人権擁護者の状況に関する国連特別報告者が、韓国の国家人権委員会(人権委)のキム・ヨンウォン常任委員の反人権的態度に懸念を表明する書簡を韓国政府に送ったという。軍人権保護官を兼ねているキム委員が、軍での死亡者の遺族の捜査を警察に依頼するなど、むしろ人権侵害の先頭に立った行いを指摘したのだ。政府が国連人権特別報告者からこのような書簡を送られる状況こそ、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の人権委の現在地だ。
ハンギョレの報道によると、人権擁護者の状況に関する国連特別報告者を務めるメリー・ローラー氏から韓国政府に送られた書簡は、キム委員が故ユン・スンジュ一等兵の遺族を捜査するよう警察に依頼したこと、市民団体「軍人権センター」を相手取って損害賠償請求訴訟を起こしたことを指摘したものだという。キム委員は昨年10月、キム委員がユン一等兵事件の真相究明要求を却下したことについて面談を要請したユン一等兵の遺族や人権活動家たちを、建造物侵入容疑などで捜査するよう警察に依頼した。一体、このような人権委員がいままでいただろうか。
ユン一等兵事件は、人権委に軍人権保護官を置く契機となった事件だ。キム委員は軍人権保護官が何をすべきなのかを分かっているのか、疑われる。人権委員だとは到底信じられないキム委員の行いはこれだけではない。彼は「左派解放区」(人権委)、「人権商売」(人権団体)などと、人権委や人権団体に対する暴言を日常的に行っている。昨年、海兵隊捜査外圧疑惑が持ち上がった際には、パク・チョンフン大佐に対する緊急救済案件を棄却し、国民の怒りを買った。最初こそ国防部が海兵隊の捜査記録を警察から回収したのは不適切だという趣旨の立場を表明したものの、5日後にイ・ジョンソプ国防部長官(当時)と通話してからは態度を180度変えた。国民の人権を守るべき人権委員の本分を忘却した行いだ。
国内人権機関に関するアジアNGOネットワークは6月に尹錫悦大統領に書簡を送り、次期委員長を選出する際には国際人権基準を順守するよう求めた。書簡は、「韓国の人権委はアジア地域の国家人権機関のモデルとなってきたが、2022年5月以降、様々な懸念が示されている」と述べている。キム・ヨンウォン委員とイ・チュンサン委員のことを述べたものだという。キム委員は尹大統領によって、イ・チュンサン委員は与党「国民の力」によって指名された。キム委員は9月に任期が終わるソン・ドゥファン委員長の後任の公募に応募したという。あきれたものだ。尹大統領はキム委員をまったくふさわしくない人権委員に指名することでも足りず、人権委員長にすえようというのか。尹大統領の考える人権とは一体どのようなものなのか。国連も懸念する人物が人権委員長になるようなことがあってはならない。