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緩衝区域、合意から5年で形骸化…南北「監視対決」の場合は衝突の雷管に

登録:2023-11-23 06:55 修正:2023-11-23 08:22
9・19南北軍事合意の一部効力停止で何が変わるか
北朝鮮が軍事偵察衛星1号の「万里景1号」の3回目の打ち上げを行った翌日の22日午前、京畿道坡州市の自由路の向こうに韓国軍警戒所(下)と北朝鮮軍警戒所が向かい合っている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 2018年、南北が接境地域での偶発的な軍事衝突を防ぐため、地・海・空に緩衝区域を設けることで合意した9・19南北軍事合意(以下9・19軍事合意)の一部内容が、合意から5年で形骸化した。

 韓国政府は北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げに対応し、22日午後3時から9・19軍事合意第1条3項の軍事境界線(MDL・休戦ライン)一帯の飛行禁止区域の設定に対する効力停止を決定した。これに伴い、韓国軍当局は9・19軍事合意以前に施行していた軍事境界線一帯での北朝鮮の挑発兆候に対する無人機などの空中監視偵察を復元すると発表した。

 軍は同日午後3時以降、軍団級無人機「ソンゴルメ(はやぶさ)」と偵察機の「金剛(クムガン)」や「白頭(ペクトゥ)」などを軍事境界線付近に投入したという。シン・ウォンシク国防部長官は同日、「韓国放送(KBS)」のラジオ番組に出演し、「飛行禁止区域がなくなったので、2018年9月19日以前の国連軍司令部の統制下で定められた飛行原則に戻ることになる」とし、「韓国の偵察機が北上できるいわゆる飛行禁止線が韓国地域内から北へと上がることになった」と述べた。9・19軍事合意の一部効力停止で、以前のように国連軍司令部の規定による飛行禁止区域が軍事境界線以南5マイル(9.26キロメートル)までに縮小するという意味だ。シン長官は「我々自らを制限していた偵察監視能力に対する足かせを外したという意義がある」と述べた。

 2018年9月、平壌での南北首脳会談で交わされた9・19軍事合意は、軍事境界線周辺の陸・海・空で衝突を防ぐ緩衝区域の設定を主な内容としている。そのうち第1条3項は空中に関するもので、軍事境界線の南北にわたり、戦闘機や偵察機など翼が固定された固定翼機の場合、東部地域は40キロメートル、西部地域は20キロメートルまで飛行禁止区域とした。翼が回るヘリコプターのような回転翼機は10キロメートル、無人機は東部地域で15キロメートル、西部地域で10キロメートル、気球は25キロメートルまで制限した。最前線の陸軍師団や軍団で使用する無人機は探知距離が10キロメートル未満であるため、軍事境界線以南10~15キロメートルで飛行できないことで、実質北朝鮮に対する監視・偵察ができなくなった。

 政府は9・19軍事合意の効力停止を速戦即決で実行した。北朝鮮の軍事偵察衛星の打ち上げ直後、英国訪問中の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領主宰で緊急国家安全保障会議(NSC)常任委員会をオンラインで開き、22日午前8時にはハン・ドクス首相が主宰した臨時国務会議で、9・19軍事合意第1条3項の効力停止案を議決した。尹錫悦大統領はこれを直ちに裁可した。国防部高官は「大統領の裁可後、東・西海地区の軍通信線で北朝鮮側に通知しようと試みたが、通信線が作動しない状態」だとし、「北朝鮮もマスコミ報道で知っているはずなので、マスコミを通じた国民への説明で北朝鮮に対する通知に代える」と述べた。

 国防部のホ・テグン国防政策室長は同日のブリーフィングで、「9・19軍事合意による飛行禁止区域の設定で、接境地域における北朝鮮軍の挑発の兆候に対する韓国軍の監視・偵察が制限される状況で、むしろ北朝鮮は軍事偵察衛星まで打ち上げて韓国に対する監視・偵察能力を強化しようとしている」とし、効力停止の背景を説明した。

 国防部は2019年から今月まで北朝鮮の9・19軍事合意違反件数が3400回以上だと明らかにした。しかし、北朝鮮と9・19軍事合意実務交渉を行ったキム・ドギュン元首都防衛司令官は「文在寅(ムン・ジェイン)政権時代時までは南北が相互脅威と判断できる水準の挑発的威嚇行為は全くなかった」と語った。北朝鮮が西海側の海岸砲の砲門閉鎖を毎年100~1000回余り違反したのがほとんどだが、北朝鮮の海岸砲の砲門開放は海辺坑道内の湿気除去のために行われたものだという。挑発的威嚇行為は尹錫悦政権発足後に行われており、北方限界線(NLL)以南へのミサイル発射、首都圏地域への小型無人機の侵入などがその事例だと、キム元司令官は指摘した。

 尹錫悦政権は今年初めから北朝鮮の無人機による首都圏への侵入や、イスラエルとハマスの戦争を前面に出して、9・19軍事合意の形骸化を試みたが、今回の3回目の北朝鮮による偵察衛星の打ち上げを機に効力停止に踏み切った。国防部高官は「通常兵器の運用的軍備統制である9・19軍事合意と、国連安全保障理事会決議違反である北朝鮮の偵察衛星の打ち上げに関連があるのか」という質問には答えなかった。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1117473.html韓国語原文入力:2023-11-2300:29
訳H.J

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