ソウル大学民主化教授協議会(ソウル大学民教協)は、「第三者弁済」を骨子とする政府の強制動員問題解決策を批判し、政府に直ちに撤回するよう求めた。
ソウル大学民教協は14日午前に声明を発表し、その中で「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は屈辱的で危険な強制動員解決策を撤回せよ」と述べた。外交部は6日、日帝強占期の強制動員被害者に対して行政安全部の傘下財団「日帝強制動員被害者支援財団」が韓国民間企業の寄付金によって賠償金と遅延利子を支給する第三者弁済案を発表している。
この日、ソウル大学の冠廷館(クァンジョングァン)別館で記者懇談会を行った民教協所属の教授たちは、政府の解決策について「当事者である日本企業の責任への言及や判決履行要求がないという点で、韓国最高裁(大法院)の判決を正面から踏みにじった決定」だとし、「司法府の権威や三権分立の原則などの憲法的秩序に対する尊重が跡形もなく失われており、生存している被害当事者である訴訟原告の反発が示すように、被害者に対する最小限の尊重もない一方的な解決策に過ぎない」と指摘した。
最高裁は2018年、強制動員被害者が三菱重工業などの日本の戦犯企業を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、被害者1人につき1億~1億5000万ウォンの賠償を命じる判決を下した。日本は1965年の韓日請求権協定締結によって個人の請求権は消滅したとする立場だったが、韓国司法は国家間の請求権協定とはかかわりなく、日本の不法な植民地支配に対する個人の請求権は消滅していないと判断した。
しかし、日本企業は履行を拒否しており、被害者は「当該企業の国内資産を差し押さえて売却し、判決金を支給させる」ことを求め訴訟を起こした。その後、日本が2019年に韓国に対する輸出規制に乗り出すと、文在寅(ムン・ジェイン)政権は世界貿易機関(WTO)に日本を提訴し、両国関係はさらに冷え込んだ。
ソウル大学民教協は、政府の今回の案によって朝鮮半島の緊張が高まることを懸念した。民教協は「現政権は、韓日関係悪化のすべての責任は文在寅前政権にあるという偏見に満ちた認識の上に立ち、これまで困難の中で進められてきた朝鮮半島平和プロセスを完全な失敗と規定し、韓米日安保協力を強化するという戦略的選択をした」とし「(政府の解決策は)朝米間の軍事的緊張の高まり、ロシア-ウクライナ戦争、米中対立などとして広がっている政治的・軍事的緊張をあおることで、朝鮮半島の安保を不安と危機に陥れる危険千万な政治的選択」だと指摘した。
また、ソウル大学民教協は「政府の解決策は問題の解決では決してなく、新たな問題と対立の始まりに過ぎない」と述べた。強制動員の生存被害者が前日に代理人団を通じて第三者弁済案を拒否すると表明しており、今後韓国政府と被害者との間に新たな紛争が起こる可能性が高いからだ。
記者会見に出席したソウル大学日本研究所のナム・ギジョン所長は、「(被害者たちが) 政府案を受け入れることも自由だろうが、それと同時にたった1人であろうとも政府案に同意しない被害者がいれば、それもまた強要することはできない。開かれた解決策は彼らの立場も尊重されなければならない」と述べた。ソウル大学民教協のキム・ミョンファン会長も「人類の普遍的価値である人権と平和の問題であり、正当な歴史認識と歴史教育の問題に関係するものであって、決して古い反日感情から生じているものではない」と発言の趣旨を強調した。