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[ハンギョレ21 第959号]「信者は牧師より合理的」

登録:2013-06-09 22:48 修正:2013-06-10 10:09

 「私たちの牧師様が礼拝中に差別禁止の説法をして、聞きたくなくても聞こえるから…同性愛を止めなさいとおっしゃるが、私がそこにいるのに、牧師様にお話も申し上げられなくて…」

 

「私の存在が否定される感じ」

 民主党の差別禁止法発議撤回が知らされた4月22日、ソウル麻浦区「女性と仕事ナビ」で、「性少数者差別反対・虹の行動」が「差別と嫌悪を乗り越える緊急集会」を開いた。参席者たちが今後の計画を議論している時に、一人の女性が立ち上がり自身の経験を話すと、聞いている人々の目じりに涙が滲んだ。その場に一緒にはいなくとも、そのような苦痛にあった人々は、全国に各地にいただろう。

 20代初めの「レーン」というニックネームで呼ばれる彼女は、母胎信仰者だ[訳注:母親の胎内にいるときは胎教を通じて信仰し、その後も信仰を継続している者]。 生まれてから1ヶ所の教会にだけ通い、一生、そこに通うことを当然と感じて生きてきた。彼女は「性少数者として、一度も神様を信じないと考えたことはなかった」と振り返った。しかし、無気力に説教を聞かなければならなかった間、彼女は「私の存在を否定される感じだった」と話した。牧師はこの日、説教の半分を差別禁止法の話に割いた。彼女は「牧師様が誤解しているからそうであって、牧師様も人であるから間違うことはある」と考えながら、その時間を耐えた。

 今回が初めてではない。軍刑法問題が提起された頃、似た説教を聞いた記憶がある。こうしたことが繰り返されると、教会が遠ざかる感じだ。レーンは「教会の集会で『日常、恩恵を受けた話を言ってみて下さい』と言われれば、ますます言葉が出なくなる」と話した。ソンドル香隣教会のイム・ポラ牧師は、このような性少数者の手を握る牧師だ。イム牧師は、「こうしたことで傷ついた人々が来たら、ただ泣く」と伝える。2007年に比べ、2013年の差別禁止法反対は、教会組織の毛細血管に乗って全国奥深くへ広がった。レーンのように、地域に広がった反同性愛の機運に悲しみを感じた人々がいただろう。イム牧師は「カカオトークやソーシャルネットワークが発達して、誤った同性愛嫌悪の論理が2007年に比べてより一層早く広く拡散した」と憂慮した。

「今もどこかで六友堂(ユク・ウダン)のように考える人が」

 第三時代キリスト教研究所研究室長のキム・ジノ牧師は、「神学校では人権教育が全くない」と指摘した。彼は「信者が牧師より合理的」と言いながら「福音主義教会の教会信者も、様々なメディアに目を向けていて、教会では習わなかったが、世の中に対する自分だけの考えを持つ場合が多い」と話した。ただし「最近の差別禁止法に対して、プロテスタント系メディアが批判的な見解を発しており、多様な見解に接する機会が少ない」と憂慮した。

 いつのまにか10年が流れた。2003年、青少年保護法施行令からの「同性愛」条項削除に対して、プロテスタントが動き出した。当時、韓国キリスト教総連合会は、同性愛を罪悪と規定する声明を出した。結局、条項は削除されたが、篤いカトリック信者であった同性愛者青少年の六友堂(ユク・ウダン)は、保守プロテスタント教会を批判する遺書を残して、自ら命を絶った。そして10年、山川が変わっても変わらない現実がある。4月25日、ソウル貞洞のフランチェスコ会館で「故六友堂10周年 追慕祈祷会」が開かれた。イム・ポラ牧師は、「今、どこかで、六友堂のような考えをしている人々がいるのではないだろうか」と心配した。

シニョン・ドンウク記者 syuk@hani.co.kr

http://h21.hani.co.kr/arti/special/special_general/34443.html 韓国語原文入力:2013/05/06 00:00
訳M.S(1785字)

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