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[コラム]尹錫悦大統領は責任を取るべきだ

登録:2023-10-17 02:59 修正:2023-10-17 08:35
政治家が責任を取る方法は辞任だ。しかし、大統領は任期があるため辞退できない。大統領の代わりにハン・ドクス首相とキム・デギ秘書室長を交代させるべきだ。大統領の代理人だからだ。それが、選挙で敗北した大統領が国民に示すべき最小限の道理だ。
尹錫悦大統領と妻のキム・ゴンヒ女史が13日、木浦総合競技場で行われた第104回全国体育大会の開会式で、選手団の入場を見ながら手を振っている=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 宗教家には信念の倫理がある。政治家には責任の倫理がある。政治家とは責任を取る人だ。責任を取らない政治家などというのは形容矛盾だ。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は梨泰院(イテウォン)惨事の9日後の2022年11月7日、国家安全システム点検会議で次のように語った。

 「厳然として責任というものは、それがある人にきっちりと問うべきものであって、単に漠然とすべて責任を取れ、というのは現代社会ではあり得ない話だ」

 その奇妙な論理によって、イ・サンミン行政安全部長官とユン・ヒグン警察庁長を留任させた。今も大韓民国の行政安全部長官はイ・サンミン長官だ。大韓民国の警察庁長はユン・ヒグン庁長だ。彼らの顔を見続けなければならない梨泰院惨事の遺族たちは、いかなる心情だろうか。

 その尹錫悦大統領がまたしても責任問題にさらされている。10月11日のソウル江西区長選挙で負けたからだ。

 江西区長補欠選挙は、5月18日の最高裁の確定判決で有罪となったキム・テウ前区長が区長職を失ったために行われた。尹錫悦大統領は8月15日の光復節(植民地解放記念日)の特赦でキム・テウ前区長を赦免し、復権させた。赦免だけにとどめることもできたのに、あえて復権までさせて補欠選挙の出馬資格を与えたのだ。

 与党「国民の力」の内部では、補欠選挙に候補を立てるかどうかで論争が起こった。候補を立てるべきではないという主張の方が大義名分が立った。

 国民の力の地方選挙公職候補者推薦規定第39条(再・補欠選挙特例)3項は「党所属の選出職公職者による公職選挙法違反などにより再・補欠選挙が発生した場合、中央党公認管理委員会は最高委員会議の議決を経て、当該選挙区の候補者を推薦しないことを選択できる」となっている。

 しかしキム・ギヒョン代表と最高委員たちは、尹錫悦大統領の意向を貫徹した。尹錫悦大統領はわざと知らぬふりをした。選挙期間中ずっと、大統領室は「党が行う選挙」だとして距離を置いた。選挙敗北の翌日には、「政府はいかなる選挙結果であっても重く受け止めるべきとの立場」だと述べた。

 2日後、尹錫悦大統領は「選挙結果から教訓を見出し、落ち着いて賢明な変化を推進していくことが重要だ」と参謀たちに語った。誰がみても「変化」よりも「落ち着いて」の方に重点が置かれている。事故は自分が起こしておいて、収拾は参謀たちと党にこっそり押しつけているのだ。

 尹錫悦大統領のメッセージは、国民の力で噴出していた責任攻防にブレーキをかけた。キム・ギヒョン代表の辞任論は水面下に沈んだ。イ・チョルギュ事務総長をはじめとする任命職の党役員だけが無念にも辞任した。

 15日日曜日の夜、国民の力の議員総会が開かれた。発言者の中に尹錫悦大統領を批判する議員は1人もいなかった。キム・ギヒョン代表の辞任を求める声があがったが、少数意見だった。それも遠回しに表現したに過ぎなかった。

 議員総会の結論は「キム・ギヒョン代表を中心として、変化と刷新の方策を早急に準備することとする」というものだった。キム・ギヒョン代表は尹錫悦大統領が立てた人物だ。キム・ギヒョン代表を中心に変化し刷新するということは、変化もしないし刷新もしないということだ。

 議員総会の途中、キム・ウン議員が外に出てきてこのようなことを言った。

 「我々が江西区長選挙で負けたのは、団結していなかったからなのか。団結がとてもうまくいっていたから負けたように思えるが。それでもまた団結しようと言うのなら、また負けるという意味だろう。国民は変えろと言っているわけで、変えないで団結するだけにしよう、我々はみんなよくやったと言うのなら、議員総会は何のためやるのか。我々はうまくやっているのに」

 江西区長補欠選挙で示された民意は明確だ。普段は尹錫悦大統領に友好的なメディアさえ、選挙敗北の原因は尹錫悦大統領の傲慢と政権審判論だと指摘した。「一方通行」、「独断」と指摘される国政運営基調全般を見直し、果敢な刷新を行うべきだと指摘した。

 尹錫悦大統領の表現どおり「責任というものは、それがある人にきっちりと問うべき」だとすれば、江西区長選挙での敗北の責任は尹錫悦大統領自身に問うべきだ。政治家が責任を取る方法は辞任だ。

 しかし、大統領は任期があるため辞退できない。大統領の代わりにハン・ドクス首相とキム・デギ秘書室長を交代させるべきだ。大統領の代理人だからだ。

 それが、選挙で敗北した大統領が国民に示すべき最小限の道理だ。民意を受け入れなければ次の選挙でまた敗北する。尹錫悦大統領ももう少し謙虚になるべき時となった。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1112277.html韓国語原文入力:2023-10-16 15:44
訳D.K

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