執筆拒否したのは名声ある学者たち
国定教科書では歴史ではなくなり
撤回の可能性があれば…
歴史解釈の独占は
手からこぼれ落ちる水のように
栄光ある歴史だけを記述する傾向を生み
韓中日の生徒が互いを疑うことになる
過去の歴史での和解はさらに遠のく
過去の歴史を歪曲する安倍晋三政権の試みに対し、今年初め、世界の歴史学者の批判声名を主導したアレクシス・ダデン米コネチカット大学教授(46)は、韓国政府が教科書国定化を通じ歴史解釈を独占しようとすることに対し、「手からこぼれ落ちる水のように不可能なことだ。水はすべてこぼれ落ちてしまうだろう」と指摘した。
ダデン教授は最近、ハンギョレとの数度の電子メールと21日の電話インタビューを通して「近頃の生徒たちはサムスンでもアイフォンでも多様な手段で学習する。必須教科書があっても一つの教科書でだけ習おうとはしない」と述べた上で、こう続けた。「韓国ではマスコミが統制されていない上、インターネットが好きな生徒たちは論争が起きている状況をつぶさに知ることができる。(政府の)措置に抗議する韓国の歴史学者も、(国定教科書になれば)教室で生徒が歴史に興味を持てるように教育するのが難しくなることを知っている」
ダデン教授は言葉を慎重に選びながらも、韓国政府の歴史解釈の独占に対しては反対の立場を明らかにした。「(政府が)歴史を統制すれば概して、ある種の混乱で帰結される」とした上で「しかし歴史が複雑であるという事実をありのまま認めれば、とても力強く創造的な方法で歴史を教える可能性が生まれる」と指摘した。ダデン教授は「韓国政府に対する助言というより、『これ(国定教科書)は歴史ではないので執筆しない』とした歴史学者に対する激励」として、こう述べた。
ダデン教授は何度も「(国定教科書推進は)今日の韓国社会の活力にそぐわない時代錯誤的な措置」と指摘した。また資本主義の観点からも「一つの教科書しかないなら、それは独占だ。それは知識に対する独占でもあり生産物に対する独占」と批判し、「そのこと自体が、革新とより良い製品を通じ消費者に購買を促そうと努力する韓国社会の流れに逆行する」と指摘した。
安倍政権の歴史歪曲の試みとの比較に対する問いにダデン教授は、「私の理解では、日本には20世紀における歴史に対する観点、現在の日本がどう形成されたかに対する性格を実質的に完全に変えようとする欲望がある」と指摘した上で、「韓国で起きていることの背景にも同じ全体主義的試みがあるかは確信できない」と慎重な見解を示した。しかし「一つの教科書しかないという事実は心配になるし、その教科書の欠点を捜し出すのははるかに容易くなるだろう」と間接的に批判した。
さらにダデン教授は「(執筆を拒否した歴史学者は)本当に真摯で名声ある歴史学者」であるとし、「私が感じている疑問は、こんなに多くの歴史学者が執筆を拒否したら、どうやって教科書を作るのかということにある」と述べた。そして「教科書が出る前から、こうした教科書は出すべきでないという認識が明らかとなっているなら、政策を変える可能性があればと思う」と述べ、「このような政策過程を通じ(一つの)教科書が出されるなら、その点では日本とほとんど変わらないと思う」と付け加えた。
また、ダデン教授は北東アジア地域の歴史専門家らしく、韓国の国定教科書推進が北東アジアの国家間で課題となる「過去の歴史との和解」をより難しくさせる点を憂慮し、こう指摘した。「(韓国、日本、中国を)地域的に見ると、栄光ある歴史的記述ばかりしようとする傾向が存在する。これらの国は一つの国家ではないものの、互いに編集されているという点で不幸なことだ」。さらに「今は(各国の)若者が生産的で肯定的な方法で相互作用をする可能性が多く存在する時代だ。日本、韓国、中国の教科書は、生徒たちに相互信頼を作り出すのでなく疑念を抱かせることになるだろう」と憂慮した。
ダデン教授は今年5月、日本政府の過去の歴史の歪曲と従軍慰安婦に対する責任回避を批判する世界の歴史学者187人の集団声明を主導し、それに先立つ2月に米国の歴史学者19人が日本政府の歴史教科書歪曲の試みを告発する声明を発表する際も率先して行動した。こうしたダデン教授の功績が認められ、7月に朝鮮日報などが共同主催した第19回萬海大賞の平和部門の受賞者に選ばれた。
韓国語原文入力:2015-10-25 21:21