1年ほど前だったか、東京のある同僚特派員が用心深く話しかけてきた。 その頃、朴槿恵(パククネ)大統領が「無能だ」と容赦なく批判したコラムを書いたことがある。 ハンギョレは2014年9月から韓国の「NAVER」にあたる「ヤフージャパン」に記事を供給している。 そんな中で朴大統領を批判した私のコラムが「嫌韓ネチズン」たちの格好の材料になった。 該当コラムはその日、ヤフージャパンで日本人が多く読んだ記事3位(!)になり、記事の下には朴大統領を皮肉り嘲る数千個のコメントが並んだ。 主権者である大韓民国の国民が、自ら選んだ大統領を批判することは当然のことかもしれないが、外国人、特に嫌韓日本人たちが私のコラムを材料にして大統領を人身攻撃したと考えると、心安らかではいられなかった。
外国に住めば全員が愛国者になると言うが、過去2年余りの東京暮らしの間に、朴大統領に対する私の感情も激しく揺れ動いたようだ。 相対的に歴史問題について合理的な見解を持っていた日本の民主党政権と向き合った前任の李明博(イミョンバク)政権とは異なり、朴大統領の相手は「歴史修正主義」の色彩を強く帯びている安倍政権だ。 安倍晋三首相は2013年12月に靖国神社を参拝し、2014年初めには河野談話に対する検証までした。 そのような状況で朴大統領が韓日関係正常化の条件として河野談話などの継承と慰安婦問題解決のための日本の誠意ある先行措置を要求する強硬姿勢を示したのは、ある意味当然のことだった。
当初抱いていた期待は、戦時作戦統制権返還を無期限延期し、セウォル号と関連した自身の“7時間”に対して沈黙を押し通し、統合進歩党を強制解散させ、加藤達也・前産経新聞支局長を起訴する、彼女の理解しがたい多くの選択を見て徐々に崩れていった。 誰かの表現を借りれば、彼女は“暴君”というより、自分が今何をしているのか分からない“昏君”のようだという感じがした。
韓国は慰安婦問題を巡る過去4年半の対日外交戦でなぜ敗北したのだろうか? 韓日両国政府が10日、北朝鮮に対する独自制裁案を発表する姿を比較してみて、長く私を苦しめていたこの問題の答えが見つかった気がした。 両国首脳が前日の9日に電話会談をしたので、内容はもちろん日程に対する事前調整もなされたのだろう。
韓国はこの日、南北経済協力の唯一の遺産であり南北関係の唯一の安全弁だった開城(ケソン)工業団地を事実上閉鎖した。 午後5時、この内容を発表するホン・ヨンピョ統一部長官の上唇が腫れていた。慰安婦問題に対する12・28合意に続くサード(<THAAD>高高度防衛ミサイル)導入と開城工業団地閉鎖。 「韓国外交に退路はあるのか…」、絶望的な思いに心は重く沈んだ。
それから1時間半後、今度は日本政府の菅義偉・官房長官がカメラの前に立った。 この日、日本政府は数々の対北朝鮮制裁を打ち出したようだが、事実上特別な効果がない象徴的な措置ばかりだった。 両国間の輸出入全面禁止など多くの措置をすでに施行中であることに加え、安倍政権の主要外交的課題である「日本人拉致問題」解決のために北朝鮮との対話を継続しなければならないためだ。 これを確認するように菅官房長官は「拉致問題を解決するための対話は継続して行く」と明確に話した。 現在稼動中である「北京チャンネル」を維持し、争う時は争っても協議と対話は今後も継続しようというメッセージであった。
あわてて無謀な措置を吐き出す韓国と、よく調整された日本。 アマチュアとプロの実力差とはこういうことではないかという気がした。