25日にサムスン電子のイ・ゴンヒ会長が死去したことで、イ・ジェヨン副会長が被告となっている「二つの裁判」にどのような影響があるかに関心が注がれている。二つの裁判はいずれも「継承作業」と関連しているため、イ・ジェヨン副会長側が「経営権の安定」を前面に立て、自分に有利な世論戦を繰り広げることもありうると見られている。
26日に予定されていた国政壟断事件の破棄差し戻し審裁判は、予定通り開かれることになる。パク・ヨンス特別検察官が、サムスン順法監視委員会の活動を量刑に反映するという裁判所に対して忌避申立てをしたが棄却され、再び開かれる裁判だ。26日の公判準備期日はもともと裁判日程を協議する手続きであり、被告人の出席義務はないが、ソウル高裁刑事1部(チョン・ジュニョン裁判長)は、裁判日程に関して意見を聞きたいとし、異例にイ・ジェヨン副会長に出席を要請していた。父親が死去したイ副会長は出席が難しくなったが、裁判部は日程を延期せず、裁判を再開する予定だ。22日には、サムスン物産の違法合併とサムスンバイオロジックスの会計不正容疑でイ副会長が追加で起訴された裁判の公判準備期日が、ソウル中央地裁刑事25-2部(イム・ジョンヨプ裁判長)の審理で開かれた。同日、イ副会長側の弁護人は「通常の経営活動」とし、検察の公訴事実を全面的に否定した。
先月、検察がイ副会長を起訴した当時、弁護団はサムスン物産の合併は「不安な経営権を安定させるために行われたもの」だとし、検察の公訴事実は「サムスン物産の合併に反対した投機ファンドのエリオットが韓国政府に対して起こしたISD仲裁裁判の主張と同じだ」と明らかにした。検察の捜査・起訴が経営権の安定を阻害しているという主張だ。こうした論理の延長線上で、イ・ゴンヒ会長の死去により、サムスングループの経営権を安定させる必要性がさらに高まったことから、「継承作業は国外の投機資本から経営権を守るためのもの」ということをより強く主張するものとみられる。
国政壟断勢力への贈賄事件の破棄差し戻し審裁判部が、イ・ゴンヒ会長の死去をサムスン順法監視委員会の実効性を検証する契機にする可能性もある。今年4月、パク・ヨンス特検の裁判部忌避申立てを棄却したソウル高裁刑事3部(ペ・ジュンヒョン裁判長)は、「二度と同じ犯罪を犯さないという意志を示したものと評価できるなら」順法監視制度を量刑理由として考慮できると判断した。サムスン裁判に詳しいある法曹界関係者は「当面の課題となった相続税納付と支配構造再編を、韓国社会に規定された法と原則によって実現できるかが、順法監視委の実効性を問うカギとなるだろう」と分析した。