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[社説]南北軍事合意の効力停止は朝鮮半島の緊張を悪化させる誤った判断だ

登録:2023-11-15 06:03 修正:2023-11-21 09:59
尹錫悦大統領が14日、ソウル龍山の大統領室で国務会議を開いている/聯合ニュース

 9・19南北軍事合意の破棄を公言してきた韓国政府が、この目標に向かって本格的に動いている。政府は、北朝鮮が軍事偵察衛星の3回目の打ち上げを強行した場合、合意の効力を停止させるなどの案を検討しているという。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は14日に公開されたAP通信とのインタビューで、「北朝鮮が軍事偵察衛星の打ち上げに成功した場合、それは北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)関連能力を一段と引き上げたことを意味する」とし、「強化された対策を講じなければならない」と述べた。統一部当局者は同日、記者団に「南北軍事合意は、北朝鮮に対する韓国軍の偵察能力や軍事訓練などの防衛態勢を非常に制約することを含め、いろいろな問題点が指摘されてきた」とし、「総合的に検討していく」と語った。

 尹錫悦政権の主要当局者らはこれまで、南北軍事合意が「北朝鮮に対する監視・偵察能力を制限する」として、破棄または効力停止を公言してきたが、今度はその言葉を行動に移している。13日の韓米安保協議会議(SCM)で、シン・ウォンシク国防部長官はロイド・オースティン米国防長官に南北軍事合意の効力停止の必要性を強調した。シン長官は、南北軍事北合意の飛行禁止区域が北朝鮮より優れた韓米航空偵察資産の監視・偵察活動を強く制約しており、北朝鮮に比べ韓国にとって著しく不利に働いているとして、「破棄が所信」だと発言してきた。特に先月、ハマスのイスラエル攻撃後、政府と与党はこの合意のために戦線地域における北朝鮮の差し迫った挑発の兆候をリアルタイムで監視するのを大きく制限されているとして、なるべく早い効力停止に向けて動き始めた。

 2018年9月の南北首脳会談で合意された南北軍事合意は、軍事境界線(MDL)を基準に地上・海上・空中に緩衝区域を設定することで、偶発的な軍事衝突を予防することを内容とする。合意締結後、違反事例もあり、南北関係が悪化して緊張が高まったこともあったが、これまで武力衝突と死傷者は発生しなかったのが事実だ。一部の軍事活動に制約を設けることで、衝突と戦争を防止するのが軍備統制の趣旨だという点も考慮しなければならない。

 この合意の効力を停止し、朝鮮半島で武力衝突と戦争の危険性が高まることが、韓国の安全保障における真の利益になるだろうか。前政権の成果を消すことで支持層の結集を図る与党の政治的計算を前面に押し出すあまり、緊張と危険性だけを増大させる恐れが高い。南北関係が悪化し、ウクライナおよびパレスチナで戦争が起こるなど世界情勢が危うくなるほど、偶発的な衝突を防ぐ安全弁がさらに必要であるという現実を政府は直視してほしい。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1116291.html韓国語原文入力:2023-11-15 02:41
訳H.J

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