1979年 米国スリーマイル、1986年 ソ連チェルノブイリ、2011年 日本福島 原子力発電所事故の共通点は? "原子力発電所の個数が多い国家で起きた事故" という点だ。 キム・イクチュン東国(トングク)大医大教授は、今後核事故の確率が最も高い国として原子力発電所保有個数が米国・フランス・日本・ロシアに続き世界5位で、土地面積当たりの原子力発電所密集度が世界1位である韓国を挙げる。 韓国は原子力発電所をさらに建設し2024年には‘世界3位の原子力大国’になる計画だ。
<韓国脱核>は日本福島原子力発電所事故以後にも変えよとしない我が国政府の‘原子力愛’に対して簡明な論理で対抗する。 用語からして問題だ。 世界中で‘原子力発電所’と呼んでいる国は韓国と日本だけだ。 核の力を利用した発電であるから核発電所(Nuclear Power Plant)が正しい。
核燃料は一度くべれば4年間にわたり熱を出す。 4年使ったものが‘使用済核燃料’であるが、途方もない熱と放射能を吹きだして‘高準位核廃棄物’に分類される。 高準位核廃棄物は10年間冷ました後に10万年以上安全に保管しなければならないが、そのような技術をまだ人類は持っていない。 現在、フィンランドが天然岩盤地域の地下500mに高準位核廃棄場を建設しているが、その未来は誰も予断できない。 韓国は慶州(キョンジュ)に‘中低準位核廃棄場’を建設中だ。 著者は "慶州核廃棄場敷地はツルハシでも掘れる最下等級(5等級)岩盤であるのに加え、コンクリートを塗って防水作業をした後にも一日1300tもの地下水が流入している" として、 "結局、核廃棄場が水に浸ることを知りながらも無視している" と主張する。 慶州に暮すキム教授は、慶州核廃棄場敷地の安定性論議に火が点いた2009年に反核運動に飛び込んだ。 結論は文章一つだ。 "韓国は脱核しなければならず、脱核は可能で、世界がすでにその道を歩んでいる。" イム・ジソン記者 sun21@hani.co.kr
他人ごとではない原発事故…韓国、脱核のみが答
核発電所を原子力発電所と呼ぶ国は韓国と日本だけだ。 慶州核廃棄場建設に反対する‘反核運動’に飛び込んだ医大教授が、この間の脱核講義録を本にして出版した。 彼が語る原子力にまつわる4つの嘘とは何か。
日本、福島原発事故の残酷な現実と向き合っても、最近韓国政府は2035年までに原発への依存割合を現在の水準より増やす立場を明らかにした。 去る7日、キム・ジュンドン産業通商資源部エネルギー資源室長は‘2次エネルギー基本計画’公聴会で 「率直に言って(原発に対する)国民受容性と安全性の他にも温室ガス縮小と電力の安定供給、エネルギー安保などの政策的課題にも対応しなければならないため」と、その論理を説明した。
国民受容性、安全性、温室ガス縮小、電力の安定供給…。 ちょっと見には原発とどんな関係があるのか分かり難い単語だ。 韓国原子力産業に対する賛否論議はこのように単純な話も‘難しい用語’に変質させる姿勢で絡まり始めたとキム・イクチュン教授の<韓国脱核>(ハンティジェ刊)は言う。 やさしい言葉で、しかし科学者特有の‘検証’根性で誠実に書かれたこの本の副題は‘大韓民国すべての市民のための脱核教科書’だ。
ソウル大で医学と微生物学を勉強し東国大医大で学生たちを教え、慶州に暮すキム・イクチュン教授は、2009年慶州核廃棄場建設に反対して‘反核運動’に目を開いた。 2011年福島原発爆発場面を数百回繰り返し見て「ああしたことが韓国にも起きうる」という思いで全国を巡り脱核講義を始めた。 2年半におよそ450回の講義がこの本の踏み台になった。
本は‘核発電’にまつわる‘4つの嘘’を検証する。第一は <原子力は安全だ> だ。 著者は日本の福島核事故を通じて原発の原理と危険性を説明する。 「日本では原子炉が溶ける‘メルトダウン’に続き、外にだらだらと流れ出る‘メルトスルー’まで起きた。 日本は事故現場にロボットまで投入したが、すぐに故障してしまって溶けて流れた核燃料の量、温度、色、放射能強度など何も正確に分からない。 汚染水は全て太平洋に放出されている。」
<原子力は安い> という主張も偽りだ。 「今までただの一度も原発の発電単価がどのように計算されたのか公開されたことはない」現実で‘原子力が最も安く、太陽光が最も高い’という政府の発表は疑惑だらけだ。 著者は太陽光が核発電より安いという米国ノースカロライナ州の公式発表資料を提示する。 太陽光は当初の設置費を除けば以後は燃料費が全くかからないが、核発電は時間が経つほど高準位核廃棄物(使用済核燃料)処理費用、安全装置費用、原子力発電所閉鎖費用などがかかり続けるという話だ。 <再生可能エネルギーは高い> と<再生可能エネルギーでは十分な電力を生産できない>という話も、国外の再生エネルギー事例を提示して嘘であることを示す。
