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15年前から上昇中のエンゲル係数…食べていくことの厳しさ増す韓国と日本【コラム】

登録:2025-04-24 06:41 修正:2025-04-24 07:48
出前のバイクが列をなして走っている/聯合ニュース

 2月7日、日本の総務省が昨年の家計調査結果を発表した。日本のマスコミはエンゲル係数が28.3%で1981年以来43年ぶりに最高値に達したことを大々的に報じた。韓国のマスコミも、日本では食べていくのが大変になったと、これを多く取り上げた。2023年から高騰した日本のコメ価格が話題になった。

 エンゲル係数は家計の消費支出で食費が占める割合をいう。貧しい家庭や国ほど高い。国の経済が成長すれば、指数は低くなる。ところが、先進国の日本ではエンゲル係数が上昇に転じてから久しい。2人以上の家計の消費支出で、食料品費と外食費の支出額の割合が2005年の23.7%で底を打った後、上昇傾向を示している。すでに20年前に始まったことだ。

 韓国はどうだろうか。家計動向調査で都市の2人以上世帯(2017〜2018年は1人以上の世帯)のエンゲル係数を計算したところ、15年前の2010年の26.4%を底にして上昇している。 2020年には28.5%に上がり、昨年には28.8%まで上がった。コロナ禍を経て2022年に29.0%まで跳ね上がってから、少し下がってはいるものの、上昇傾向は続いている。日本より5年遅れてエンゲル係数の反転上昇が始まったが、数値は日本より高い。

 韓国と日本のエンゲル係数の計算は、食費は食料品費(酒以外の飲み物を含む)に外食費を含めている。外食や出前が増えた流れを反映したものだ。食材を買って直接調理する場合より、飲食店でご飯を食べることが多くなれば、指数が上昇する可能性がある。贅沢な外食をたくさんした場合も上昇する。ところが、日本と韓国のエンゲル係数の上昇を食生活がさらに豊かになる流れとみるのは難しい。所得増加は手薄で、食料品と外食の価格は大幅に値上がりして起きたことだ。一言で言って、食べていくことが厳しくなっているのだ。

 日本の消費者物価は2010年から2024年までの14年間で15.6%上昇した。同期間、食料品物価は35.1%も跳ね上がり、一般外食の価格も27.9%上がった。家計所得の状況を計ることができる労働者1人当たりの名目賃金(5人以上の事業体、一般労働者の現金給与)は7.2%の上昇にとどまった。

 日本ではここ数年間、円安が進み、輸出企業各社が大金を稼ぎ、株価が高騰した。しかし、その裏では輸入物価の上昇で消費者物価が高騰し、実質賃金が昨年まで3年連続で低下した。さらに、コメ価格など食材費が特に大幅に値上がりしたことが、エンゲル係数を引き上げている。最近はドルが揺らぎ円が持ち直しているが、まだ2022年下半期の水準であり、2020年末に比べれば35%以上円の価値が下がっている。通貨の価値はその国の経済力を反映している。

 韓国は最悪の数値を記録し続ける日本の経済指標を見て自らを慰めることが多い。それでありながら、成長率の下落など多くの指標が日本の後を追っていることには目をつぶっている。エンゲル係数ですら5年間隔を置いて反転上昇の流れに従ったということを確認すると、落ち込まずにはいられない。

 2010年を基準に2024年まで韓国の消費者物価は32.2%上がったが、農畜水産物物価は62.8%跳ね上がり、外食費物価も49.4%上がった。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後は実質賃金が下落または足踏み状態だった。事業体労働力調査によると、2024年の1人当たり実質賃金は2021年に比べて0.73%下がった。

 食べていくのにかかるお金が増えるというのは、それだけ生活が厳しくなることを意味する。他のことに使うお金が足りなくなるからだ。家計所得の低迷とこれによる内需不振の悪循環が慢性化しつつある。韓国経済はそうやって後退していく。

 経済を破綻させた尹錫悦政権が「内乱大統領の罷免」で自滅し、3年ぶりに大統領選挙が再び行われる。様々なバラ色の経済公約が出てくるだろう。だが、筆者は次のことに注目したい。「消費者であり投資家である前に労働者」である人たちの暮らしをどのように改善するのか、彼らの所得をどのように増やし、未来に対する不安をどのように静めるのか、誰が真剣かつ率直な答えを出すのか。

 故キム・ギウォン教授がハンギョレに「つらさ、無念さ、不安さ」と題する文を寄稿したのが2012年3月のことだった。キム教授は「成長万能主義はもはや効かなくなった。そのかわり、(韓国)国民はこの3つのキーワードで要約される困難の解消を求めている」と書いた。エンゲル係数が反転上昇し始めた初期のことだ。その言葉が依然として、いやさらに有効な時代を生きていることに気づき、目の前が真っ暗になる。

//ハンギョレ新聞社
チョン・ナムグ | 経済産業部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1193715.html韓国語原文入力:2025-04-22 18:30
訳H.J

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