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日本の裁判所、「避難計画の不備」を挙げ原発稼働禁止の判決…韓国は“無関心”

登録:2021-03-26 03:12 修正:2021-03-26 10:37
[キム・ジョンスのエネルギーと地球] 
水戸地裁、94万人の避難計画を詳細に確認し 
東海第二原発に対し「再稼働禁止」の判決 
韓国の地裁での新古里5、6号機取消訴訟では 
169万人の避難実行可能性、主な争点とはならず
今年1月8日午後、ソウル瑞草洞の中央地方裁判所前で「脱核法律家の会ひまわり」、「グリーンピース」、「560国民訴訟団」の会員が、新古里原発5、6号機建設許可処分取り消し請求訴訟の二審判決について、遺憾の意を表明している/聯合ニュース
キム・ジョンスのエネルギーと地球//ハンギョレ新聞社

 「被告(日本原電)は茨城県東海第二原発を運転してはならない」

 日本の水戸地方裁判所は18日、東海第二原発周辺の住民224人が日本原電を相手取って起こした訴訟で、住民勝訴の判決を下しました。原発事故に備える住民避難計画と、計画を実行する体制が整っていないとの理由により、原発の運転を禁じる判決を下したのです。同訴訟は、福島第一原発事故の翌年の2012年に、住民たちが、東海第二原発を運転し続れば事故の際に放出される放射線による被ばくで人格権が侵害される危険性があるとして起こしていたものです。

 現地メディアは、日本の裁判所が非常時における避難計画の不備を理由として原発の稼働を禁止した判決が出たのは初めてだと意義付けました。このニュースは韓国にも外国メディアを通じて伝えられましたが、あまり関心を引くことができずに過ぎました。しかし、日本の裁判所のこの判決は、韓国の状況と比べてみると、その意味が非常に大きく迫ってきます。そのために、より複雑な思いを抱いている人々がいます。原子力安全委員会を相手取って、新古里(シンゴリ)原発5、6号機の建設許可処分取り消しを求める集団訴訟を6年にわたって続けているグリーンピースや559人の住民、そして法律家たちです。

 住民避難計画の実行の可能性は、新古里5、6号機訴訟でも原告たちが提起している主な争点の一つです。結論からいうと、これを日本の裁判所は受け入れ、韓国の裁判所は受け入れなかったのです。新古里5、6号機の避難計画の対象人口は169万人あまりで、東海第二原発(94万人)のほぼ2倍にのぼります。新古里5、6号機訴訟で原告代理を務めたキム・ヨンヒ弁護士(脱核法律家の会ひまわり代表)が日本の裁判所の判決要旨を入手して読み、「怒りの念がわいてくる」と述べた理由がここにあります。

日本の裁判所「避難計画の実行体制が整っていない」

 似たような争点について、日本の裁判所と韓国の裁判所の判決はどのように違うのでしょうか。

 東海第二原発は、日本政府が2011年3月の福島第一原発事故を機に、一斉に稼働を停止させた原発のひとつです。この原発のある茨城県は東日本大震災に被災した場所でもあり、東京から100キロも離れていません。現地メディアの報道によると、東海第二原発を運営する日本原電は、政府の方針に沿った安全対策をまとめ、来年末以降の再稼働を目指していました。放射性物質が大量流出する緊急時を想定した住民避難計画の策定は、これらの安全対策の1つです。また、国際原子力機関(IAEA)が提示した5層からなる「原発事故の深層防御」の概念の中でも、最終層の核心でもあります。これは韓国の原発にもそのまま適用されます。

 判決の要旨を見ると、日本の裁判所は深層防御の5層のうち、どれか一つでも不十分であれば、住民にとっては具体的な危険となり得るとし、住民避難計画の実行可能性を綿密に検討しました。