原発事故は核発電所が多い国で続いている。 核発電所の個数は米国が1位(104個), フランスが2位(58個), 日本が3位(54個), ロシアが4位(32個), そして韓国が23個で5位だ。 政府は2024年までに原発をさらに建設し計42個の原子力発電所を運営する計画だ。 本は次の核事故候補地として福島以後にも政策変化がない韓国、米国、フランス、カナダの4国家を挙げた。 "その中でもとりわけ原発不正が多い韓国は最も危険な国" と主張する。 韓国で古里(コリ)1号機と月城(ウォルソン)1号機がすでに30年を越した老朽原発だ。 福島でも一列に並んでいた10個の原発のうち30年を越した老朽原発だけ4個が爆発した。
著者は韓国の被爆危険度を直接測定した。 福島事故直後から8ヶ月間、毎朝慶州のアパートの5階で放射能を測定した。 日本方向から東風が吹く日に特に大気中放射性物質が高く検出された。 食品放射能測定機も購入して日本産水産物の汚染も確認した。 農林水産食品部に情報公開を要請して、2012年1~6月冷凍サバ、冷凍タラなど放射能に汚染された日本産水産物が110回輸入され、1800t全て "セシウム汚染が基準値以下" という理由でそのまま流通した事実を確認した。
原子力と関連した嘘の中で
第一が‘安全だ’という話
この間起きた事故は全て
原発が多い国で起きた
世界5位保有国であるにも関わらず
フクシマを見ても聊かも動ぜず
とりわけ原発不正が多い韓国が最も危険な国だ
‘基準値’という言葉による錯覚も確かめて行く。 著者は "基準値以下なので安全だという言葉は、あたかも医学的根拠を持っているような印象を与える" として "放射能に安全基準値はない" と話す。 "被爆量と癌発生は比例しており、これは基準値以下でも同じこと" というものだ。 フクシマ事故以後、日本は被爆量基準値を20倍に高めた。 基準値を据え置けば全国民を退避させなければならない状況だったためだ。 福島県の住民たちは子供に対する基準値だけでも上げるなと嘆願したが受け入れられなかった。 結局、基準値は‘政府の責任限度’を決める基準だったわけだ。
その上、基準値が存在するのも核事故の時に放出される放射性物質200種余りの内、セシウムとヨードのみだ。 これさえもお粗末だ。 半減期が短く‘核戦争防止のための国際医師会’で‘不検出’であってこそ安全だと主張するヨードに対しても、韓国政府は基準値を300Bq/㎏(キログラム当たりベクレル・食物1㎏内で1秒間に起きる核崩壊回数)とし寛大に決めておいて、去る9月にこれを100Bq/㎏に下げた。 著者は "達成可能な数値が低いのに基準値を高く定めることは、放射能汚染を起こす業者の便宜のためのもの" と主張する。 また‘自分のからだに入ってきた放射能総量’が重要なのに、一つの食べ物だけを検査して "基準値以下だから安全だ" ということは、はなはだ非科学的だと指摘する。 著者は被爆量計算に重視される国際放射線防護委員会(ICRP・国際原子力機構と密接な関係の原子力産業を推進する国際機構)が作り出した‘被爆線量係数’に対しても疑いを提起する。
核発電は文字通りウラニウム、プルトニウムなど核燃料から熱を出させ電気を作る。 核燃料はあまりにもエネルギーが大きく4年間にわたり熱を出す。 4年が過ぎた‘使用済核燃料’を安全に捨てる方法をまだ人類は持っていない。 10年間冷たい水で冷ました後、10万年以上にわたり隔離して保管しなければならないが、そのような技術はない。 これについて著者は "原子力は当初から無責任なものだった" と話す。
‘核廃棄物’問題はすでに‘原子力強国’韓国の悩みの種になって久しい。 2010年基準で、我が国では古里(コリ)、霊光(オングァン)、蔚珍(ウルチン)では発電所当たり毎年20tずつ、月星(ウォルソン)では94tずつ‘高準位核廃棄物’が発生している。 高準位核廃棄物の半分以上が慶州の月星原発敷地に保管されている。 このような臨時貯蔵所も飽和状態で増やさなければならない状態だ。
政府は現在、慶州に‘中低準位核廃棄場’を建設している。 形式は世界で初めて‘高準位核廃棄場’を建設中のフィンランドと似ている。 地表を掘って洞窟を作り、そちらに廃棄物を保管する構想だ。 だが、自然条件が全く違う。 フィンランドの工事敷地は、韓国の京畿道(キョンギド)大のかたい岩盤がある地域で、これを500m掘り下げて核廃棄場を作る計画だ。 それでもその未来を誰も予断はできない。 慶州の工事現場は、最下位等級である5等級の岩盤で簡単に崩れる。 また、コンクリートを塗って防水作業をしても一日1300tの水が流入するほど周辺に多量の地下水が勢いよく流れている。 著者は "結局、慶州核廃棄場は水に浸るだろうという事実を、環境団体も、国家機関である原子力環境公団も、規制機関である韓国原子力安全技術院も知っている" と話す。
イム・ジソン記者 sun21@hani.co.kr