韓国の「兄弟福祉院」の被害者が、国家機関から「被害者」と公式認定された。1986年の兄弟福祉院に対する検察捜査を皮切りに、当時野党の新民党が1987年に真相調査団を立ち上げ、初めて調査を行ってから35年がたった。今回の決定をきっかけに、政府が公式に謝罪し、非人間的な収容所生活を強いられた被害者が負っている精神的・経済的問題に対する補償もなされるか注目される。
24日、真実と和解のための過去事整理委員会(真実和解委、委員長:チョン・グンシク)は、「兄弟福祉院人権侵害事件」の被害者191人に対する第1次真実究明を決定した。真実和解委は昨年5月に調査開始を決めた後、1年3カ月にわたり資料および陳述による調査などを進めてきた。真実和解委は「国家は兄弟福祉院強制収容被害者と遺族に公式に謝罪し、被害回復とトラウマ治癒支援策を設けなければならない」と勧告した。
「国家が義務果たさず…保安司の要員が偽装浸透も」
この日、真実和解委は被害者191人に対する第1次真実究明を決め、兄弟福祉院人権侵害を「社会統制的な浮浪者政策および社会福祉および治安関係法令、内務部訓令第410号、釜山市浮浪者一時保護委託契約などを根拠に、公権力が直接・間接的に浮浪者と称した人々を兄弟福祉院に強制収容し、強制労役、暴行、過酷行為、死亡、行方不明など重大な人権侵害が発生した事件」と定義した。
特に注目されるのは、兄弟福祉院事件が「国家の責任」であることを明確にしたこどだ。真実和解委は「兄弟福祉院の運営過程で、収容者は監禁状態で強制労役、暴行、過酷行為、性暴力、死亡に至るなど人間の尊厳を侵害されており、国家は兄弟福祉院に対する管理監督の義務を果たさなかった」とし、「兄弟福祉院の人権侵害問題に対する陳情を国家が黙殺し、その事実を認知しても措置せず、1987年にこの事件を矮小化・歪曲して実体的な事実関係にともなう適切な法的処断がなされなかった事実が確認された」と明らかにした。
政府と軍が兄弟福祉院を「管理」し積極的に利用していたことも、今回の調査で初めて明らかになった。真実和解委は、国軍保安司令部(保安司)の文書を確保し、兄弟福祉院に収容された北朝鮮拉致帰還漁師のKさん(29)を監視するために保安司が要員を偽装侵入させていたことを確認した。
真実和解委は「保安司はこの捜査工作を『喝采工作』と命名し承認した」とし、「兄弟福祉院のパク・イングン院長から誓約書を取り、持続的に管理体系を構築した」と明らかにした。国家保安法と反共法の違反者を「身元特異者」に区分し、兄弟福祉院に強制収容して監視していたことを示す軍事安保支援司令部などの文書も発見された。
「死者105人を追加で確認…一部は人知れず埋葬も」
新たな被害事実と人権侵害も明らかになった。これまでに知られている死者数は552人だったが、真実和解委が初めて確保した死亡者統計と名簿などを総合した結果、死亡者数は657人と確認された。真実和解委は「兄弟福祉院収容者のうち、救急搬送中に死亡するなど疑わしい死者が発生しており、死亡診断書もねつ造したことが確認された」と伝えた。
兄弟福祉院の収容者に精神科薬物を過剰に投薬し、医学的に統制したことによる高い死亡率の問題も明らかになった。1986年に兄弟福祉院の会計で支出された「精神患者試薬費」は1267万ウォンで、一般患者試薬費(1015万ウォン)より多く、年間342人が毎日2回ずつ服用できる精神科薬物クロルプロマジン(統合失調症患者の症状緩和剤)25万錠を購入した内訳も発見された。真実和解委は、兄弟福祉院が収容者のうち不適応者や反抗者に任意で薬物を投与し、精神療養院を「謹慎小隊」のように活用していたものとみている。兄弟福祉院の収容者の死亡者数も、1986年の1年間だけで135人で、当時の一般国民の死亡率(0.318%)より13.5倍高かった。
「政府は被害者・遺族に対する被害回復策を」
8月現在、兄弟福祉院事件と関連して真実究明を申請した人の数は544人。真実和解委は12月まで申請を受け付けたのち、申請順に追加調査を行う予定だ。