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[特派員コラム] 韓国人の運命の主人

登録:2015-03-12 21:04 修正:2015-03-13 08:03

 私の尊敬するある先輩は、ときおりマッコリを飲みながら「是非一度読んでおいた方が良い」と言って本を推薦してくれた。社内でも頑固なことで有名だったその先輩がしばしば口にした本の一つは、アメリカの著名な言論人だったデイヴィッド・ハルバースタム(David Halberstam)の遺作である『ザ・コールデスト・ウィンター(The coldest winter)』だった。

 最初は向こう見ずに米国のアマゾンのサイトから英文の原書を注文した。幸い中古本の価格は1ドル(送料が20ドルだった)であり、2週間くらい待つと聖書くらいの厚さの威厳ある本が配達されてきた。 毎晩退勤後に熱意を持って“原書読破”に努めたが、なかなか進まなかった。 これではいけないと思って、今度はアマゾン・ジャパンから二冊に分かれた日本語翻訳版を捜し出した。それでも一週間ほどかけて海外出張の友にして読破に成功した。 後で見たら既に韓国語翻訳版が出ていた(!)。

 あまりにも有名な著作であるために粗雑な賛辞は省略する。 ハルバースタムが言うには、朝鮮戦争は金日成が統一された民族国家を建設するためにスターリンの承認と毛沢東の支援の約束を得て起こした戦争だった。 戦争直後に38度線を越えて破竹の勢いで南進を続けた北朝鮮軍は、ダグラス・マッカーサーの仁川(インチョン)上陸作戦で分断され、鴨緑江(アムノッカン)を目前にしたマッカーサーの進撃は、今度は彭徳懐が率いる中国人民支援軍の参戦で阻まれる。その後、絶望的な状況の中で中国共産軍の南侵を原州(ウォンジュ)~祗平里(チピョンリ)で食い止めたのは交通事故で死亡したウォルトン・ハリス・ウォーカー米8軍司令官の後任として赴任したマシュー・バンカー・リッジウェイであった。

 韓民族の運命を決めた3年間の激しい戦争を記述した壮大な著書の中に登場する韓国人(朝鮮民主主義人民共和国を除く大韓民国人)は、李承晩と白善※(ペク・スンヨプ、※は火へんに華)の二人だけだ。 本の中で李承晩は、多少神経質であり権威主義的な指向を持つ頑固一徹、白善ヨプは韓国人将校の中で唯一戦闘できた軍人として登場する。 しかし二人は周辺人物に過ぎず、朝鮮戦争で決定的影響力を発揮した韓国人は一人もいなかった。 代わりに、本は金日成はなぜ戦争を起こしたのか、スターリンはなぜこれを承認したのか、毛沢東はなぜ支援を約束したのか、トルーマンはなぜ参戦を決めたのか、マッカーサーはなぜ38度線を再び越えたのか、などをこれらの人々の個人的な特性と置かれていた国内外的な情勢の中で誠実に描いているだけだ。

 日本に赴任して勤務する特派員として、最も関心を傾けている懸案は“集団的自衛権”に象徴される日本安保政策の変化だ。 安倍政権は昨年7月に過去69年間続いた憲法解釈を果敢に変えて、自国が攻撃を受けなくとも日本が武力行使できる道を開いた。 続いて今は自衛隊法、周辺事態法など戦後70年間維持されてきた日本の安保体制を根本的に切り替える法改正を進めている。 日本の植民支配に大きな苦痛を受けた韓国人の立場では非常に警戒すべきことではあるが、“米国の衰退と中国の浮上”という巨大な世界秩序の変化の中で日本が主体的に安保態勢を整備して行くことを無条件に批判だけすることではないと考える。

キル・ユンヒョン東京特派員//ハンギョレ新聞社

 問題は韓国だ。 東アジアにもう一度不幸な事態が発生する場合、日本は民主的手続きによって選出された自国首相の判断で自らの運命を決めることができる。 しかし戦時作戦統制権を持つことが出来なかった韓国は、バラク・オバマ(米国大統領)とバーナード・シャムポー(米8軍司令官)に韓国の生殺与奪権を渡さなければならない。 私たちは自分の運命の主人になれるのか。オバマでなく朴槿恵(パク・クネ)の、シャムポーでなく崔潤喜(チェ・ユンヒ、合同参謀議長)の決断で、私たちが私たちの運命を決めたと、もうそろそろ子孫に何か伝言を探さなければならない。

キル・ユンヒョン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/681972.html 韓国語原文入力:2015/03/12 18:23
訳J.S(1788字)

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