内乱首謀容疑で起訴された尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の拘束が取り消されたことに対し、市民は当惑、失望、そして怒りを隠せずにいる。市民たちは「自由の身」となった尹大統領が極右勢力を扇動し、混乱が深まることを恐れている。12・3内乱以降の捜査の乱脈ぶりが「拘束取り消し」を招いたとして、捜査機関の責任を問う声も高まっている。
尹大統領の罷免を求めて集会に参加し続けてきた会社員のLさん(30)はこの日、ハンギョレに「尹大統領の拘束が取り消されたという速報を見て、とても当惑した。12月3日に非常戒厳の速報を見た時と同じように感じた。このところ収まっていた『内乱性ストレス』が急速に再発して頭が痛い。内乱の疑いが持たれている現職大統領がまたどんなことを企てるのか分からないのに釈放なんて。一日も早く憲法裁判所で弾劾審判の結論を下し、問題を解決すべきだ」と声を強めた。
会社員のPさん(30)も「すでに違法な戒厳をした人がそのようなことを再び起こさないという保証はないし、自身の権力を用いて裁判に影響を及ぼすこともありうるので心配だ。拘束は手続きと規定に則って執行されるということはわかるが、今回の釈放は支持者に正当性を与えることになりそうだ」と述べた。
この冬に市民の思いはソウル漢南洞(ハンナムドン)の官邸前で尹大統領の逮捕と拘束を求める徹夜集会の実現につながったが、それだけに市民の失望も大きい。「尹錫悦退陣を目指して行動する青年たち」の代表を務めるイ・ジェジョンさん(31)は、「尹錫悦大統領の拘束のために数多くの市民が漢江鎮(ハンガンジン)で何日も徹夜で苦労したのに、このようにあっさりと釈放されると当惑する。このところ集会の規模がとても小さくなっているが、改めて市民は声をあげなければならない」と話した。
集会に熱心に参加してきた30代のキム・ジョンマンさんも、「みんな何日も朝までニュースばかり見ながら、気をもんで官邸前でデモもしたりして逮捕したのに、このようなかたちで釈放されるというのはとても腹が立つ。これほど大きな光化門集会への招待状はない」と述べた。
この日、すぐに集会に行くと意気込んだ市民たちもいる。ソウル江西区(カンソグ)に住む就活生のムン・ジヒョンさん(26)は、「市民たちが雪の降る中、雨の降る中で、外で野宿までしてようやく実現した逮捕と拘束なのに、それにかかわった人間として、市民の声を完全に無視していると感じる。また漢南洞の官邸前に集まらなければならないと思う。今日もすぐ行くつもりだ」と話した。
市民たちは、これまで「獄中政治」を続けてきた尹大統領が釈放されれば、支持勢力に対する扇動がよりいっそう激しくなる恐れがあると懸念する。30代の会社員Cさんは、「今回の拘束取り消しによって、極右がさらに暴れるのではないかと心配だ。近いうちに憲法裁で弾劾審判の判決も下されるが、今回の拘束取り消しは尹大統領の支持勢力の乱暴をあおる格好になりそうだ」と話した。ソウル鍾路区(チョンノグ)に住むPさん(38)も、「すでに獄中から支持者に扇動的発言を続けてきた尹大統領が、極右集会に参加して大きな顔をしそうで心配だ。どうか静かに弾劾審判と刑事裁判を受けてほしい」と話した。
内乱捜査の初期から浮き彫りになっていた検察、警察、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)による捜査の乱脈ぶりが尹大統領の釈放を招いた、との批判も強い。ソウル麻浦区(マポグ)に住む30代のCさんは、「内乱によって国が真っ二つに割れてめちゃくちゃになって数カ月たつのに、捜査機関同士で捜査権をめぐって争っているうちに拘束取り消しという前代未聞の事態まで招いた。混乱を立て直すべき捜査機関が混乱の火に油を注いだかたち」だと批判した。仁川(インチョン)に住む会社員のイ・ジョンボクさん(28)も、「検察と公捜処がきちんとすべきだったと思う。捜査機関に対する失望も感じる」としつつも、「それでも、そのような小さなことが拘束を取り消すほどの理由になるのかと疑問に思う」と話した。
この日、ソウル中央地裁刑事合議25部(チ・グィヨン裁判長)は、尹大統領側が先月4日に請求した拘束取り消しを認容した。拘束取り消しは、拘束の理由がない時や消滅した時に検事、被告人、弁護人などが裁判所に拘禁状態の解消を請求する制度。