 日本の原子力災害対策指針は、原発から半径5キロ以内を、放射性物質が放出される前に優先的に住民を避難させる「予防的防護措置を準備する区域(PAZ)」として設定しています。そこから半径30キロまでは、放射性物質の放出が起こった後に、モニタリングの結果に基づいて避難指示を出す「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)」です。東海第二原発のPAZとUPZは、14の自治体にまたがっています。その中に住む人はPAZがおよそ6万4000人、UPZがおよそ87万4000人で、日本の原発の中で避難計画人口が最も多くなっています。

 日本の裁判所は、東海第二原発の避難区域の住民のための段階的な避難計画に疑いの目を向けました。避難すべき住民が90万人を超えることに注目したのです。PAZから6万人あまりが一斉に脱出する状況において、87万人あまりのUPZの住民のかなりの数が慌てて避難すれば、深刻な混乱と交通渋滞が起こり、迅速な避難が難しくならざるを得ません。したがって裁判所は、UPZの住民の協力が避難計画の実現には欠かせないと考え、彼らを安心させる安全対策が確保されているかを検討しました。

 しかし、原子力災害対策指針に従って避難計画を立てるべき14の自治体のうち、9自治体は計画を立てていません。計画を策定していた5つの自治体も、大規模地震により避難経路となっている道路が寸断された状況、UPZの住民が避難指示を待ちつつとどまるべき家屋が倒壊した状況などはきちんと考慮していなかったことが確認されました。

 日本の裁判所は、こうした事実を根拠として「原子力災害対策指針が定める防護措置が実現可能な避難計画およびこれを実行し得る体制が整えられている状態とはほど遠い状態であり、防災体制は極めて不十分」として、東海第二原発の再稼働を禁止しました。

韓国も日本のように非常計画区域はあるものの…

 韓国の「原子力施設等の防護および放射能防災対策法」は、原発から半径20~30キロメートルを放射能災害に備えた放射線非常計画区域として設定しています。日本と同様、もっとも内側の半径3~5キロメートルは予防的保護措置区域(PAZ)で、その外郭が緊急保護措置計画区域(UPZ)です。釜山市(プサンシ)と蔚山市(ウルサンシ)、慶尚南道にまたがる新古里5、6号機の放射線非常計画区域内の人口は169万人に達します。

 新古里5、6号機の建設許可処分取消請求訴訟の過程で、環境団体と住民は、放射線非常計画の実行可能性が検討されていないことを問題視しました。避難しようとする人や車が集中する状況を考慮した道路条件、障害者や各種の治療・療養施設などに収容されている人のための別途の対策などが抜けているというのです。このような問題提起は、一審と二審のいずれにおいても受け入れられませんでした。

 被告である原子力安全委員会が新古里5、6号機にも援用されると主張した新古里3、4号機の放射線非常計画は、東海第二原発と同様に段階的な住民避難を前提としています。原発から半径5キロ以内の住民の90%が避難するまで、半径5~10キロの住民はじっと待っており、半径5~10キロの住民の90%が全員避難するまで半径10キロより外の住民は避難を開始しないと仮定していたのです。SNSを通じて放射能災害発生のニュースがリアルタイムで伝わる状況にあっては、現実性が落ちる仮定でないはずがありません。しかし日本の裁判所とは異なり、韓国の裁判所は何の疑いもなくこれを受け入れてしまったのです。

 ソウル行政裁判所行政14部(キム・ジョンジュン裁判長)は2019年の一審判決で、新古里5、6号機の建設許可の議決に欠格者が参加していたことなどを挙げ、許可処分を違法だと判断したにもかかわらず、処分は取り消しませんでした。行政訴訟法上、原告の請求が認められても、処分を取り消すことは公共の福利に反すると判断されれば棄却できるとする、いわゆる「事情判決」を下したのです。この事情判決は、今年1月に下されたソウル高裁行政10部(イ・ウォンヒョン裁判長)による二審判決でもそのまま維持されています。

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/988137.html韓国語原文入力:2021-03-25 04:59
訳D.K

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