北朝鮮が21日夜、軍事偵察衛星を打ち上げた。8月24日の2回目の打ち上げ失敗から89日ぶりに行なった3回目の打ち上げだ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は「重大事由が発生した場合」には9・19南北軍事合意の効力停止を公言してきたため、朝鮮半島は当分緊張が高まるものとみられる。
合同参謀本部は同日夜、記者団へのショートメッセージで「韓国軍は午後10時43分頃、北朝鮮が平安北道東倉里(トンチャンリ)一帯から南方向に打ち上げ、白ニョン島(ペクニョンド)および離於島(イオド)西の公海上空を通過した『北朝鮮の主張する軍事偵察衛星』1発を確認した」とし、「韓国軍は警戒態勢を格上げした中、米国、日本と『北朝鮮の主張する軍事偵察衛星』に関する情報を緊密に共有し、万全の態勢を維持している」と伝えた。
北朝鮮は同日午前、日本の海上保安庁に「22日0時から来月1日0時の間」に衛星を打ち上げる計画だと通知した。国際海事機関(IMO)は、加盟国が航行の安全に影響を及ぼす軍事訓練などを行う場合、事前に通知する義務を課しているが、北朝鮮は朝鮮半島近海の「航行区域警報」の調整を担当する日本に打ち上げ計画を通知した。
しかし北朝鮮はこれを破り、事前に通報した22日0時よりも1時間17分早く軍事偵察衛星を打ち上げた。北朝鮮が時間を破ったのは、22日未明の打ち上げ場所付近の気象状況が良くなかったためとみられる。平安北道東倉里一帯の天気は、22日0時から午前7時まで曇りとの予報だった。
軍当局は、北朝鮮の打ち上げた飛翔体の段分離の成功と、偵察衛星が宇宙軌道に進入するかについてさらに分析中だ。北朝鮮は5月31日と8月24日、東倉里所在の西海衛星発射場から偵察衛星「万里鏡1号」を搭載したロケット「千里馬1型」ロケットを打ち上げたが、衛星を軌道に進入させるのに失敗した。
北朝鮮が今回の3回目の打ち上げに成功すれば、ロシアの支援で技術的問題を克服し、長距離打撃能力と衛星を通じた監視偵察能力を引き上げるという意味がある。軍関係者は同日、「(今年9月の朝ロ)首脳会談後には、ロシアの技術チームが(北朝鮮に)入った情況がある」とし、「主にエンジン系統の支援を受けたのではないか」と述べた。
朝鮮半島の緊張は高まる見通しだ。
尹大統領の英国国賓訪問に随行中の大統領室高官は、北朝鮮が軍事偵察衛星を打ち上げる前、記者団に対し「南北関係発展法には、南北が協議したいかなる事項も、国家安保を含む重大自由が発生した場合は南北合意の部分または全体に対して効力を停止させることができるという条項が記述されている」とし、9・19南北軍事合意の一部を廃棄する意向を明らかにした。
2018年9月19日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領(当時)と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の首脳会談を契機に交わされた南北軍事合意は、地上と海上、空中をはじめとするすべての空間ですべての敵対行為を全面中止し、緩衝区域を設定した。このため、東部戦線地域では軍事境界線から南北に40キロ、西部戦線地域では20キロまで固定翼機の飛行を禁止している。
同日、米国の原子力空母「カール・ビンソン」(CVN-70)が釜山の作戦基地に入港した。米空母が公に釜山に入港したのは、先月12日の原子力空母「ロナルド・レーガン」(CVN-76)以来ひと月ぶり。
統一研究院のホン・ミン先任研究委員は「9・19軍事合意と偵察衛星問題は別もの」とし、「9・19軍事合意の効力停止は論理と名目が脆弱であるため、むしろ北朝鮮が逆攻撃する機会を与えかねない」と懸念を示した。