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[ニュース分析]全世界に広がる米国のミサイル防衛網 

登録:2016-03-07 09:05 修正:2016-03-07 15:15
米軍が公開したルーマニア南部デベセルミサイル防衛基地

米国、東欧にもMD基地構築

ヨーロッパでは「イラン防衛用」でMD配備
ロシア、自国の核抑止力無力化を疑い反発
「いつでも軍事的攻撃」と威嚇も

北東アジアでは「北朝鮮」を口実に推進
軍事専門家「長期的に中国も対象」
中ロ、MD対抗の兵器開発の予測も

 昨年12月、ルーマニアの首都ブカレストから約145キロ離れた南部のデベセルに、米国がミサイル防衛(MD)基地を完成させた。米国は東欧の真ん中に設置したミサイル防衛基地について、イランのミサイル防衛用としたが、ロシア外務省は「米国と同盟国が危険なプログラムを運用している」と反発した。ロシアは以前から、東欧に米国のミサイル防衛システムが設置されることに過敏に反応しており、東欧に設置されたミサイル防衛基地を軍事的に攻撃できると脅かしてきた。

 米国は最近、韓国に最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備に関する議論を本格化させ、北東アジアの緊張を高めている。東欧では、米国が地域にミサイル防衛システム構築を本格的に試みた2000年代半ばから、この問題をめぐり、米国とロシアの間で摩擦が生じ、今も続いている。米国がミサイル防衛を構築する意図をめぐり、両国間の不信が解消されないでいるためだ。

 米国がデベセルのミサイル防衛基地に持ち込んだ設備はSPY(スパイ)1レーダーとMK41垂直発射台だ。SPY1レーダーは、米海軍イージス戦闘システムの中核となるレーダーだ。位相配列レーダーにより、コンピューターでビーム操向方向と操向量を調整できる。疑われる標的を集中的に追跡し、多数の目標物の探知・識別が可能だ。MK41垂直発射台は、ミサイル迎撃用のSM(スタンダードミサイル)3を発射できる装置だ。本来SM3は艦艇防衛用ミサイルだが、射程距離が500キロメートルに及ぶ。SPY1レーダーとMK41垂直発射台のいずれも、イージス艦の兵器システムを陸上用に切り替えたものだ。

 デベセル基地は今年上半期までに点検を終え、運用に入る予定だが、運用準備任務を任されたのも米海軍第6艦隊だ。第6艦隊は「デベセル基地のシステム運用の監督や訓練を担当する。新しい船で海上訓練をするのと似ている」、「2016年夏までにはデベセル基地の運用準備が終わるだろう」と明らかにした。

 ロシアがデベセル基地に強く反発する理由は、伝統的なロシア勢力圏だった東欧の真ん中に米国がミサイル防衛基地を設置し、ロシアの核抑止力を無力化しようとしているとの疑念のためだ。旧ソ連のミハイル・ゴルバチョフ共産党書記長がドイツ統一を支援した理由は、米国と西欧が主導する北大西洋条約機構(NATO)が東進しないと考えたためであり、ソ連崩壊後、ソ連主導のワルシャワ条約機構は解体され、NATOの東進は続いている。NATOの東進は、ロシアがウクライナのクリミア半島を合併した原因の一つだった。

 ロシア外務省はデベセル基地の完成が「中距離核戦力全廃条約(INF)」を直接違反したものと米国を非難した。条約は1987年にロナルド・レーガン米大統領とゴルバチョフ・ソ連共産党書記長が、両国が保有する核弾頭の装着用の中距離、短距離、地上発射ミサイルを廃棄することに合意した歴史的な核兵器削減条約。ロシアはデベセル基地から発射されるスタンダード型ミサイルが、ロシアに向けられると考えている。

 ロシアの不信は、米国の欧州ミサイル防衛計画(EPAA)が誕生した時から続いている。同計画はビル・クリントン政権時にイランのミサイル脅威から欧州を防衛する名分で推進された。2002年にチェコのプラハで開かれた北大西洋条約機構会議で議論され始め、ジョージ・ブッシュ政権時の2008年までにポーランドに長距離迎撃ミサイル基地、チェコにレーダー基地を作るのが柱だった。

