文在寅(ムン・ジェイン)前大統領がソ・フン前国家安全保障室長に対する拘束令状を請求した検察に対して、「安全保障事案を政争の対象にしている」とし、「度を越さないことを願う」と明らかにした。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後に進められている西海(ソヘ)公務員殺害事件の捜査に強い不満を示したのだ。
文前大統領は1日、野党「共に民主党」のユン・ゴニョン議員を通じて発表した立場表明文で、「西海事件は当時の大統領が国防部や海洋警察、国情院などの報告を直接聞き、その報告を最終承認したもの」だとし、「獲得可能なすべての情報と情況を分析し、できる範囲で事実を推定し、大統領はいわゆる特殊情報まで直接検討したうえで、その判断を受け入れた」と明らかにした。当時、「越北(北朝鮮に渡ること)という判断」の主体は大統領自身だったことを強調したわけだ。
文前大統領はさらに「政権交代と共に大統領に報告されマスコミに公布された省庁の判断が覆された。判断の根拠となった情報と情況は全く変わっていないのに、結論だけが正反対になった」とも話した。検察の捜査が「(文政権が)越北に仕立て上げた」という結論ありきで不当に進められているという意味とみられる。ソ・ウク前元国防部長官とキム・ホンヒ前海洋警察庁長も西海事件を隠蔽した職権乱用の疑いなどで拘束されたが、拘束適否審を通じて釈放された。文前大統領は「安全保障事案を政争の対象にし、長年国家安全保障に献身してきた公職者の自負心を踏みにじり、安全保障体系を無力化する分別のない処置に深い憂慮を表する」と付け加えた。
ユン・ゴニョン議員は同日、国会疎通館で文前大統領の立場表明文を代読した後、「国政監査と至難な過程を通じて多くの事実が明らかになったにもかかわらず、前政権に対する政治報復性の捜査を行うことに対する考えを(文前大統領が)明らかにした」と説明した。さらに、「ソ・ウク前長官は制服を着て30年間大韓民国を守ってきた軍人で、ソ・フン前室長は対共業務に数十年間献身した方なのに、そのような方々を政治報復に利用し拘束令状を請求したのは非常に遺憾であり、軍と対共分野で活動する専門家たちへの影響が懸念される」とし、「(文前大統領の立場表明文は)そのような懸念から出たのではないかと思う」と説明した。
文前大統領の立場発表に大統領室関係者は「捜査中の事案に対して言及するのは適切ではない」と述べた。
「文在寅前大統領の立場表明文」
西海事件は当時の大統領が国防部、海洋警察、国情院などの報告を直接聞き、その報告を最終承認したものです。当時、安全保障関連省庁は事実を明確に究明することが不可能な状況で、獲得可能なすべての情報と情況を分析してできる範囲で事実を推定しており、大統領はいわゆる特殊情報まで直接検討したうえでその判断を受け入れました。
ところが政権が変わると、大統領に報告されマスコミに公布された省庁の判断が覆されました。判断の根拠となった情報と情況は変わっていないのに、結論だけ正反対になりました。そのためには、被害者が北朝鮮海域に行くことになった他の可能性が説得力のある形で示されなければなりません。しかし、他の可能性は示せず、ただ当時の発表が捏造されたと非難しているだけです。
このように安全保障事案を政争の対象とし、長年国家安全保障に献身してきた公職者の自負心を踏みにじり、安全保障体系を無力化する分別のない処置に深い憂慮を表します。どうか度を越さないことを願います。