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[コラム]高高度防衛ミサイル韓国配置、自ら禍を招く愚を犯すな

登録:2015-02-23 10:27 修正:2015-02-23 10:52

 禍を自ら招く愚かさを「藁を担いで火に入る」と表現する。国がそんな真似をしかねない心配事が起きている。高高度防衛ミサイル(サード/THAAD)の韓国配置問題だ。一部メディアはサード配置を促し、中国の顔色は見るなとまで主張する。あまりに無責任で、国家の経営において経済が安保に劣らず重要であることを知らない主張だ。

 サードはワンセットで11兆ウォン(約1兆2000億円)。2015年の国防予算37.5兆ウォン(約4兆1000億円)の30%近い額だ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時に米国はサード配置問題を初めて提起したが、その時の盧政権は三つの理由を挙げて反対した。サードが韓中関係を害し、金がかかりすぎ、まだ性能も確実でないというのが理由だった。ディフェンス21プラスのキム・ジョンデ編集長によると、2008年1月に国防部を訪問した李明博(イ・ミョンバク)大統領当選者に対しキム・ジャンス国防部長官は同じ趣旨の報告をした。そのためだったのか、業務引継ぎ委員会にサード支持派が多かったが李明博政権の任期中、サード議論はなかったものと記憶される。

 朴槿恵(パク・クネ)政権が誕生すると米国はすぐにサード問題を再び持ち出した。理由は二つあると考えられる。第一に、米中軍事力の格差が5~6年前に比べますます狭まる一方で、米国防予算は引き続き減るしかない状況にある。米国としては北朝鮮の核とミサイルを口実に韓国の資金でサードを開発及び配置して、対中軍事優位を維持するつもりではないかと思う。第二に、戦時作戦統制権と韓米日軍事情報共有問題を処理する過程で、米国は朴槿恵政権の対米安保依存性が高いと判断し、その条件を活用してサード配置につなげようとしているのではないか。

 今月4~13日に起きたことはこのサード問題が非常に奥深く議論されてきたことを物語る。2月4日、常万全(チャン・ワンチュエン)中国国防長官が韓中国防長官会談でサード配置に憂慮を表明した。ジョン・カービー米国防省報道官は10日の定例ブリーフィングで「サード配置問題に関し韓国と持続的協議があった」と明らかにした。キム・ミンソク国防部報道官が直ちに「そんなことない」と否定すると、カービー報道官は13日に「公式協議や議論はしていない」と前言を翻した。「持続的協議があった」が「公式的協議や議論はしなかった」に変わったわけだが、それは「非公式の協議は続けてきた」ことを告白したに過ぎない。ちょうどその頃出てきたハン・ミング国防部長官の「サード問題については曖昧さを維持する必要がある」という発言は、気がかりであると共に不安感を助長する。

 いったい誰を相手に、そしてなぜ曖昧さを維持しなければならないのか? 対米交渉で韓国の負担を少しでも減らすため? 米国に押しつけられれば結局どうしようもないのに、その時までは国民も気持ちを宥めようというつもりか。でなければ韓中関係でサード問題をカードで使うため? もし米国を相手に曖昧さを維持するのであれば止めたほうがいい。米国を相手に外交で勝ち目はない。

 習近平(シー・ジンピン)中国主席は昨年7月3日の韓中首脳会談でサード配置に憂慮を表明したという事実が最近知らされた。昨年11月26日に邱国洪(チウ・ グオホン)駐韓中国大使が国会懇談会で距離射程が2000キロにもなるサードは対中国用であると指摘し、常万全中国国防長官が今年2月4日にサード配置に対し再び憂慮を表明したことは留意しなければならない点だ。

 外交政策の決定過程は相手方の本心を読みとること(perception)から始まる。韓国内のサード配置に中国指導者が昨年から何度も憂慮を表明したのは、中国がすでに朴槿恵政権の本音を読みとったためであるし、今後の対応計画まで立ててあるという意味だ。

チョン・セヒョン金大中平和センター副理事長・前統一部長官//ハンギョレ新聞社

 この期に及んでなお一部ではサードを対北朝鮮防御用と説明すれば中国が納得すると主張する。愚かな考えだ。韓国がサードで中国の安保利益を威嚇すれば、中国は韓国の経済利益を威嚇する可能性がある。そうなれば対中依存度が高い韓国経済は立ち行かなくなる。この観点から朴大統領はサード問題に対し明確な線引きをすべきだ。曖昧さを維持すると言いながら藁を担いで火に入る愚を犯してはならない。

チョン・セヒョン金大中平和センター副理事長・前統一部長官(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.02.22 18:47

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/679142.html 訳Y.B

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