尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が連日「労働組合は不法勢力」というメッセージを前面に出し、「腐敗を厳重に取り締まる」という基調を示している。労働界を対象に腐敗-反腐敗構図を形成した後、検察総長出身の自身の存在感を喚起して支持層を結集するという方向性であり、歪曲された労働観と政治的リーダーシップ喪失の結果という批判が出ている。
尹大統領は21日、龍山(ヨンサン)の大統領室で国務会議を主宰し、労組が会計帳簿の公開を拒否している状況に言及し、「労働改革のスタートは労組の会計の透明性強化」だと強調し、建設現場のゆすりや暴力行為に対しては「任期内に必ず根絶する」と述べた。尹大統領は「建設現場の暴力」を「建暴」と略して発言した。尹大統領は「建設現場の暴力」は「困難な庶民に対する組織的犯罪」だとし、「建暴」という略語を自ら作ったという。
尹大統領の政権2年目の労働改革は、労組を標的とした全面的な攻勢を下書きにしていると要約できる。労働時間や賃金体系、派遣制度などの古い労働改革議題を検討するよりも、「法治」を浮き彫りにする方法を選んだ。与党が少数の「ねじれ国会」により法律改正には限界がある状況で、検事のイメージを基に支持率アップを狙う意図があるとみられている。昨年末の貨物連帯ストライキ当時、一貫して強硬な対応をしたことで支持層が結集し、国政支持率が40%台に反騰した「学習効果」の結果ということだ。
尹大統領は同日の国務会議でも「今年しなければならない最も重要なことは、憲法の根本秩序を正すこと」だとし、「労組が正常化されてこそ企業の価値が上がり、資本市場も発展し、多くの雇用も生まれる」と述べた。イ・ドウン報道官がブリーフィングで伝えた。関係省庁合同で同日発表した資料「建設現場の不法・不当行為根絶対策」の中で、使用者側の不法行為については「不法下請け、賃金未払いなどによる不安定な収入など不十分な勤労条件も、建設事業者と勤労者間の不当な取引を誘発する要因」と、たった一行で要約されていた。労働改革は労働者と企業・政府がコンセンサスを形成し妥協しなければならない事案であるにもかかわらず、労組だけを敵にしているような偏向したメッセージを意図的に発している形だ。
尹大統領が既存の労組とMZ世代(20~30代)の労組を区分するのも、労働改革のための狙いと読み取れる。尹大統領は前日、関係省庁の長官から報告を受けた後「強硬労組の弊害を終わらせなければ、大韓民国の若者の未来はない」と述べた。若者たちにとって敏感なイシューである「公正」イメージを強固にし、労働改革の動力にするという腹案だと解釈できる。
専門家らは、世代や構造的な分裂扇動を通じた尹錫悦政権の労働界揺さぶり作業が本格化したと指摘する。政治学者であるイ・グァンフ博士は「正規職・非正規職の構造的問題を世代論争にもちこんだ李明博(イ・ミョンバク)政権当時の姿勢を、尹大統領は『MZ世代』と名付けて活用しようとするもの」とし、「貨物連帯への強硬対応で効果を感じた尹錫悦政権が、改革課題実行のためにこれに拍車をかけるだろう」と述べた。朝鮮大学のチ・ビョングン教授(政治外交学)も「保守のイデオロギー結集を導くために分裂をあおるのはもちろん、腐敗-反腐敗の構図を見せつけることで『きれいな政治』イメージを形成する効果を狙ったもの」だとし「労働界と直接会って協力し、自浄努力を促す対話プロセスが必要なのに、今のように標的を定めて捜査するやり方は検察の姿であり、政治家の姿ではない」と話した。