外交部は21日、韓国最高裁(大法院)が日本企業の損害賠償の責任を認め、強制動員被害者と遺族を支持する判決を下すと、第三者弁済案による判決金の支払いを進めるという方針を繰り返した。しかし、この日勝訴した被害者と遺族の一部を含む他の強制動員被害者が、政府の第三者弁済案を拒否しているうえ、裁判所も被害者の意思に反するとして、政府による供託の異議申立てを棄却しており、名目に欠けるという批判が出ている。
外交部のイム・スシク報道官はこの日の定例会見で、「今日の判決についても、3月に発表した強制徴用確定判決に関する政府の立場にしたがい、日帝強制動員被害者支援財団(財団)が原告の方々に判決金と遅延利子を支払う方針」だと述べた。「第三者弁済解決案」は、財団が民間の寄付金を通じて用意した財源を、日本の加害企業に代わり強制動員賠償確定判決を受けた被害者に賠償金と遅延利子を支払う方式だ。
しかし、この日勝訴した原告の一部は、政府の第三者弁済案による判決金を受け取らない意向を被害者代理人と被害者支援団体側に明らかにしたことが分かった。これに先立ち、強制動員関連の最高裁判決で勝訴した被害者と遺族ら原告15人のうち11人は政府案を受け入れたが、生存被害者2人(ヤン・クムドクさん、イ・チュンシクさん)と故人となった被害者(パク・ヘオクさん、チョン・チャンヒさん)の遺族らは、第三者弁済案による政府の判決金の受け取りを拒否している。これに対し政府は、これらの人々が受け取ることを拒否した判決金を、裁判所にゆだねて払わせようとする「供託」を進めようとしたが、裁判所は「被害者の意思に反した供託は不可」とする判断を下している。
こうしたなか、財団には被害者や遺族らに判決金を支払うほどの資金がないという指摘も出ている。国会の外交統一委員会に所属の最大野党「共に民主党」のパク・ホングン議員室が国政監査期間に公開した資料によると、9月時点で財団に寄せられた寄付額の合計は41億1400万ウォン(約4億5000万円)だ。これにはポスコなど11社が参加した。これに先立ち財団は、この基金から政府案を受け入れた11人に1人あたり2億ウォン(約2200万円)以上の判決金を支払った。これには判決金の受け取りを拒否した被害者4人に払う供託金約10億ウォン(約1億1000万円)を残しておかなければならないという点を考慮すると、財団が使える基金は10億ウォンしかないと予想される。
しかし、この日の判決によって財団が支払わなければならない賠償金は合計11億7000万ウォン(約1億3000万円)であり、遅延利子まで含めると20億ウォン(約2億2000万円)をはるかに越える。さらに、最高裁に持ち込まれ確定判決を待つ強制動員訴訟も7件ほどある。これらの裁判に対する賠償金をすべて合わせると、100億ウォン(約11億円)を越える可能性があるという分析がある。
これについて外交部と財団は「財源を拡充する」という立場だけを繰り返した。外交部当局者は「民間の自発的な寄与を含め、目的の事業を遂行できる財源拡充案を検討していく」と述べた。財団関係者も「財源を拡充し、3月に被害者に約束した通り支給する」と述べた。
こうしたなか、日本企業は第三者弁済案に呼応せずにいる。日本製鉄や三菱重工業などの加害企業はもちろん、どの日本企業も基金に参加しないでいる。逆に日本政府はこの日、外務省の鯰博行アジア大洋州局長が、駐日韓国大使館のキム・ジャンヒョン政務公使を呼んで抗議し、「最高裁判決は断じて受け入れられない」という反応を示した。