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「誰も目に止めない死」今日もどこかで…障害者・貧困層の「社会的な死」

登録:2021-08-18 10:30 修正:2021-08-18 17:14
「障害者と貧しい人々の合同社会葬」開かれる 
障害者・貧困層の死は「社会的な死」
障害と貧困で孤独に死んでいった人々を追悼する「障害者と貧しい人々の合同社会葬」が17日午後、ソウル中区武橋洞のソウルファイナンスセンター前で開かれ、参列者たちが献花している=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 「誰も目に止めない死、何も言い残せず死んでいく死。彼らも人間じゃないですか。その死の原因が何なのかをこの社会に知らせるために、ここに立ちました。憲法には、全ての国民は人間としての尊厳と価値、幸福を追求する権利を持つと明記されています」

 全国障害者差別撤廃連帯のパク・キョンソク常任共同代表は17日、顔のない遺影の前に菊の花を置き、このように述べた。顔写真の代わりに黒いシルエットを入れた遺影は、障害と貧困で亡くなった多くの人々を意味する。

 この日、貧困社会連帯と全国障害者差別撤廃連帯などで構成された共同葬儀委員会(葬儀委)は、ソウル中区(チュング)のソウルファイナンスセンター前で「障害者と貧しい人々の合同社会葬」を開いた。葬儀委は、障害者と貧困層の死を追悼し、彼らの生存を保障するよう求めた。合同社会葬は防疫指針を考慮し、一人ずつ交互に追悼発言を行うかたちで行われた。

 合同社会葬を開いたのは、最近新型コロナウイルス拡散の長期化の中で、貧困のために孤独に死んでいった人々が社会のあちこちで発見されているためだ。葬儀委は「障害者や貧しい人々の死亡のニュースが連日報道されている。新型コロナによって発掘とモニタリングが不足しており、相談やプログラムへの参加は強制することができないと言うが、彼らの死は発掘やモニタリング、プログラムの問題ではない」と指摘した。

 これに先立ち、今月8日にソウル市蘆原区(ノウォング)の道端に停車していた乗用車から50代の男性Aさんが遺体で発見された。Aさんは最近、新型コロナでサウナ(休憩所つきの公衆風呂)の利用が制限されてから車中で寝泊りすることが多くなっていたという。彼は基礎生活保障(日本の生活保護に相当)受給を申請し、審査結果が出るのを待っていたという。先月29日にはソウル西大門区(ソデムング)で30代の男性Bさんが、居住地だったアパートの屋上部屋で遺体で見つかった。脳病変障害者で基礎生活受給者だったBさんは、希少疾患を患っていた。

 葬儀委は彼らをはじめとする障害者と貧困層の死が「貧困と障害を理由にした差別のため」だとし「韓国社会の分配政策の総体的な失敗によって発生した社会的な死」だと強調した。彼らは「政府はこのような死が発生するたびに、制度改善を通じて貧困問題を解決すると豪語したが、悲劇は繰り返されている」とし「制度改善が宣言にとどまり、その場しのぎばかりだったため」と指摘した。

 この日、合同社会葬に参加した「東子洞サランバン」のキム・ジョンホ理事長は「力のある者は告別式を豪華に行うが、私たちのような者は死んでも誰も見向きもしない。最期まであまりにも違いが大きい」とし「弱者が助け合い、互いの気持ちを理解するしかない」と吐露した。韓国障害者自立生活センター協議会のチェ・ヨンギ会長は「障害を持っているという理由で、貧しいという理由で、なぜ寂しく死んでいかねばならないのか」とし、「屋上部屋、考試院、長屋で多くの人が死んでいった。その死を見つめ、自分もあのように死んでいくかもしれないという不安と恐怖も感じた」と語った。

 葬儀委は政府と大統領選挙候補らに対策作りを求めた。「東子洞サランバン」の活動家のパク・スンミンさんは「新型コロナの拡散で、暑さ避けの休憩場所が減るなど福祉システムが放置されている」とし、「生きるための最小限の助けは必要だ」と主張した。パク・キョンソク代表は「政府は扶養義務者の基準全面廃止などの約束を守らなければならない」とし「大統領選挙候補たちもこのような死に対して反省し、自らの公約を出すべきだ」と求めた。

 葬儀委は19日午前11時まで焼香所を運営する予定だ。葬儀委は社会葬を終えた後、追悼委員会名簿や追悼メッセージ、不平等解決を要求する書簡などを大統領府に伝えることを明らかにした。

キム・ユンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1008029.html韓国語原文入力:2021-08-18 02:41
訳C.M

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