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「鬼郷」旋風は慰安婦合意に対する市民の劇場デモ

登録:2016-03-01 03:10 修正:2016-03-01 06:34
映画『鬼郷』//ハンギョレ新聞社

5日間で100万人...予約率の上昇 
「痛々しいけど、必ず見るべき映画」 
口コミで広がり団体観覧多い

 日本軍慰安婦として連行された少女たちの物語を描いた映画『鬼郷』が、封切りから5日で観客100万人を突破し、映画界で旋風を巻き起こしている。日本の誠意あるおわびすら盛り込まれなかった韓日慰安婦問題の合意で再び傷つけられた慰安婦被害ハルモニ(お婆さん)を癒すと共に、歴史教科書の国定化を強行するなど、過去の歴史問題における朴槿恵(パククネ)政権の後ろ向きな姿勢を阻止しようとする市民の意志が集まり、誰も予想できなかった『鬼郷』シンドロームにつながっているものと分析される。

 29日、映画振興委員会の映画館統合ネットワークによると、『鬼郷』を見た観客数は106万1271人に達する。事前予約率は同日午後基準で33.3%を示し、9日連続で1位の座を守っている。三一節を迎え、日本帝国主義に蹂躙された痛々しい歴史を忘れずに記憶しようとする観客たちも映画館に向かうものと見られており、『鬼郷』の興行は当分続くものと予想される。

 『鬼郷』の製作から上映までの道のりは順調ではなかった。市民7万5200人が製作費を集め、14年もかかってようやく完了した。チョ・ジョンレ監督は『ハンギョレ21』(ハンギョレ時事週刊誌)と共に行ったオンライン製作費募金に後押しされ、2015年4月に撮影を始めたが、4日間で製作費が底をつき、頓挫する危機に瀕していた。この時、プロデューサーのイム・ソンチョル氏など製作陣が自宅を担保に資金を融通し、近所のカーセンター社長、フィットネストレーナー、クリーニング屋の社長など、一般市民に投資を募ったことで、ようやく再スタートを切ることができた。封切り直前まで上映館の確保に悩まされていたが、観客たちが『帰郷』の前売り権を購入し、上映館を増やしてほしいというオンライン嘆願に乗り出したことで、もう一度壁を突破できた。

 映画の中で、あくどい日本軍を演じたプロデューサーのイム・ソンチョル氏は白凡・金九(キムグ)先生の母方の曾孫だ。イム氏は29日、ハンギョレとの電話インタビューで「家が貧しく、建設現場で働いてやっとのことで大学に入った。乱暴な考え方だが、金九先生の子孫であることが何の役に立つのかと思っていた。そんな私が『鬼郷』と出会ったのは運命だったようだ」と述べた。イム氏は撮影直後、クッシング病という珍しい疾患の診断を受け、脳下垂体の腫瘍を除去する手術を受けた。

 映画界では『鬼郷』の興行要因として2つを挙げる。映画ジャーナリストのキム・ヒョンソク氏は「『鬼郷』を見ることは単なる映画鑑賞ではなく、市民がこの映画を通じて韓日慰安婦合意と歴史教科書国定化などへの反対の意思を示す一種のデモ」だと分析した。映画のマーケティング担当者のハン・スンホ氏も「社会問題とちょうど(公開)時期が重なった上に、海外からの大きな反響が国内市場に影響を与えたケース」だと指摘した。慰安婦問題を海外に知らせるために、外国を回ってスポンサー試写会を開いた『鬼郷』に対し、米紙ニューヨークタイムズは一面を割いて報道するなど、高い関心を示した。

 家族・団体観覧が多い点も注目すべきところだ。28日にはソウル大光(テグァン)高校の歴史教師チェ・テソン氏が映画館を貸し切って『鬼郷』観覧イベントを開いており、三一節を迎え、団体観覧はさらに多くなる見込みだ。京畿道坡州(パジュ)市金村のある塾は、1日午前、金村の映画館を借りて、学生と保護者約160人が団体で『鬼郷』を観覧することにした。イ・ウソン塾長(44)は、「韓日間の慰安婦交渉と歴史教科書国定化など、最近の歴史問題について、家族全員がもう一度考えてみる機会になればと思っている」と話した。親と一緒に映画を観覧することにした高校生のキム君(17)は「政府が被害者や国民と何の協議もなく、日本と慰安婦の交渉を合意したことは非常に間違ったことだと思う。ハルモニ(お婆さん)たちが経験した悲惨な苦痛を癒すと共に、痛みを共有し、忘れない」と語った。この映画チケット1枚を買うことが、投票用紙1枚を刷るようなものという意見が出るなど、『鬼郷』に対する共感と熱気は一つの社会的現象として広がっている。

ナム・ウンジュ記者、坡州/パク・ギョンマン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-02-29 21:28

https://www.hani.co.kr/arti/culture/movie/732711.html 訳H.J

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