サード(THAAD)のような米国のミサイル防衛(MD)システムは、本物の弾頭と欺瞞弾(Decoys)の識別が困難という根本的限界がある。 これはレーダーと迎撃ミサイルに装着する赤外線センサーが、目標対象ミサイルの内容については確認できず、大きさや明るさのような外面的特性しか把握できないためだ。 このようなレーダーとセンサーの限界を逆に利用して、各国はミサイルに高性能爆薬を搭載し、地上数十キロ~数百キロの高度でミサイル本体を多くの破片に分解する方法でレーダーやセンサーをかく乱することができる。 この破片が本物の弾頭と形が似ているならば欺瞞弾として機能することになり、短時間にこれを区別することは難しい。
「誘引する物」という英単語に由来した欺瞞弾は、軍事用語では相手方をだます意図で作られ配置されるものを意味する。 弾道ミサイルを発射する時、ミサイル内部に実際の弾頭と似た形の欺瞞弾を載せて送ることができるし、空中で意図的にミサイル本体を破壊し粉々にする方式でも欺瞞弾を作ることができる。
米マサチューセッツ工科大(MIT)のセオドア・ボストル教授は、このような根本的限界がノドンミサイルに適用されうると話す。 彼は昨年、ハンギョレの要請で分析した結果、THAADがノドンミサイルを迎撃するには、このミサイルが目標物から高度105キロ以上にある時に迎撃ミサイルを発射しなければならないが、この高度では欺瞞弾の識別は困難だろうと推定した。 欺瞞弾は本物の弾頭より軽く、地上に落ちる速度が遅いはずだが、この高度では空気が希薄で落下速度が同じようになるからということだ。 したがってTHAADミサイルは本物の弾頭か欺瞞弾なのかを識別できない状態で迎撃ミサイルを発射しなければならないということだ。 ボストル教授は今回の北朝鮮のロケット1段推進体の爆破に見られように、北朝鮮がTHAADレーダーをかく乱しうる対応手段を開発する力量を持っていると話す。
ミサイル防衛システム擁護論者は、研究開発にさらに投資すれば欺瞞弾を識別する方法を考案できると主張する。 しかしボストル教授は「存在しない物理現象を開発しようとする研究は何も生みださない」として「レーダーと赤外線センサーは宇宙空間の物体の外面的特性だけを観察し、その外面的特性も内部に何があるのか分からないように簡単に操作できる」と話した。
すでに1990年代から提起されていた本物の弾頭と欺瞞弾の識別問題は、現在も米国防総省がその限界を認めている事案だ。 ジェームズ・ウィネフェルド米統合参謀副議長は昨年5月、ワシントン戦略国際問題研究所(CSIS)のセミナーで、軍事予算の制約と共にこの識別問題をミサイル防衛システムが解決しなければならない代表的な宿題だと指摘した。