「西海(ソヘ)公務員殺害」事件を捜査している韓国検察が文在寅(ムン・ジェイン)政権の安全保障関係者の最高責任者であるソ・フン前大統領府国家安保室長を拘束した。これに先立ち、検察はソ前室長がこの事件の「最終責任者」だと述べているが、文前大統領に対する検察調査が行われるかどうかに注目が集まっている。
ソウル中央地検公共捜査1部(部長イ・ヒドン)は3日未明、職権乱用・権利行使妨害などの容疑でソ前室長を拘束した。前日、10時間以上にわたる拘束前被疑者尋問(令状実質審査)を審理したソウル中央地裁のキム・ジョンミン令状専担裁判部長判事は、ソ前室長の令状を発行し、「犯罪の重大性および被疑者の地位、関係者との関係に照らして証拠隠滅の恐れがある」と述べた。京畿道儀旺(ウィワン)のソウル拘置所で待機していたソ前室長は、直ちに収監された。
ソ前室長の拘束で、検察の捜査に再び弾みがつくことになった。ソ・ウク前国防部長官とキム・ホンヒ前海洋警察庁長が拘束適否審を経て相次いで釈放され、検察捜査の動力が落ちたとみられていたが、前大統領府の安全保障系の最終責任者に対する拘束令状を請求する賭けに出たのが成功したわけだ。検察は捜査の名分と容疑の立証程度に自信を持って捜査の最終段階を進めていくものとみられる。
検察はソ前室長を相手に、当時の文前大統領への報告と指示状況を集中的に取り調べるものとみられる。パク・チウォン前国家情報院長に対する調査にも着手する見通しだ。この過程で文前大統領に対する調査の必要性を検討する可能性もある。同事件の容疑内容は、大統領府で最終決定した事案であるため、ノ・ヨンミン元大統領秘書室長はもとより、文在寅前大統領まで捜査の範囲に含まれる。これに先立ち、検察は先月24~25日に2日連続でソ前室長を調査した際も、2020年9月当時文前大統領に何を報告し、どんな指示を受けたのかを集中的に取り調べた。
ただし、検察はソ前室長の令状請求を控えた1日、彼が同事件の「最終決定権者であり最終責任者」だと言及した。検察はソ前室長の令状請求書にも文前大統領を共犯として明記しなかったという。
しかし、ソ前室長の拘束令状の発行で状況が変わったというのは大方の見解だ。公安部の経験が多いある検察出身の弁護士は「令状棄却に備えてひとまずソ前室長を最高責任者と明示したと思うが、ソ前室長が拘束されたことで事情が変わった。ソ前室長を取り調べる過程で、『事実関係が追加で究明された』として調査範囲を広げる足がかりをつかんだ」と語った。
文前大統領が出した立場表明文が検察の調査の必要性を高めたという分析もある。文前大統領は1日、立場表明文を発表し、「西海事件は当時大統領が国防部、海洋警察、国情院などの報告を直接聞いてその報告を最終承認したもの」だと明らかにした。検察の立場からすると、書面調査など最小限の方式で事件との関連性を確認する必要性が生じたわけだ。
しかし、依然として検察が前大統領に対する捜査まで乗り出すのは難しいというのが大方の予想だ。ある検察高官は「前大統領に対する調査は検察首脳部の政務的判断に基づいて行われるだろう。対北朝鮮関係の特性と大統領が持つ政治的象徴性を幅広く検討しなければならない」と述べた。これに先立ち、イ・ウォンソク検察総長は10月の国政監査当時、「大統領は国家と国民を代表する。前大統領に対する捜査は慎重に慎重を重ねて検討しなければならない」と述べた。