福島第一原発で核事故が発生してから、11日でもう10年だ。大規模地震と津波で原子力発電所内の電源が失われたことにより、原子炉の冷却機能が喪失し、3基の原子炉で炉心溶融事故(メルトダウン)が発生するという、前代未聞の核事故であった。
事故当時、水素爆発とともに原子炉から大量の放射性物質が放出され、事故原発周辺の地域から10万人を超える人々が強制避難し、10年になる今も約1万3000人が放射能に汚染された故郷に帰れずにいる。
原子炉の炉心が部分的に溶けた1979年の米国スリーマイル島核事故、炉心が溶け格納建屋が爆発した1986年の旧ソ連のチェルノブイリ核事故に続き、2011年に発生した福島第一原発核事故により、大規模なメルトダウンが発生するのは10万年に1度、もしくは100万年に1度、という原子力界の「安全神話」は崩れた。
韓国の原発はチェルノブイリ、福島のような大規模な核事故を起こす危険性はないのか。福島第一原発の核事故を契機として、韓国政府は50件の原発安全改善対策を立て、昨年7月現在で、そのうち47件が実施完了したという。にもかかわらず、筆者の個人的な意見では、国内の原発でも大規模な核事故はいつでも起こり得る。政府の原発安全後続対策は、基本的に大規模な自然災害による原発事故を想定しているからだ。
福島のような核事故は、自然災害が原因でなくても起こり得る。類似の結果は、原発の冷却システムや電力システムなどの安全システムを無力化する軍事的攻撃、テロまたはサボタージュによって発生し得る。韓国の原発に対する敵のミサイル攻撃は簡単に思いつく一例だ。
原子炉を防護する格納建屋は、ミサイル攻撃に直接さらされる。核事故発生時に大気へ放出される可能性のある放射性ガスの流出を防ぐ格納建屋は、ミサイル攻撃により壁面に穴が開いたり亀裂が発生したりして格納能力を失うことになる。ミサイル攻撃で格納建屋内の圧力容器が直接損傷しなかったとしても、ポンプやパイプなどの冷却システムは破損しうる。ポンプやパイプが破損して冷却水を循環させられなくなれば、メルトダウンを起こす可能性がある。また、ミサイル攻撃で外部の電源が切れるほかにも、所内の非常ディーゼル発電機が損傷する恐れもある。電気がなければ、原子炉の非常炉心冷却システムは作動させられず、メルトダウンにつながる恐れがある。
同じ原因で、格納建屋の隣の一般コンクリート建屋内にある使用済み燃料プールも、冷却システムが直接もしくは間接的に損傷し、使用済み燃料の火災事故につながり得る。使用済み核燃料プール火災事故によって周辺環境に漏れる放射能の規模は、福島第一原発事故の規模をはるかに上回る。
昨年11月に米国原子力学会に発表した筆者の研究では、古里(コリ)3号機の仮想メルトダウンにおける強制避難対象となる国内人口は平均約230万人、最大約1290万人であったのに対し、古里3号機の仮想使用済み核燃料プール火災事故における強制避難対象となる国内人口は平均約850万人、最大約5000万人であった。そして、事故による放射能は北朝鮮、日本、中国、ロシア、台湾などの周辺国にも大きな被害を与える。
原発核事故を事前に防止することは難しいだろうが、国内の軽水炉原発の場合は、使用済み核燃料プールの容量不足により密集貯蔵している現行の方式を一般貯蔵方式へと変更し、5年以上プールで冷却した使用済み核燃料は、より安全な金属コンクリート乾式貯蔵施設に移して貯蔵することで、使用済み核燃料プールの火災事故による放射能漏れの被害を大きく減らすことができる。
原発の重大核事故は常に起こりうるという前提の下、安全確保の努力は怠ってはならない。これは国家安保に直結する問題である。
カン・ジョンミン|原子力安全委員会前委員長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )