本文に移動
全体  > 経済

サムスン、イ・ジェヨン時代の開幕…支配構造の再編・裁判の結果が課題に

登録:2020-10-26 06:19 修正:2020-10-26 09:03
相続・支配構造問題を解決すべき 
深刻化する経済不確実性が「乗り越えなければならない山」
サムスン電子のイ・ジェヨン副会長(中央)と息子のイ・ジホさん(右)、娘のイ・ウォンジュさんが今月25日午後、ソウル江南区のサムスン・ソウル病院に設けられたイ・ゴンヒ会長の葬儀場に移動している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 サムスン電子のイ・ゴンヒ会長の死去で、イ・ジェヨン副会長が今後、サムスンをどのようにリードしていくかに注目が集まっている。イ副会長は2014年にイ会長が倒れてから、すでにトップの役割を果たしており、急激な変化はないと見られる。

■「相続」と「支配構造の改編」の同時進行なるか

 イ副会長の前に置かれた最大の危険要因は、継承問題に関する“司法リスク”だ。現在、イ副会長は国政壟断贈賄事件の破棄差し戻し審と、サムスン物産と第一毛織違法合併及び会計不正事件の二つの裁判にかけられている。26日にはソウル高裁刑事1部(チョン・ジュニョン裁判長)の贈賄事件破棄差し戻し審裁判が予定されている。

 イ・ゴンヒ会長が保有している財産の相続過程も影響を及ぼすものと見られる。証券業界では、イ会長が保有していたサムスン電子の株式4.18%をはじめ、サムスン生命(20.76%)、サムスン物産(2.88%)などの相続財産価額が約18兆ウォン(約1兆6700億円)、これに対する相続税だけで約10兆~11兆ウォンに達するとみている。未来アセットのアナリストのチョン・デウ氏は、昨年11月に発表した報告書で「イ会長が保有する上場企業の持分に対する相続税は約11兆ウォン(約1兆200億円)」と予想し、「相続過程で保有しているサムスン電子株の一部売却を余儀なくされるだろう」と指摘した。イ副会長と特殊関係者が保有している株式の変動は避けられないという意味だ。

 イ副会長は6月末現在、グループの主力系列会社であるサムスン電子の株式の0.7%のみ保有している。サムスングループに対する彼の支配力はサムスン物産-サムスン生命-サムスン電子につながる出資構造に頼っている。イ副会長はサムスン物産の筆頭株主(17.33%)だ。現在、イ・ゴンヒ会長らサムスン電子の大株主及び特殊関係人(系列会社を含む)が持っている株式は合わせて21.36%(優先株0.25%を含む)だが、主要案件に対する議決権は15%までしか行使できない。「独占規制および公正取引に関する法律」(公正取引法)は、大企業集団所属の金融・保険会社が保有する国内系列会社株の議決権の行使について、経営権に関する主要案件を決議する際、大株主および特殊関係人が保有する株式の15%までしか議決権を適用できないと規定している。そのため、議決権を完全に使うことができないイ会長保有のサムスン電子の株式の一部をイ副会長が受け継いで売却し、相続税費用に充てると予想される。相続過程で持ち株会社体制への転換など、現在サムスンに求められている「正常な企業支配構造(コーポレートガバナンス)への改編」を処理する可能性も残っている。サムスン生命が保有しているサムスン電子株(8.8%)も、サムスンが解決しなければならない課題となっている。

■「半導体ビジョン2030」など経営能力問われる

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や米中間の貿易摩擦、半導体産業の地形変化など、経済の不確実性もイ副会長としては乗り越えなければならないもう一つの課題だ。COVID-19パンデミックの状況でもサムスン電子の今年第1~3四半期の実績は順調だった。しかし最近、米政府は華為技術(ファーウェイ)に続き、中国の半導体企業の中芯国際集成電路製造(SMIC)にも輸出規制を加えており、不確実性がさらに高まっている。最近ではSKハイニックスが10兆ウォン(約9300億円)を投資してインテルのNAND型フラッシュメモリ事業を買収したほか、今年9月には米国の半導体メーカー、NVDIAが日本のソフトバンクグループの子会社である半導体開発企業、アーム・ホールディングス(ARM)を400億ドル(約47兆ウォン)で買収するなど、世界半導体産業の地殻変動も進んでいる。こうした状況でイ副会長は昨年4月、2030年までに非メモリー半導体(ファウンドリ及びチップ設計)のグローバル1位を達成すると発表した「半導体ビジョン2030」を進めなければならない。

 「私は子どもたちに会社の経営権を継承しないつもりです…自分自身がきちんとした評価を受ける前に次の継承問題に触れるのは無責任なことだと思うからです」。今年5月6日、サムスン順法監視委員会の勧告で行われたイ副会長の謝罪で、メディアの注目を最も多く集めた部分だ。当時、大半のメディアは「4世に経営権継承せず」に重点を置いたが、イ・ゴンヒ会長が死去した後、さらに注目される部分は「自分自身がきちんとした評価を受ける前」という部分だ。イ副会長は当時、国民への謝罪で、父親ほど経営手腕を評価されていない点を自ら認めたうえで、「今後の役割」を強調し、本格的な経営に乗り出すことを予告した。

 以後、イ副会長は中国西安のサムスン電子半導体工場を訪問したのを皮切りに、現代自動車グループのチョン・ウィソン会長との2回の会合、オランダ半導体装備会社のASML訪問、ベトナムのR&Dセンター工事の現場訪問など、活発な動きを見せている。イ会長の死去で、イ副会長は経営能力について本格的な評価を受けることになった。

ソンチェ・ギョンファ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/967189.html韓国語原文入力:2020-10-26 04:59
訳H.J

関連記事