 長距離迎撃用ミサイルを配備する米国の計画に、ロシアは軍事的強攻策で対抗した。2008年、メドベージェ大統領はポーランドと近いロシアのカリーニングラード州に、射程距離が500キロに達し、核弾頭を装着できるイスカンデル・ミサイルを配備すると警告した。結局、2009年に発足したバラク・オバマ政権がポーランドなどに対するミサイル防衛基地構築計画を中止すると発表したことを受け、ロシアもカリーニングラードにイスカンデル・ミサイルを配置する案を撤回した。

 オバマ政権は2009年に新しい欧州ミサイル防衛計画を発表する。この計画はイージス艦の運用を中心にしており、イージス艦システムを陸上に適用したイージスアショアー(Aegis Ashore)を陸上基地に設置する内容を柱とした。その1段階は、2011年までミサイル防衛のイージス艦運用能力を高め、地中海にも増強配置することであり、2段階がルーマニアにイージスアショアーのテベセル基地を作るというものだった。ブッシュ政権時代、欧州ミサイル防衛計画に入っていたチェコレーダー基地設置計画は、軍事的活用度が落ちる衛星情報分析センターに変えることにしたため、チェコがこれに反発し、米国ミサイル防衛計画から離脱した。そして3段階が、2018年まで予定されたポーランドの陸上ミサイル防衛基地設置だ。元々は4段階でポーランドとルーマニアに中長距離迎撃ミサイル「SM3-IIB」を配備する計画だったが、2013年にロシアの反発のため4段階は推進しないことにした。

米国のミサイル防衛システムの配置図(資料:タス、配備国)//ハンギョレ新聞社

 ロシアは、オバマ政権に入り計画が変更されただけで依然として脅威と受け止めている。2012年、ロシアのメドベージェフ首相はモスクワでNATO関係者らに、ミサイル防衛計画に対するロシアの反応は「まだ政治的かつ外交的な姿だ。しかし、特定の状況では、われわれは技術的対応をせざるを得ない。それはあなたがたが好むものではない」と述べている。いつでも軍事的対応をできるという意味だった。実際、ロシアは2009年に撤回したイスカンデル・ミサイルのカリーニングラード配備計画をことある度に持ち出し、欧州を威嚇した。昨年4月にも、ヴァレリー・ゲラシモフ・ロシア軍参謀総長は「ミサイル防衛設備が運用される場所は、まず対応の対象になるだろう」とした。ルーマニアとポーランドが攻撃の対象になり得るという話だ。

 米国が当初、欧州ミサイル防衛計画の名分に掲げたイランのミサイル脅威は、昨年のイラン核交渉妥結で大幅に減少しているのに、この計画を引き続き推進していることもロシア側の疑念を膨らませている。昨年末、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は「イランの核プログラムが国際原子力機関(IAEA)の厳格な統制下に入れば、米国の欧州ミサイル防衛計画の必要性もなくなる」と述べた。これに対して米ホワイトハウス国家安全保障会議報道官は「欧州ミサイル防衛に対する我々の計画は変わらない」と答えている。これは米国の欧州ミサイル防衛計画がイラン用以外の他の意図があることを示唆している。

 米国のミサイル防衛システムは、他の地域でも拡大の一途にある。米国は最近数年間、ペルシャ湾諸国に集中的にミサイル迎撃システムを販売してきた。これら地域の国家の相当数が、短距離ミサイル迎撃用のパトリオットミサイルを配備しているので、長距離迎撃用の購入計画があると米国は見た。実際、2011年にアラブ首長国連邦(UAE)はTHAADを35億ドルで導入する契約を結んだ。

 米国議会調査局(CRS)のミサイル防衛専門家スティーブン・ヒルドレスは、軍縮関連専門誌「アームズ・コントロール・トゥデイ」に「(北東アジアの)ミサイル防衛と関連し、米国は北朝鮮のためだと言う。しかし、中国も長期的な観点から(米国の)考慮の対象となる」と述べた。またロシアと中国は、米国のミサイル防衛の拡張が自らの戦略的な力を弱めると見て、ロシアと中国は米国のミサイル防衛に対抗する兵器を開発することになるだろうと指摘した。

チョ・キウォン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-03-06 20:42

https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/733578.html 訳Y.B

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