「家賃は絶対払えないだろう。お客が来るのを見たこともない」
今月25日午後2時ごろ、韓国内の中国の「秘密警察署」という疑惑が浮上したソウル市松坡区(ソンパグ)の中華料理店付近で会った店舗オーナーは、「こんなこと(秘密警察署疑惑)が起こる前からおかしいと思っていた。どうやって数年間も維持しているのか不思議だった」と話した。周辺の商店街の人々の話を聞いてみると、この食堂の月々の賃貸料は3000万ウォン(約313万円)に達するが、一部の団体客を除けば食堂に客が訪れるのをほとんど見たことがないという。この日は週末のランチの時間帯にもかかわらず、地下1階から地上3階まで使用する中華料理店の広い空間はがらんとしていた。
中華料理店は2017年末に開店し、翌年から本格的な営業を開始した。しかし2018年の1年間、営業損失2億3000万ウォン(約2400万円)を記録し、2019年には6億8600万ウォン(約7100万円)に営業損失が大幅に拡大した。2019年基準で負債(13億1900万ウォン=約1億3700万円)が資産(5億5900万ウォン)の2倍を超え、資本蚕食状態だった。ところが食堂はコロナ事態以後も廃業しておらず、現在も営業中だ。この食堂は地下1階に職員の宿舎も用意している。
この食堂を含む遊船場の営業権者は、今年8月にS社からM社に変わった。これまで経営していたS社が経営難に陥り、2021年に競売にかけられM社が同年6月に落札した。
S社が経営難に陥ったのには、この中華料理店の家賃不払いの影響もあった。S社の関係者は本紙に対し「家賃も払っていないのに、どうやって持ちこたえられるのか。1年に納める税金だけで1億ウォンだ」と話した。この関係者は「中華料理店は1階の工事を口実に安全検査を回避しつつ、家賃を払わない名分だけを作って時間を稼いできた。家賃を催促すると中国側の関係者から連絡が来て『円満に合意しろ』というふうに脅迫ならぬ脅迫をした」と話した。
M社に営業権が移った後は、M社がこの食堂との契約関係を認めず、現在明け渡し訴訟が進められている。M社側は「明け渡し訴訟が進行中」とだけ短く答えた。ただし、ソウル市漢江(ハンガン)事業本部水上企画課の関係者は「私たちは事業権を持つM社と許可をめぐって議論しているだけ」だとし「個別の食堂に対しては管理していない」と話した。
この食堂は、中国秘密警察署論議が起きた後、廃業するという話が伝えられたが、1月の1カ月間、インテリア工事のための臨時休業にすぎず、廃業するわけではないとホームページを通じて明らかにした。ただ、現在はこの食堂のホームページは接続が不可能な状態だ。
この食堂の登記簿謄本などを見ると、食堂の実所有者はメディア事業を営む中国国籍のW氏(44)。人材採用もW氏が所有するメディアグループ(HG文化メディア)が行っている。W氏はこのメディアグループの経営とは別に、中国官営通信メディア「新華社通信」の韓国チャンネルの代表も務めている。新華社通信が創設したオンラインニュースポータル「新華社網」韓国語版には、最近の白紙デモ触発の契機になった習近平主席の「ゼロコロナ」政策を擁護する新華社通信の記事が翻訳されて上がっている。W氏が経営するメディアグループの本社は、韓国国会前の大通りにあるビルの9階にある。食堂は2020年12月、このビルに支店を追加登録した。
駐韓中国大使館は、韓国内の秘密警察署運営疑惑を強く否定している。中国大使館は23日、報道官名義で「『海外警察署』は全く存在しない」と明らかにしたのに続き、26日にも「完全に根も葉もない捏造された意図的誹謗」として疑惑を全面否定した。報道官は同日、「事実の真実に背を向け、根拠もなく口実を設け、故意に中国のイメージを傷つけ、中韓関係の世論を悪化させていることに対して、我々は強い不満と断固たる反対を表明する」と述べた。