尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が就任した昨年5月以降、龍山(ヨンサン)警察署の情報官が「地域情報は必要ない。集会管理にまい進せよ」と指示されていたとの証言がなされた。そのせいで、梨泰院(イテウォン)惨事発生時に梨泰院地域を担当する情報官が現場に配置されていなかったことが明らかになった。情報官が配置されていたら緊急事態の発生時の警察の初動対処はより早かっただろうという指摘は、惨事直後からなされていた。
ソウル西部地裁刑事11部(ペ・ソンジュン裁判長)は22日午後、元ソウル警察庁情報部長のパク・ソンミン容疑者、元龍山警察署情報課長のキム・ジンホ容疑者、元情報課職員のA容疑者に対する初公判を行った。パク容疑者とキム容疑者は、惨事直後にA容疑者に対してハロウィン対策の関連資料のファイルを削除するよう指示した疑い(証拠隠滅教唆、共用電子記録など損傷教唆)が持たれている。
この日、証人として出廷した龍山警察署の情報官B氏は、「梨泰院危険報告書」を作成したものの、集会管理にまい進する雰囲気のせいでハロウィーンの現場を管理できなかったと陳述した。梨泰院地域を担当していたB氏は「6月から10月まで大規模集会管理で自分の地域(梨泰院)の情報業務を行う時間的余裕がなかった」、「(キム元課長の考えは)『龍山署の情報は以前とは違う。地域情報は必要ない』というものだったため、地域情報活動に出かけるという気すら起こらなかった」と語った。
実際にB氏は昨年10月26日、「梨泰院ハロウィーン・フェスティバル公共安寧危険分析」を作成し、キム元課長に報告したものの、キム元課長の反応は「クリスマスに情報官が配置されるのか。(ハロウィーン・フェスティバルは)クリスマスのようなものだ。情報官がすべきことではない」というものだったという。B氏は自身の担当地域で開催されるフェスティバルなので「警備に当たるべきだと思う」との趣旨で報告書を作成したものの、キム元課長は「週末は集会管理に当たらねばばならないから行かなくても良い」と言ったという。
惨事当日、B氏はソウル龍山区の戦争記念館周辺の大規模集会を管理するため、ハロウィーン・フェスティバルの現場には配置されなかった。これについてB氏は「過去には情報官が(ハロウィーン・フェスティバル期間中に)1、2人警備に当たったと認識している」、「(情報官が配されていれば)現場で緊急の事件が発生した時には無線で連絡できる。目で見て話すので『助けてください』と言われれば直ちに対応できる」と話した。
惨事発生後、キム元課長と龍山警察署の元情報係長のC氏がB氏を呼んで「報告書を作成したことは誰が知っているのか。書いていないと言ってはどうか」などと長時間にわたって述べたことについては「そのような指示はあったが、私は望まなかった。不当な指示だったと記憶している」と証言した。B氏は証言中に何度も涙ぐみ、一度はこらえきれずに嗚咽した。
一方、10・29梨泰院惨事遺族協議会と市民対策会議はこの日午後、記者会見を行い「警察は報告書を書いてまで梨泰院での事故発生の可能性を予想していた。にもかかわらず、いかなる措置も取らなかった」、「この報告書は、責任者が事前に備えていれば惨事は防げたということを意味する」と主張した。