新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者が13日連続で“100人台”にとどまり、なかなか二桁に下がらない状況が続いている。社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)を強化し、感染拡大の勢いが弱まったのは確かだが、減少のスピードはそれほど速くない。今月末の秋夕(チュソク、旧暦8月15日の節日)の連休を過ぎると、新型コロナウイルスにさらに有利な冬季に入り、これまで経験したことのない“長期戦”が本格化すると懸念されている。専門家らは、状況がこれ以上好転しないことを考慮し、ソーシャル・ディスタンシングのレベルの調整と高危険群のための特段の対策が必要だと指摘している。
先月15日に100人を超えた新規感染者数は、サラン第一教会と8月15日の都心集会関連の感染者が多く発生した先月27日に441人でピークに達した後、徐々に減少している。15日0時現在、新規感染者は106人だ。韓国国内の市中感染は91人で、3日連続(99人→98人)で100人を下回り、少しずつ減っているものの、レベル1のソーシャル・ディスタンシングに下げる基準(50人)に至るまではまだ遠い。中央防疫対策本部(防対本)のクォン・ジュヌク副本部長は「減少傾向にあるのは間違いないが、スピードは思ったより遅い状況」だと述べた。2月29日(909人)に1日の最大新規感染者数を記録してから半月で(3月15日、76人)二桁に安定化した大邱(テグ)の新天地イエス教会を中心とした感染拡大とは明らかに異なる様相を呈している。
これは、集団感染の発生地が少なく、関係者を特定しやすかったため隔離措置と検査が比較的速やかに行われた当時とは、状況が完全に異なるからだ。まず、最近発生した集団感染が50件を超えるなど、全国で散発的な集団感染の勢いが衰えていない。その分、感染経路不明の患者の割合も高く、25%まで急増した。
患者の発生規模がさらに減らなかったり、再び感染拡大へとつながる可能性も排除できない。高麗大学安山病院のチェ・ウォンソク教授(感染内科)は「ソーシャル・ディスタンシングを(準3段階から)レベル2に緩和したため、確率的には新規感染者数が減る理由はない。ある集団に(ウイルスが)流入すれば、再び患者が急増する状況が発生する可能性も十分ある」と見通した。大規模な移動が予想される秋夕の連休を控えており、その後ウィルス伝播力が大きくなる冬季が本格化することも、COVID-19の統制に不利な条件だ。
問題は、現在の停滞期が長期化したり、再び増加傾向に転じた場合、市民が日常生活を正常に維持できなくなることにある。直接的に打撃を受ける産業分野はもちろん、小商工人などの被害も大きくなる。高危険施設に指定され通常営業ができなかった業種の事業主らは、すでに限界だと訴えている。
政府が前日、ソーシャル・ディスタンシングのレベルを調整すると発表したのは、このような状況を総合的に考慮した結果だ。政府に防疫助言をしている生活防疫委員会のキ・モラン国立がんセンター教授(予防医学)は「レベル3のソーシャル・ディスタンシングは、1日100~200人の患者発生状況でもかなり高いレベルが適用されるように設計された」とし、「しかし実際に施行してみると、患者減少のスピードに比べて(社会・経済的な)打撃が大きすぎる状況」だと指摘した。また、その代案として、ソーシャル・ディスタンシングのレベルを細分化し、全体的な防疫を強化するより、集団感染が引き続き発生する訪問販売業者などに積極的に求償権を請求する方法で“精密防疫”を実施する一方、1日の新規感染者数が1千人を超えた場合は、移動中止を考慮する必要があると提案した。
感染者数を劇的に減らすことができないなら、「被害の最小化戦略」が必要だという指摘もある。 チェ・ウォンソク教授は「強化されたソーシャル・ディスタンシングに社会が長期間耐え続けることはできないため、適正水準を維持しつつ、60歳以上の高齢者に対する保護対策を設けることで、重症・重篤患者を減らし、医療システムの負荷も減らす必要がある」と述べた。
疫学調査官や医療スタッフなど第一線の防疫スタッフに蓄積された疲れを減らし、再整備する機会も必要だ。これを受け、国立中央医療院は福祉部と増員の協議を終え、重患者室で1年以上または総合病院で3年以上の経歴を持つ経歴の看護婦73人、看護助務士5人を緊急採用することにした。中央事故収拾本部のイ・チャンジュン患者管理病床班長は「首都圏の重症患者専門の治療病床を64床から9月中に100床に増やし、首都圏だけで行なっているエリア別病床共同運用システムを全国各エリアで拡大施行する」と述べた。