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「韓国国家人権委員長候補、宗教の自由と嫌悪を混同」候補辞退の要求広がる

登録:2024-09-05 09:44 修正:2024-09-05 10:24
聴聞会の後、宗教・学界から反対の声 
チェ・ヨンエ元人権委員長「資格不足」 
人権委内部でも「虚脱、心配、怒り」
アン・チャンホ国家人権委員長候補が3日午前、ソウル汝矣島の国会で開かれた人事聴聞会に出席し、委員たちに向かって挨拶をしている=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 国家人権委員長候補であるアン・チャンホ氏に対する国会での人事聴聞会後、不適格な人物であることが確認されたとし、アン氏の辞退を求める声がさらに高まっている。保守プロテスタントの理念をもって嫌悪と差別を正当化しながら公職を遂行しようとしているという点で、大韓民国憲法が定めた政教分離の原則まで損なうという批判が強い。

 性的マイノリティの祝福祈祷をしたという理由でキリスト教メソジストから破門されたイ・ドンファン牧師は、アン候補者の人事聴聞会を見た後、「誰かの人権を抑圧する宗教の自由はありえない」ときっぱりと述べた。イ牧師は4日、ハンギョレとの電話インタビューで「(アン候補は)プロテスタント内でも非常に原理主義的で極右的で差別的な考えを持つごく少数の人物」だとし、「宗教の自由と嫌悪の境界を混同する人物が、マイノリティの人権について敏感な感覚を持たなければならない人権委員長に任命されるのは、深刻な問題」だと述べた。また、「宗教の論理において神は完璧な方だが、神が創造された性的マイノリティをどうして間違った存在だと言えるのか疑問だ。聖書を時代的流れに合わせて解釈しなければならないのに、(アン候補者のように)選択的に引用するのは悪意的」だと批判した。

 イ牧師は、アン候補が公職に挑むのを契機に「政教分離の境界を議論するタイミング」だと強調した。公的な場で宗教的偏向性を露骨に表わすアン候補の行動こそ「宗教の自由」という憲法の価値を害しうるという話だ。イ牧師は「宗教的信念が『宗教の自由』を装って公的な場に出てきて、世俗法の人権観念に悪影響を及ぼすのが受け入れられること自体が問題だ」と語った。

 建国大学法学専門大学院のハン・サンヒ教授も、アン候補を「民主共和国というアイデンティティを否定する人」だとし、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が好む表現で言えば『反国家勢力』だ」と述べた。ハン教授は人権委員長の公募に志願していたが、「人権委員会の存在自体のために闘う」として辞退した。ハン教授は、アン候補が進化論を否定し、性的マイノリティ問題を憲法・人権の論理ではなく一部の宗派の意見から眺め、「韓国を世俗国家ではなく宗教国家、神政国家にしようとする考え」を持っていると語った。また「(アン候補は)憲法に忠誠を尽くさなければならず、国民全体の利益に奉仕しなければならない公務員としての基本的な資質に欠けている人」だと述べた。

 人権委の初代事務総長(2002~2004)と常任委員(2004~2007)、8代委員長(2018~2021)を務めたチェ・ヨンエ元委員長は「(聴聞会での)発言の時、(アン候補の)表情を見たが、はばかることなく堂々としていた。あきれて絶望的だった。アン候補は資格不足だ」と述べた。チェ元委員長は「人権委では委員長の哲学と規範、価値が非常に重要だ。(それなのに)差別禁止法や性的マイノリティに対する考えはもちろん、女性の服装を性犯罪を起こす要因にあげるなど、韓国社会がこれまで克服するために努力してきた社会的基準をなにからなにまで全て後退させるようだ」と憂慮を示した。

 前日、人権委の内部掲示板には「マイノリティを非難する権利が表現の自由なのか疑問」「進化論・創造論、両方とも信仰の問題だという。どこからあんな人を連れてきたのか」「神が人間を創造したとすれば、韓国の出生率を心配せずに泥をどうやってうまく供給するかの問題だけを解決すればいいではないか」と投稿された。「人事聴聞会でまで加減なく発言するとは思わなかった」として当惑を越えて怒りを感じ、「アン・チャンホ人権委」体制を心配しているようすだ。特に、尹大統領に関連する人権侵害懸案に対してはアン候補者が口を閉ざしたことに、職員のAさんは「大統領や政権に対する顔色まで伺いそうでかなり心配だ」と言った。Bさんは「性的マイノリティの人権保護業務と平等法(包括的差別禁止法)業務が麻痺する可能性が大きく、政治的に敏感なイシューに対する人権的対応が縮小されると思われる」とし、「人権保護業務ではなく親政府擁護委員会に転落しかねない」と懸念を示した。Cさんは「職員たちの間では虚脱、あきらめ、心配、怒りの感情が入り混じっている。人権委が存在感の弱い行政機関のようになりそうだ」と述べた。

 市民社会はアン候補の指名撤回と辞退を要求した。35の人権・市民社会団体が参加した「国家人権委員会を正す改正共同行動」と「差別禁止法制定連帯」はこの日、国会前で記者会見を行い、「国会人事聴聞会は、アン候補が国家人権委員会の委員長としてふさわしい人物なのかに対する評価以前に、どうしてこのような観点を持った人が憲法裁判官まで務められたのかに対する疑問が生じるほど衝撃的だった」と評価した。続けて「アン候補は性的マイノリティや労働者をはじめとする私たちの社会的少数者の権利を無視し、人権委で人権を消すことの先頭に立つ人物」だとし、「アン候補に対する指名は直ちに撤回されるべきだ」と強調した。

コ・ギョンテ、イ・ジヘ、イム・ジェヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1157063.html韓国語原文入力:2024-09-05 07:12
訳C.M

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