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「情報流出だけでセンシティブ国指定? 核武装論とも関連」外交通の韓国野党議員

登録:2025-03-19 08:59 修正:2025-03-19 09:38
「外交部の主張は本質を覆い隠すもの」
共に民主党のウィ・ソンラク議員=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 米国のエネルギー政策、核物質、先端技術などを管轄するエネルギー省が、同盟国の韓国を「センシティブ国」に指定したことが大きな波紋を広げる中、17日の真夜中に韓国外交部が「外交政策上の問題ではなく、エネルギー省傘下の研究所のセキュリティーに関する問題が理由であることが把握された」という公示を発表した。直後には、米エネルギー省傘下のアイダホ国立研究所の職員が原子炉の設計図を韓国に持ち出そうとして摘発されて解雇され、連邦捜査局(FBI)などの捜査を受けているという内容が公開された。センシティブ国指定は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権から噴出した核武装論のせいだという指摘を、外交部が否定したのだ。

 数十年間にわたって外交部で対米外交や核問題などを担当してきた野党「共に民主党」のウィ・ソンラク議員はハンギョレに対し、「研究所の情報流出事件だけで米国が韓国という国全体をセンシティブ国に指定することはない」として、核武装論のせいで起きた今回の事態の本質を政府は隠そうとしてはならないと強調した。ハンギョレは17~18日の2日間にわたってウィ議員に電話インタビューをおこなった。

-情報流出事件がセンシティブ国指定の理由であり、核武装論とは関係がないとする外交部の説明をどう評価するか。

 「米エネルギー省傘下の研究所で韓国と関係するソフトウェア流出事件が起きたことが、センシティブ国指定を触発した可能性はある。しかし、米政府が韓国の核武装論を懸念していなかったら、このような事件で韓国という国全体をセンシティブ国に指定することはない。通常はそのような事件が起きたら、研究員を処罰するか、関係する研究所に対して措置を取る。いま全世界において、大統領をはじめ与党の政治家がこのように直接的に核武装を主張した国はない。そのような状況にあって、韓国と関係するソフトウェア流出などが起きたから、センシティブ国に指定されたものと考えるべきだ。あるのは保安問題のみで、核武装論とはまったく関係がないなどと外交部が断定するのは、本質を隠すことを狙った情報操作だ」

-韓国は1980年代にもセンシティブ国に指定され、後に除外されたことがあることが明らかになっているが。

 「1980年代に韓国がセンシティブ国に指定されたのも、朴正熙(パク・チョンヒ)政権の核兵器開発の延長線上で起きたことだ。その例に照らしてみても、今回のセンシティブ国指定は、韓国内での核拡散の懸念の流れの中から出てきたと解釈するのが合理的だ。米エネルギー省の監査部署の報告書によると、アイダホ研究所で韓国と関係する原子炉ソフトウェアの流出が試みられた事件が起きたのは2023年だが、韓国がセンシティブ国に指定されたのは2025年1月だ。その事件だけでなく、核武装論の脈絡全体から考えるべきだ」

-与党「国民の力」は、センシティブ国指定は核武装論のせいではなく、イ・ジェミョン代表の「親中反米」のせいだと主張している。

 「荒唐無稽な主張だ。いま波紋がこれほど深刻に広がっているにもかかわらず、核武装論を主張してこのような事態を招いた人々が『核武装論のせいではない』と言い張るのは非常に嘆かわしい。今からでも問題を認めないと、正す道は開かれない。この問題を解決する責任は、このかん核武装論を声高に主張してきた政府と与党にある」

-韓国政府は、今回のセンシティブ国指定で韓米の技術協力に大きな影響はないことを米国に確認したと言う。

 「米国の同盟国の中で、このようなレッテルを貼られた国は韓国が唯一だ。米国側でもセンシティブ国は『情報セキュリティー(information security)』の問題、韓国式に言うと『情報保安』の問題だと考えている。これは、センシティブ国になった韓国とは敏感な高級情報の共有は難しく、技術分野で韓米同盟が2流、3流の同盟になることを意味する。規定だけをみれば手続き的な制約だが、実際には『質的な制約』が起きることになる。毎年米エネルギー省傘下の研究所と行き来しつつ研究をおこなってきた2千~3千人ほどの韓国の研究者、そして米国から韓国にやって来る専門家たちも、すべて事前に届け出て承認を受けなければならない。そうなると、実際には先端分野で深いレベルの協業、共同研究、情報交流は難しくなる」

-米エネルギー省は、韓国が指定されたのはセンシティブ国の中で最も低い段階だとしている。

 「センシティブ国の中で段階の低い『その他の指定国』だと言っても、韓国が核拡散の懸念のせいで『レッテルを貼られた国』になったという事実は変わらない。今回の事態は、米国に韓国内の核武装論に対する深い危惧があったから起きた。韓国は核不拡散問題で『3度目のレッテル』を貼られたのだ。1度目は1970年代の朴正熙政権の核開発、2度目は2000年代半ばに韓国の科学者たちが実験室でウラン濃縮を試みた時。今回は米国政府が公式に『核拡散が懸念される国』というレッテルを貼ったのだ。今回は『警鐘』を鳴らしたものだが、韓国の政治家が核武装論を主張し続けたり、試みたりすれば、今後は次第に段階が上がっていくということだ」

-先週末、米エネルギー省が韓国のセンシティブ国指定を公式に認めた際に、指定したのはバイデン政権だと明示したのは、何を意味するのか。

 「トランプ政権は、前のバイデン政権が韓国をセンシティブ国に指定したと強調しながらも、それを覆したり、修正すると言ったりせず、既成事実として認めた。外交部は事前に知らなかったし、報道されてからエネルギー省や国務省の韓国担当者などと接触し、リストは最終確定したものではなく変更もありうると述べた。だがエネルギー省は、すでに確定したものだと公表した。韓国政府は、軸をしっかりさせて状況を総合的に判断すべきだ。尹錫悦政権ではこの2年半の間、核武装論が国中を揺るがした。尹錫悦大統領が自ら語り、キム・ヨンヒョン前国防部長官とシン・ウォンシク国家安保室長がいずれも公開の場で核武装論を語り、国民の力の多くの議員も核武装論を主張し続けた。米政界ではこれに対する懸念が広がった。ならば当然、米国内ではこのような状況を深刻にとらえ、制裁の動きが生じざるを得ないと判断し、備えるべきだった」

-民主党からも「核潜在力」(作りはしないものの、有事の際に短期間で核兵器を生産、配備する能力)議論が出はじめているが、今回の事態を機に変化はありうるか。

 「民主党では、今回の事態を機として核潜在力論議は収拾されつつある。核潜在力を主張していた人たちも深刻に考え直していると言っている」

-今、韓国にとって最善の解決策とは。

 「韓米の協議を通じて、センシティブ国リストから韓国が除外されることを願っている。しかし最も重要なのは信頼の回復だ。韓国の核武装に対する危惧を払拭しなければならないが、その責任は政府と与党にある。その後は与野党が超党派的にコンセンサスを形成し、核武装と核潜在力は追求しないとはっきり線を引くとともに、『韓米原子力協定』の改定によって原子力の平和利用のための濃縮と再処理の権限を拡大する方向に進むべきだ」

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1187508.html韓国語原文入力:2025-03-18 11:51
訳D.K

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