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今度は尹錫悦と検察がケガをする番だ【コラム】

登録:2024-11-21 00:33 修正:2024-11-23 07:20
ソン・ハニョン先任記者
/聯合ニュース

 野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表の公職選挙法違反をめぐる裁判は、そもそも検察の起訴からして間違っている。公職選挙法に当選無効刑が定められているのは、反則によって当選した公職者を引きずり下ろすためだ。イ・ジェミョン代表のような落選者にあえて重刑を言い渡す必要はない。民主党に選挙費用434億ウォンを返還しろと命じるのも行き過ぎだ。

 政治は言葉で行うものだ。選挙では、金は縛り言葉は自由にすべきだ。政治家の発言に対する処罰は、有権者を欺くために明白に嘘をついたケースにとどめるべきだ。イ・ジェミョン代表がそのようなケースに当たるかどうかは、よく分からない。

 民主主義においては法治より政治が優位に立たなければならない。検察と裁判所が何かにつけて選挙と政党に介入するのは望ましくない。

 1987年の民主化以降、大統領選挙の結果に政治家と有権者は概して服してきた。選挙が終われば告訴・告発は互いに取り下げてきた。大統領に当選した者は選挙後もライバルを礼遇した。

 盧泰愚(ノ・テウ)大統領は、金泳三(キム・ヨンサム)、金大中(キム・デジュン)、キム・ジョンピル総裁と国政について協議した。金泳三大統領は任期末、検察の金大中裏金事件の捜査を中止させた。

 政治報復は行わないと約束した金大中大統領は、イ・フェチャン総裁と7回にわたってトップ会談をおこなった。銃風・税風事件が起きたが、検察はイ・フェチャン総裁を捜査しなかった。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時代には、ハンナラ党の「トラック1台分違法献金事件」が起こったが、検察はイ・フェチャン総裁を立件しなかった。李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)、文在寅(ムン・ジェイン)の各大統領の時代も、大統領選挙のライバルを検察が起訴したことはない。

 このような韓国政治の伝統を尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は破壊した。「尹錫悦検察」の起訴によって、イ・ジェミョン代表は11もの容疑で4つの裁判を抱えている。

 検察は、イ・ジェミョン代表が京畿道の法人カードを私的に流用したとして、業務上背任容疑でまたも起訴した。まさに「イ・ジェミョン殺し」だと言える。一体なぜここまでするのだろうか。

 現政権の司正の主要人物らは尹錫悦大統領、キム・ジュヒョン民政首席秘書官、パク・ソンジェ法務部長官、シム・ウジョン検察総長、イ・チャンス・ソウル中央地検長など、尹錫悦大統領と近いか、いわゆる「尹錫悦師団」出身の検事たちが完璧に掌握している。与党「国民の力」のハン・ドンフン代表も尹錫悦師団の出身だ。

 彼らはこれまでの人生で、人の過ちを見つけ出し、刑務所に送る仕事をしてきた。検察主義者たちだ。政権は有限だが、検察は永遠だと考えているのだろう。

共に民主党のイ・ジェミョン代表が18日、ソウル汝矣島の国会で行われる最高委員会議に入場している=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 彼らの目には、イ・ジェミョン代表は政治家ではなく、数多くの罪を犯した被疑者、絶対に監獄に送るべき「巨悪」と映っているのだろう。尹錫悦大統領をはじめとする一群の検察主義者たちが、検事の本能に従ってイ・ジェミョン代表を殺そうと襲いかかっている。これこそいま私たちが目撃していることの本質だ。本能によるものだから、罪の意識もないのだろう。

 まず標的を定め、それから重箱の隅をほじくるような捜査を行い、法の適用が可能なあらゆる容疑を一つも漏らすことなく起訴する。「尹錫悦師団」の典型的な捜査のやり方だ。後に無罪になろうが気にもしない。残忍過ぎるため、検察内部でも批判が強い。

 検察の特別捜査の伝説と呼ばれたシム・ジェリュン元高等検察庁長が検察同友会のニュースレターに「捜査10カ条」を寄稿したのは2009年。「刀は突き刺すとしてもねじこむな」、「被疑者の屈服ではなく承服を引き出せ」、「粘り強い捜査もよいが、追い詰めるのは禁物だ」、「捜査では枝葉を疎かにするな」、「毒入りの犯罪情報は避けよ」、「メディアとの関係はつかず離れず」など、珠玉のような内容だ。

 尹錫悦師団の行いは真逆だった。刀はねじこんだ。被疑者には屈辱を強いた。捜査は追い詰めるものだった。枝葉は捨てた。メディアとは癒着した。

 尹錫悦検察の「イ・ジェミョン殺し」は成功するだろうか。成功することもありうる。しかし、尹錫悦政権の没落につながる可能性もある。尹錫悦大統領とイ・ジェミョン代表は、政治の両極化の世において敵対的共生関係にあった。一方が倒れればもう一方も倒れる。

 シム・ジェリュンの捜査10カ条の最後は、「刀には目がない。使い方を誤ると自らもケガをする」というものだ。今度は尹錫悦大統領と検察がケガをする番だ。

 人々はこのようなことを言い出している。

 「イ・ジェミョンが有罪だって? それは分かるけれど、じゃあ尹錫悦は? キム・ゴンヒは?」

 キム・ゴンヒ女史特検は避けられない。「いつやるか」が残されているのみだ。

 検事大統領の不正をかばう堅固な盾、かつ野党弾圧の道具へと転落した検察は、最後は直接捜査権を奪われるだろう。重要な捜査は韓国型FBI(連邦捜査局)を創設して任せればよい。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1168314.html韓国語原文入力:2024-11-20 15:13
訳D.K

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