韓国検察は内乱首謀の容疑で尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を拘束起訴した。韓国の憲政史上、現職大統領が拘束され裁判にかけられるのはこれが初めて。「12・3内乱事態」に加担した軍・警察の主要指揮部に続き、「トップ」である尹大統領が起訴されたことで、内乱関連の捜査は事実上終了した。
検察の非常戒厳特別捜査本部(本部長:パク・セヒョン高等検察庁長)は26日、内乱を首謀した容疑で尹大統領を拘束起訴したことを明らかにした。尹大統領は違憲・違法な非常戒厳を宣布し、非常戒厳解除を阻止ことを意図して国会議員など主要な人物らを令状なしに逮捕しようとした疑いが持たれている。
尹大統領事件を検察に渡した高位公職者犯罪捜査処(公捜処)は、尹大統領がキム・ヨンヒョン前国防部長官らと共謀し、国家権力を排除し国憲を紊乱(びんらん)することを目的として昨年12月3日に非常戒厳を宣布して暴動を起こしたと判断した。
検察特捜本は23日に公捜処から尹大統領事件を移牒された後、拘束期間の延長を裁判所に申請したが、裁判所が許可しなかったことにより、追加捜査なしに尹大統領を起訴した。裁判所は、公捜処法の趣旨上、公捜処が捜査して渡した事件を検察が強制捜査などでさらに捜査する根拠が足りない、という理由で拘束期間延長申請を不許可とした。検察は25日に直ちに拘束延長を再申請したが、裁判所は同じ理由で許可しなかった。
拘束期間延長が行き詰まると、シム・ウジョン検察総長はこの日午前、高等検察庁・地方検察庁長会議を開き、内部議論を経て尹大統領を起訴するとの結論を下した。検察は、尹大統領の第1次拘束期間の満了日を最大で今月27日とみている。拘束期間満了前に尹大統領を起訴できなければ釈放しなければならない。検察はキム前長官などの公訴内容でも尹大統領を内乱の「トップ」としており、追加の捜査がなくても起訴は可能だという判断を下したとみられる。
内乱事態から派生した尹大統領の他の容疑に対する捜査は、弾劾審判の結果が出るまでは難しい見通しだ。大統領警護処の逮捕令状執行阻止を捜査中の警察は、尹大統領を特殊公務執行妨害容疑の共犯者と判断している。しかし、現職大統領であるため、内乱容疑以外の罪名が明らかになったとしても尹大統領に対する起訴は不可能な状況だ。
まだ残っている捜査も一部ある。公捜処はハンギョレなど主要メディアへの電気・水の供給断絶を指示した疑いが持たれているイ・サンミン前行政安全部長官に対する調査を継続する方針だ。また警察は、尹大統領の逮捕令状執行を阻止したキム・ソンフン大統領警護処次長を特殊公務執行妨害などの容疑で捜査している。