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韓国与党のハン代行大統領選擁立浮上…穏健保守結集の可能性に民主党は警戒

登録:2025-04-15 02:25 修正:2025-04-15 08:49
「国民の力」の主流、キム・ムンス前雇用労働部長官の対抗馬として一致 
「『4年重任改憲』提案されると容易ならざる戦いになり得る」
ハン・ドクス大統領権限代行首相が8日、政府ソウル庁舎の執務室で、米国のドナルド・トランプ大統領と電話会談をおこなっている=首相室提供//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の罷免後、保守陣営で「ハン・ドクス権限代行(大統領選出馬)擁立論」が急浮上したのに続き、11日に公開された韓国ギャラップの「将来の政治指導者選好度」にハン・ドクス大統領権限代行首相の名が初めて上がったことから、各党は慌ただしく損益計算を始めた。野党「共に民主党」は、ハン権限代行が保守の求心点となることを警戒して「内乱の共犯者が老欲にかられて出馬商売をしている」と糾弾し、勢いを削ごうとしている。圧倒的な最有力候補であるイ・ジェミョン前民主党代表の対抗馬が見出しにくい中、与党「国民の力」の主流は世界的な通商危機を口実としてハン権限代行擁立論に傾いているが、党内の大統領候補たちは強く反発している。

 韓国ギャラップが今月8日から10日にかけて、全国の満18歳以上の1005人の有権者に対して実施し、11日に結果を公開した電話インタビュー調査(95%信頼水準、標本誤差±3.1ポイント、回答率14.9%、携帯電話仮想番号方式)では、次期指導者選好度でハン権限代行は2%の支持を得た。ハン代行が名を連ねたのは初めてだが、ソウル市のオ・セフン市長、国民の力のアン・チョルス議員と同じ2%を得た(世論調査結果の詳細は中央選挙世論調査審議委員会のウェブサイト参照)。

 ハン権限代行の浮上を、国民の力は歓迎している雰囲気だ。クォン・ソンドン院内代表はこの日の院内対策会議後、記者団に対し、ハン・ドクス擁立論を「よいと思う」と評価した。クォン院内代表は「競争力のある多くの候補が我が党の予備選挙に出馬することは、コンベンション効果も高めるし、多くの国民の関心を得られるため、悪くない」と語った。

 圧倒的にリードする候補のいない国民の力では、ハン権限代行はイ・ジェミョン前代表の対抗馬として悪くないという評価を得ている。ソウル大学とハーバード大学で経済学を専攻し、経済官僚として働いてきただけに、グローバル通商危機にあたる適任者として立てることができるというわけだ。ハン権限代行の物腰柔らかなイメージ、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)両政権での経験、湖南(ホナム=全羅道)出身であることなども強みだ。

 ただならぬ雰囲気を察した国民の力の大統領候補たちは、直ちにけん制球を投じた。国民の力の大統領候補選好度1位のキム・ムンス前雇用労働部長官はこの日、CBSラジオで、「ハン権限代行は政治とはかなり距離があるし、政治を夢見ているというのは、私は一度も、寝言でも聞いたことがない」として制動をかけた。キム前長官は、「ハン権限代行が辞めれば、次はまたも権限代行の権限代行なのか。ハン権限代行が出馬のために辞めたら、相当な問題提起があり得ると思う」とし、「様々な問題のせいでこの国のリーダーシップが揺らいでいるのに、すぐにまた自分が大統領選挙に出馬すると言ってはいけないと思う」と述べた。

 この日、大統領選への出馬を宣言したナ・ギョンウォン議員も韓国放送(KBS)ラジオで、「(ハン権限代行には)今やるべき重大なことが多いため、非常に悩んでいるのではないかと思う。出馬の可能性はそれほど高くはないが、出馬することになればもう一つの愛国的決断だとは思うが、今は重要な関税戦争を終えなければならないという心配がある」と述べた。

 民主党は、12・3内乱に連なるハン権限代行が大統領選の候補として取り沙汰されること自体が問題だと批判している。一方で「ハン・ドクス・カード」が保守結集に対して変数として作用する可能性に神経をとがらせている。最近、民主党指導部のある議員は「キム・ムンス前雇用労働部長官が1位を走り続けていることを受け、国民の力の主流は、対抗馬はハン権限代行しかいないと判断し、尹錫悦前大統領に報告したという」として、「次期大統領の任期を短縮する4年重任制への改憲によって、3年だけ大統領をやって国政を安定させてから退くという戦略」であることを党内部で共有したという。キム前長官ではイ・ジェミョン前代表を相手にするのは困難とみて、ハン権限代行を立てようとしているということだ。

 先日、米国のドナルド・トランプ大統領と「電話会談」をおこなったハン権限代行の様子を公開することにより、内乱以降の極右勢力の蠢動(しゅんどう)で委縮していた穏健保守の結集を促せるという見通しもある。民主党の別の関係者はハンギョレに、「保守側の戦略家たちにハン権限代行を候補に擁立する動きがあるのは事実」だとして、「ハン権限代行の実際の擁立には至らなくても、一種の『プラットフォーム』として用いることで、キム前長官以外の穏健保守勢力がまとまる可能性があるとみている」と語った。ハン権限代行を中心としてユ・スンミン元議員、ソウル市のオ・セフン市長、国民の力のハン・ドンフン前代表らの党内候補をまとめて、極右の支持を受けるキム・ムンス前長官に勝つという計算もある、との趣旨だ。

 そうなると、6月3日の大統領選挙を「少数の内乱勢力と多数の合理的民主勢力の対決」として戦うという民主党の戦略は、大きく揺らぎうる。2022年の大統領選挙のように、保革両陣営が「49対51の薄氷対決」を繰り広げるぎりぎりの勝負になりうるからだ。首都圏選出の民主党のある議員は、「もしハン権限代行に『4年重任制改憲をおこなって、3年の任期中に国政の混乱を収拾してから退く』と主張されて勝負に出られたら、容易ならざる戦いになりうる」との見通しを示した。

 民主党の指導部がイ・ワンギュ法制処長らの憲法裁判官の指名問題を前にしても「ハン・ドクス弾劾論」に距離を置いているのも、このような流れを反映しているとみられる。ハン権限代行を下手に弾劾して、首相職の辞任と大統領選への出馬の大義名分を与えてはならないというわけだ。

オム・ジウォン、ソン・ヒョンス記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1192056.html韓国語原文入力:2025-04-12 05:00
訳D.K

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