「朴正熙(パク・チョンヒ)大統領による1965年の韓日国交正常化の決断のおかげで、サムスン、現代、LG、ポスコなどが世界的な企業へと成長でき、韓国経済の目覚ましい発展を可能にする原動力となった」
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は21日の国務会議で、「第三者弁済」による日帝強占期の強制動員被害問題の「解消」策が「韓国の国民と企業家にとって巨大な恩恵」をもたらすようにするとしてこう述べた。
ところで、「韓日国交正常化=韓国経済発展の原動力」という尹大統領の診断は真実だろうか。事実を言えば、朴正熙政権期のいわゆる「漢江の奇跡」は、韓日国交正常化よりもベトナム戦争参戦に大きく負っている。数字で比べてみよう。国交正常化に伴って日本が韓国に渡した「請求権資金」は8億ドル(無償3億、有償2億、商業借款3億ドル)。その金で浦項製鉄(現ポスコ)を設立し、京釜高速道路を建設したことは、誰もが知る事実だ。
一方、朴正熙政権がベトナム戦争参戦の見返りとして米国から獲得した金は81億4千万ドル(クァク・テヤン、「歴史批評」107号、206ページ)にのぼる。請求権資金の10倍を超える。米国政府が韓国政府に直接渡した金額だけでも46億2千万ドルだ。「『韓国型発展モデル』はベトナム戦争についての明確な理解なしには説明が困難だ」と専門の研究者が指摘する理由はここにある。
「漢江の奇跡」は、解放直後の農地改革の成功▽張勉(チャン・ミョン)政権が立案し、朴正熙政権が補完・実行した経済開発5カ年計画と輸出志向の工業化戦略▽韓日国交正常化にともなう請求権資金▽ベトナム戦争参戦にともなうドル流入など、多くの要素が絡み合った結果だ。何よりも、中東やドイツなどでの厳しい労働で稼いだ外貨を貧しい祖国・家族に送ってきた我々の親世代の献身に言及しないわけにはいかない。
にもかかわらず、韓国人の多くは「漢江の奇跡」と聞いて「朴正熙」と「請求権資金」は容易に思い浮かべても、ベトナム戦争参戦の影響は口にしない。これは派兵韓国軍(延べ人員31万2853人)のうち5099人が死亡し、韓国軍の手で殺された数多くのベトナム人民の存在という「不都合な真実」とも無関係ではないだろう。
韓国司法府は2月7日、ベトナム戦争期の韓国軍による民間人虐殺が事実であることと、大韓民国政府の損害賠償責任を認めた判決を下した。「加害の歴史」を直視しようとする韓国の市民社会とベトナムの被害者の長い努力が結実したものだ。だが、大韓民国政府はこの判決を不服とし、3月9日に控訴した。ベトナム外務省は「非常に遺憾だ。ベトナムは過去を乗り越えて未来へと向かおうという方針だが、それは真実を否定するという意味ではない」と論評した。耳の痛い指摘だ。
「(日本の)不法な植民地支配と侵略戦争による被害の救済」の道を開いた2018年の最高裁(大法院)判決を「障害物」と卑下した尹大統領の認識とは異なり、大韓民国の未来は「第三者弁済案」の無効化と控訴撤回という「過去の直視」の道の上で花開くだろう。
イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )