外交安保の専門家たちは、北朝鮮の軍事偵察衛星発射を理由に韓国政府が9・19南北軍事合意の一部を効力停止したことは名目のない措置だと評価し、南北衝突の可能性を高めただけと懸念を示した。22日、ハンギョレが意見を求めた専門家たちはこのように診断し、北朝鮮が今後4・27板門店宣言の破棄などさらに進んだ行動に出る可能性があるとの見解を示した。
専門家たちはまず、北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げが、弾道ミサイル技術を利用したすべての発射を禁止した国連安全保障理事会(安保理)決議に違反しただけであり、9・19軍事合意に違反したわけではないため、これを理由に軍事合意の効力を停止することは当為性が弱いと評価した。そのため北朝鮮が「韓国が一方的に9・19軍事合意を破棄した」と主張する可能性が高いということだ。統一研究院のホン・ミン先任研究委員は「9・19軍事合意で合意した領域と軍事偵察衛星打ち上げは別問題」とし「偵察衛星打ち上げを理由に軍事合意の効力を停止したことは、北朝鮮にむしろ逆攻の口実を与えるもの」と評価した。
専門家たちは、具体的な武力衝突が続く可能性を懸念した。延世大学統一研究院のキム・ジョンデ客員教授は、「北朝鮮は西北海域での海岸砲を開放し、韓国はそれに対抗するために海上射撃訓練を始めるだろう」とし、「そうなれば自然に衝突の可能性は高まり、南北は何の保護装置もない文在寅(ムン・ジェイン)政権以前の状況に戻ることになる」と憂慮した。また、北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は「ドローンなどを利用した偵察をはじめとする軍事的緊張を高める行為が続くだろう」とし「最近エンジン試験を終えた中長距離弾道ミサイル発射の可能性も排除できない」と述べた。キム・ドンヨプ教授は「直ちに空中で戦闘が起きたり直接的な衝突が起きる可能性は少ない」としながらも「長期的に見た時、南北間の衝突が発生する口実になる可能性がある」と述べた。
専門家たちは、南北の状況が悪化すれば4・27板門店宣言の破棄状況にまで至る恐れがあると懸念し、情勢管理に努めるべきだと助言した。板門店宣言は2018年4月27日、文在寅大統領と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が第1回南北首脳会談で発表した共同宣言で、軍事的緊張状態を緩和し戦争の危険性を実質的に解消し、恒久的で強固な朝鮮半島平和体制を構築するという内容だ。