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「尹錫悦式の第三者弁済、世界外交史に記録されるべき問題ある解決策」(2)

登録:2023-03-24 02:45 修正:2023-03-24 09:53
チョン・セヒョン元統一部長官インタビュー 
「大統領の哲学と参謀の後押しがあってはじめて自主外交」
チョン・セヒョン元統一部長官//ハンギョレ新聞社

(1のつづき)

-米国の外交政策では理想主義と現実主義の2つが競合してきたが、バイデン政権はどうか。

 「米国の政治学者や政策家にはリアリスト(現実主義者)もいれば、アイディアリスト(理想主義者)もいる。それは彼らの世界で割れているに過ぎず、政治の世界に移ればバイデンになろうがトランプになろうが、基本的にリアリストだ。はっきり言えば商売人だということだ。自分たちの利益を最大化しつつもやりすぎに見えないように『グローバル』や『包括的』、『価値』などという概念で装飾しているにすぎず、本質的に大きな違いはない。理想的な国際秩序を夢見た『永遠平和のために』を書いたイマヌエル・カントも、大統領であったらリアリストにならざるを得ない」

-外交では概念、そして概念に拘束される用語とその先取りが非常に重要、かつ効果が大きいと思われる。

 「政治の世界において、論理や理論は非常に大きな力を持つ。北朝鮮の政治辞典を見れば『文学と芸術は革命と建設の有力な武器』だと説明している。人を洗脳し、行動を引き出すのはすべて言葉の力だということだ」

-尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後、南北関係は急激に冷え込んだ。金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代には南北首脳会談は絶えたことがなく、特に文在寅時代は史上初の朝米首脳会談が2度も行われたこととは雲泥の差だ。北朝鮮は韓国と米国に絶えず『行動対行動』を要求し、相当な水準の譲歩もしたが、実際に得たものはほとんどない。今のところ、米国や尹錫悦政権の前向きな態度も期待できない。南北関係と朝米関係は当面どうなるのか。

 「まず、『行動対行動、言葉対言葉』というものから整理しよう。どの国であれ国同士の関係では、相手の善意だけを信じて先に無条件に譲歩することはできない。最初は言葉で始まるが、それを行動に移すのか、言葉と行動が一致するのかを確認していきつつ、その次の段階へと進むものだ。そのような点で、北朝鮮の韓国と米国に対する不信は大きい。北朝鮮の金日成(キム・イルソン)主席は『世の中には大きい国や小さい国はあるが、高い国や低い国はない」と語っているが、そうは言っても、国際政治においては実際に高い国や低い国がある。米国はその頂点だ。私が本に書いたように『国際政治は基本的に暴力団の世界』と同じだ。弱小国は行動対行動を必ず履行したがり、大国はまず行動を要求する」

2019年6月30日、文在寅大統領(右)と北朝鮮の金正恩国務委員長が両手を取り合って言葉を交わしている。真ん中は米国のドナルド・トランプ大統領。南北米の首脳が同時に会ったのは1953年の朝鮮戦争の休戦以降の66年で初めてのことだった/聯合ニュース

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平和とは自己中心性の強い言葉

-そのような平行線はなかなか狭まりそうにないが。

 「なかなか狭まらない。しかし、これまでの朝米関係を見ると、北朝鮮が崖っぷち戦術で米国を困らせ体面を傷つけるようなやり方をすれば、米国は少しは『行動対行動』へと傾く。そうして『ニンジンを与えてよく言うことを聞くようになった』と思ったら、再びムチを手にする。北朝鮮がそれに抵抗すれば、米国は『普遍的価値』や『人類の平和』を持ち出す。だが『平和』というものも、完全に中立的で客観的ではない。自分に有利な状態において戦争が起きない状態を平和という。かつてローマ帝国が全世界を掌握していた時代は『パックス・ロマーナ(Pax Romana。ローマによる平和)と言われ、英国が全世界を支配していた時代は『パックス・ブリタニカ(Pax Britannica)』と言われた。今のパックス・アメリカーナも同じだ。自己中心性の非常に強い言葉だ」

-米国は自らが統制可能な範囲で朝鮮半島の緊張と対立を維持しようとしているということか。

 「まさにそれだ。パックス・ロマーナもローマ帝国が自国に反抗する国がない状態を作っておいて、他国、他民族の犠牲の上に立って享受したものだ。米国も同じだ。自国の勢力圏内にある国々を圧迫したりなだめたりしながら、いくらでも犠牲を要求できるということだ。米国は尹錫悦政権が自国に要求する『拡大抑止』政策を望み通りに受け入れている。韓米合同軍事演習では、北朝鮮にとって非常に脅威となる先端兵器と戦略資産を展開している。同時に、韓国から経済的にいかに多くを抜き取っていっていることか。米国の電気自動車支援法や半導体サプライチェーン編入が代表的な例だ。中国を包囲することを意図したインド太平洋戦略もそうだ。米国が世界の各地域に組織する安保同盟は、いわゆる同盟国を自国陣営に縛りつけておくためのフレームだ。韓米日3カ国同盟、QUAD(米国、日本、インド、オーストラリアの4カ国協議体)、AUKUS(米国、英国、オーストラリア3カ国同盟)も同様だ。しかし、アジア地域においては米国が経済的利益を引き出しうる国は韓国しかない。インドは中国とロシアの側になってしまった。フィリピンはまだ貧しい国なので、あまり利益は得られない」

