたはあなたの位置情報、政党加入の有無、健康、性生活情報などの個人情報、あなたの金融取引情報、通信利用情報などが隅々まで把握される。 そしてあなたは監視、尾行、査察を受ける。 パケット盗聴を通じて、あなたがインターネットを利用する全てのことが把握される。 本当にぞっとするではないか? おそらくこういう事実を知れば、深刻なストレスで癌に罹るかも知れない。

イ・グァンチョル弁護士 //ハンギョレ新聞社

 それではテロ危険人物は誰が指定するのか? 国家情報院長だ。 どんな手順を踏むのか? 決まった手続きは何一つない! 国家情報院長は裁判所はもちろん、どこからもテロ危険人物指定について審査を受けない。 国会に報告することもない。 しかもテロ危険人物に指定された人は異議を提起することもできない。 結局、国家情報院がテロ危険人物だと決めれば該当者は自身も知らない間に一挙手一投足を隅々まで暴かれるわけだ。 あなたが龍山の惨事の借家人側を擁護して、民衆総決起に参加したという理由だけでそうなるわけだ。

 テロ防止法はその条文の内容で見ても、国家情報院のこれまでの振舞いから見ても、決して容認できないものだ。 少なくとも(極端な守旧団体である)オボイ連合に入って執権勢力を擁護でもしない限りは、誰でも国家情報院によって「テロ危険人物」のレッテルが貼られえて、一旦貼られれば性生活情報に至るまですべての情報が暴かれることになる。 テロ防止法にはいかなる代案もありえない。 ひたすら破棄だけが答だ。

イ・グァンチョル弁護士(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/733758.html 韓国語原文入力:2016-03-07 19:56
訳J.S(1710字)

関連記事