韓国最高裁は、日本の戦犯企業に対する日帝強制動員の被害者の損害賠償請求権が有効かを問う際には、2012年ではなく2018年10月30日を起点にすべきだとする判断を初めて下した。2018年10月以降に起こされた下級審で係争中の約60件の訴訟、230人あまりの原告が、この判決により請求権が認められた状態で賠償の是非を裁判で争えるようになった。
最高裁2部(主審:イ・ドンウォン最高裁判事)は21日、1940年代に強制動員され労役に苦しめられた被害者と遺族が日本製鉄(旧新日鐵住金)と三菱重工を相手取って起こした2件の損害賠償請求訴訟で、原告勝訴の判決を下した原審を確定した。日本製鉄と三菱重工は被害者1人当たり1億~1億5000万ウォン(約1090万円~1640万円)の賠償金と遅延損害金を遺族に支払わなければならない。両事件で確定した賠償金の総額は11億7000万ウォン(約1億2800万円)。
今回の訴訟の原告たちは、太平洋戦争中の1942年から1945年にかけて、日本製鉄の前身である国策軍需企業の製鉄所と三菱重工名古屋航空機製作所に強制動員され、働かされた。両訴訟の一審と二審は原告の請求を認め、日本企業に賠償を命じたが、裁判が長引いている間に被害当事者たちは全員が世を去った。
最高裁が日本の戦犯企業を相手取った損害賠償訴訟で強制動員被害者勝訴の判決を下したのは、今回が初めてではない。2000年の初の強制動員被害者による損害賠償訴訟で、最高裁は2012年、「韓日請求権協定で強制動員被害者の損害賠償請求権が消滅したとは考えられない」として事件を破棄し、下級審に差し戻した。その後、この事件は破棄差し戻し審と再上告審を経て、最終的に2018年10月30日に被害者が最高裁で勝訴した。
すでに最高裁の勝訴判例がある中、強制動員被害者に残された訴訟の最大の争点は、損害賠償請求権の効力が失われているかどうかを問う際、いつを起点とするかだった。この事件において損害賠償請求権は「権利行使の障害事由が除去された日」から3年の間に行使しなければ消滅するが、裁判所は日本企業の違法行為と賠償責任は概して認めつつも、「消滅時効3年」の起点については判断が分かれていた。
一部の訴訟では、最高裁が初めて強制動員被害者の損害賠償請求権を認めた2012年5月24日を起点とし、一部は強制動員被害者の初の勝訴が確定した2018年10月30日としていた。
この日、最高裁は「2018年の全員合議体による判決で初めて大韓民国内で強制動員被害者の司法的救済の可能性が確実になったと考えられる」として、2018年10月30日が消滅時効の起点であることを明示した。2012年の判決は破棄差し戻しが趣旨であるため「確定的認定」ではなく、破棄差し戻し審で新たに提出される主張と証拠によっては結論が変わりえたため、他の被害者にとっては依然として被害救済の可能性に疑問を持ちえたということだ。
現在、1000人あまりの強制動員被害者の起こした66件の損害賠償訴訟が裁判所の判断を待っている。このうち230人あまりが提訴した60件あまりの訴訟が、今回の判決によって請求権を保障されることになった。残りの訴訟の原告は2012年を起点にしても請求権は有効だ。