本文に移動

【独自】移住労働者賃金未払い訴訟、被告の韓国政府、文書提出命令に「再抗告」

登録:2025-06-26 08:23 修正:2025-06-26 09:42
Aさんがソウルの漢江のほとりを見つめている。農場で賃金未払いの被害にあったAさんは、国を相手取った損害賠償訴訟の結果を待つためカンボジアに戻れず、韓国にとどまっている=市民団体「地球人の停留場」提供//ハンギョレ新聞社

 賃金未払い問題で大韓民国を相手取った移住労働者による最初の損害賠償訴訟で、政府が事業所の管理・監督文書を提出せよとの裁判所の決定に繰り返し従わず、再抗告までしていたことが25日に確認された。政府が裁判所の訴訟指揮に従わず、資料提出を拒否したことで訴訟が長期化し、被害救済が遅れていると批判されている。

 カンボジア出身の移住労働者Aさんは2015年6月から2020年3月まで京畿道のある農場で働いていたが、3年8カ月間にわたって3400万ウォン(約363万円)あまりの賃金が未払いとなっている。Aさんは2023年2月に「政府が外国人労働者を雇用する事業所に対する指導・監督義務をきちんと果たしていないせいで被害が発生した」として、農場主と大韓民国政府を相手取って損害賠償訴訟を起こした。

 水原(スウォン)地裁民事2部(イ・ヒョンソク裁判長)の審理で行われた裁判で、政府側は「指導・点検計画文書を作成しており、雇用事業所の管理・監督義務を忠実に果たしている」と主張。Aさん側は「(ならば)その資料を提出してほしい」として文書提出を命ずるよう申し立てた。裁判所はこれを認め、政府側に文書提出を命じたが、政府側は今度は「関連のない文書」だと主張して即時抗告した。裁判所は今月9日に即時抗告を棄却し、同時に文書提出を重ねて命じたが、政府は19日に再抗告状を提出した。

 政府に移住労働者の賃金未払いの責任があるかを判断するには政府が作成したと主張する文書が必要だ、というのが裁判所の判断だが、政府は「先例になりうる」として強く反発しているかたちだ。同訴訟を担当している雇用労働部の関係者は25日、ハンギョレの電話取材に対し、「韓国における(移住労働者の賃金未払いに関する)初の国家賠償事件であるため重大だ。今後、訴訟が相次ぐのではないか」と述べた。そして「(指導・点検)計画書は内部文書なので、外部への公開を念頭に置いていない。公開しても欠陥はないが、一般私企業も自社の内部計画を公開することはない」と述べた。

 賃金を受け取れていないAさんは国家人権委員会への陳情などを経て、かろうじてビザ延長が許可され、訴訟を続けている。提訴から裁判所による政府側の即時抗告の棄却まで2年4カ月を要しているが、政府の再抗告で本格審理はまたも先延ばしされている。Aさんを代理するチェ・ジョンギュ弁護士(法務法人ウォンゴク)は、「裁判所が提出を命じた文書は政府の指導・点検状況を立証するためにも提出しなければならない資料だが、訴訟の遅延を招いてまで政府が従わない理由が分からない」として、「政府の行政は透明に運営されなければならず、公開されなければならないが、私企業と比較することも不適切。被害者の権利回復を遅らせる被告大韓民国の再抗告は撤回されるべきだ」と述べた。

チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1204732.html韓国語原文入力:2025-06-25 22:27
訳D.K

関連記事