梨泰院(イテウォン)雑踏事故の惨事から1年となる10月29日を前に、梨泰院惨事弁護団は捜査ではなく包括的な調査が必要だとの意見を表明した。刑事責任に集中した検察と警察による捜査では「惨事の原因」は完全には明らかにできないとし、同じような被害を防ぐには各機関の活動および準備体系などに対するさらなる調査が必要だという。
梨泰院惨事に関する訴訟を代理する「民主社会のための弁護士会」(民弁)は23日、ソウル光化門(クァンファムン)の弁護士会館で「梨泰院惨事真相究明課題報告会」を開催し、「人命被害の最小化」に重点を置いた包括的な調査が必要だと述べた。今回の報告会は、刑事責任に焦点を合わせた警察庁特別捜査本部(特捜本)と検察による捜査、および物理的・時間的制約のせいで多数の事実が確認されないまま終了した国政調査の限界を指摘しつつ、惨事全般で明らかになっていない事実についてのさらなる調査の必要性を民弁から説明するために開催された。
報告会で総論を発表した梨泰院惨事市民対策会議・真相究明市民参加委員会の委員を務めるチェ・ヒチョン博士(行政学)は、「特捜本、検察による捜査は刑法的責任に重点を置いているため、犠牲者というより処罰できる対象に集中した。惨事当日の現場に各機関の担当者が何人いたかなどの基礎的な事実関係すら確認されていないため、(捜査機関のあぶり出した)破片的な事実は惨事の原因と展開の過程を理解するには限界がある」と指摘した。
民弁が必要性を感じている主な追加調査の内容としては、「予防-備え-対応-復旧」といった災害管理の概念に合わせ惨事が起こる前にハロウィーンフェスティバルの準備体系はあったのか、それを政府は予測し事前に認知していたのか、惨事当日の現場の危険性が無視され見過ごされた過程とその理由、などが該当する。
民弁は、追加調査を行う際には法違反の観点にとどまらず、被害者の犠牲がなぜ拡大し、被害の最小化に各機関がどれほど寄与したのかを問う一貫した視点が重要だと語った。報告書の実務総括を担ったヤン・ソンウ弁護士は「最も重要な目的は災害の再発防止」だと述べた。
惨事当日に被害者が受けた応急措置はどのようなものだったのか、死亡判定と臨時霊安所での措置事項に対する判断の根拠などについては、ほとんど知られていない。民弁は「遺族と生存者は自分の家族や友人の最期がどのようなものだったのかまったく分かっておらず、非常に苦しんでいる」とし、「現場の問題点と制度の改善のためにも調査されなければならない」と強調した。
最後に民弁は「惨事が残した諸課題をきちんと遂行するために、完全な真相究明と再発防止と被害者支援のための特別法の制定の必要性を強調しなければならない」として、国会に係留されている梨泰院惨事特別法の制定を求めた。