「民主社会のための弁護士会」(民弁)は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の1年間を「検察共和国」が登場し社会のあらゆる領域で改革が姿を消した年と評した。
民弁は8日午前、ソウル瑞草区(ソチョグ)民弁大会議室で「尹錫悦政権1年間の分析および評価討論会」を開いた。同日の討論会は司法、労働、民生、災害対応、外交、歴史、人権の7つの政策分野別に分けて民弁所属弁護士らが発表を行い、意見を交わす形で進められた。同日、民弁のチョ・ヨンソン会長は「尹錫悦政権の1年間は、一言でいうと、桎梏と退行で点綴された」とし、「有罪判決を渇望する検事の姿で国民をより一層追い込むのではないかと懸念される」と述べた。
この1年間で最も後退した領域に挙げられたのは「司法分野」だった。同分野を担当したイ・チャンミン弁護士(民弁司法センター検警改革小委員長)は、尹政権の1年間を「検察共和国」、「検察政治」と命名した。イ弁護士は「法務部長官と検察総長、中央地検長など検察の主要要職に尹錫悦師団が布陣しており、不公正な捜査と起訴が続いている」とし、「『ドイツモータースの株価操作』事件と関連し、尹大統領夫人のキム・ゴンヒ女史を呼び出し調査せず、『野党(党大会における)の金品授受疑惑』関連で被疑事実をリークすることで世論の有罪判決を誘導するなど、検察が権力を政治と統治に利用している」と指摘した。さらに「監査院は『西海公務員殺害事件』と関連し、監査委員会の議決を無視して違法な監査結果を公表し、検察を監視する公捜処(高位公職者犯罪捜査処)は職制上規定された定員も満たせずにいる」とし、「警察は形骸化し、国情院は過去に回帰しており、監査院は自ら政敵除去の先鋒に立ち、裁判所は傍観者あるいは消極的けん制にとどまっている」と付け加えた。
民弁は労働政策においても尹政権が使用者側に傾倒していると批判した。イ・ジョンフン弁護士(民弁労働委員会政策企画部長)は「尹政権は労使を甲乙(強者と弱者)の対立関係と規定し、『乙』の位置にいる労働者の保護には背を向け、使用者は過剰保護している」とし、「貨物連帯の労働者を対象に政府が業務開始命令を発動するなど、労働組合への弾圧が一般化されており、労組の一挙手一投足を政府の統制下で監視しようとしている」と述べた。
最近、伝貰(チョンセ:家主に一定金額を保証金として預けて、1年~2年の賃貸借契約後に使用する韓国の制度)詐欺など被害者が続出している「住居分野」では、根本的な対策作りが不十分であるという指摘があった。イ・ガンフン弁護士(民弁民生経済委員長)は「全国的な伝貰詐欺事件は、住宅賃借人の劣悪な住居権の現状を示している」とし、「伝貰詐欺被害者3人が死亡した後になってようやく被害者支援対策を打ち出したが、被害者が望む保証金の債権買い入れ案が対策から排除されていた」と指摘した。
外交および朝鮮半島政策は、歪曲された歴史認識と外交惨事に要約された。日帝強制動員被害者など歴史問題に関して、クォン・テユン弁護士(民弁過去事清算委員長)は「強制動員被害者と遺族に対し、韓国政府が日本企業の賠償金を肩代わりして支払う『第三者弁済』は、被害者が勝ち取った判決文を単純に弁済によって消滅する金銭債権とみなし、軽視したもの」だとしたうえで、「被害者たちはその過程でさらに深く傷つけられており、問題も解決されない」と語った。
この他、梨泰院(イテウォン)惨事への災害対応について、チョ・イニョン弁護士(民弁10・29梨泰院惨事真相究明および法律支援TF)は「政府が事前対策を樹立しなかった理由と、病院への移送など現場救助過程などは、国政調査の対象から外れた」と批判した。