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「溝の中の牛」のように毅然と

-外交における弱小国の非同盟中立路線を意味する「フィンランディゼーション」を韓国なりのやり方で行う余地はないのか。

 「韓国の対外政策にフィンランディゼーション(フィンランド化)の概念を適用するには、韓国の規模が大きくなりすぎた。韓国が地政学的に米国という海洋勢力と中国という大陸勢力の二大強国の間に挟まれているのは間違いない。しかし、韓国はもはや『2頭のクジラの間のエビ』ではない。左右の大きな堤防の間の溝の中を歩いていく牛が、左の草も右の草も食べ、子牛に飲ませる乳も作るような外交をしなければならない。こんにちの韓国は、20世紀初頭のソビエトロシアとドイツという大国の間に挟まれたフィンランドのような弱小国ではない。のらりくらりと顔色をうかがいながら、その都度危機を免れるという段階は過ぎた。ただし、『弱小国意識』を持っていたら『溝の中の牛』のように毅然としてやって行くことはできない。これからは『クール』に、米国にも中国にも韓国の立場を堂々と説明し、軸がぶれないようにやって行くべきで、米国でなければ生きていけないというような敗北主義に陥らないようにしようということだ」

-1998年に金大中政権が「金剛山(クムガンサン)観光」をはじめとする南北和解と民間交流の扉を開いた当時、統一部次官でいらした。金元大統領は事後に米国を説得したと言われているが。

 「説得もしていない。後にビル・クリントン大統領が金大中大統領に会い、『そうだ、あの場面を私は東京で見ましたが、美しかった。おめでとうございます』と言った。長官時代は大統領と2人きりで会う機会が多かったのだが、時に果敢な決断を下すのを見て驚いた。金元大統領は軍事独裁政権の下で非常に苦労したからあのような勇気が生まれたのだという説明は、話にならない。(判断力と決断力は)やはり読書量のおかげだと思う。金大中元大統領は読書量が膨大で、記憶力も良かった」

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金大中の決断力の源は膨大な読書量

-近くで見ていてどうだったか。

 金大中大統領が刑務所に収監されていた時、アルビン・トフラーの『第三の波』という本を読んで、後に政権を握るやいなや情報通信(IT)産業に大規模な投資をした。DJ(金大中)はいつも手帳を持ち歩いていた。本を読んでいて印象的な部分があったら、下線を引いて必ず手帳に書き写す。そうすると頭の中に入って記憶に残る。とても博識だった。YS(金泳三(キム・ヨンサム)元大統領)は『頭脳は借りられるが健康は借りられない』と言ったが、DJは知識においては他人から力を借りる方ではなく、学者たちも重用しなかった。金大中大統領が好んで使った言葉は『書生の問題意識と商人の現実感覚を兼ね備えた知識人になれ』というもの。学者たちは書生的な問題意識ばかりがあふれ、実務がまとめられないという理由からだ。後任の盧武鉉大統領も読書量が非常に多かった」

-金大中政権の太陽政策と盧武鉉政権の北東アジア均衡者論、文在寅政権の朝鮮半島運転者論のような努力があり、一時は『朝鮮半島の春』に対する期待も高かった。しかし、実質的に何が残っているかは不明確だ。李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)両保守政権時代は南北関係が原点に逆戻りし、極右系の尹錫悦政権では退行が際立つ。自主的外交はどうすれば可能か。

 「何より大統領が自主的外交と朝鮮半島の平和について哲学を持たなければならない。そして、それを支える参謀に出会わなければならない。金大中大統領はイム・ドンウォン(当時の統一部長官、国家情報院長)に出会い、盧武鉉大統領はイ・ジョンソク(当時の統一部長官)に出会った。助けてくれる参謀がいたにもかかわらず、自主的な外交を試みた大統領は多くはなかった。その両方が揃わなければできないのだ」

-尹錫悦政権の残りの4年間は、韓国の筋の通った外交や朝鮮半島の平和に対する期待を持つのは難しいだろうか。

 「南北関係にも四季があり、国にも時運があると思う。当面、5年はそのように生きる運命だったら仕方がないのではないか。ただ、その運命は永続的に固まる構造的問題ではないということだ。大統領が変わり、良い参謀に出会えばいくらでも可能となる。今回の韓日両国の強制動員賠償問題なども、再交渉するとか立ち向かうとか、いくらでもやりようはある。繰り返しになるが、筋の通った大統領の哲学と、それを支える参謀が揃った政権でなければならない」

文/チョ・イルチュン先任記者、写真/キム・ジンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1084172.html韓国語原文入力:2023-03-19 11:09
訳D.K

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