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盧武鉉・文在寅の17年構想を実現する「検察改革の最後の機会」

登録:2019-02-18 06:39 修正:2019-02-20 10:46
検察過去事委員会、来月で活動終了 
 
盧武鉉政権時代、国情院・警察の 
過去事は究明したが、検察は“例外”に 
検察の過去事真相調査は初めて 
 
過去事委員会、公捜処の必要性を勧告 
国会司法改革特別委、与野党の対立で空転 
参与連帯・民弁、立法を求める市民行動を予定
文在寅大統領が今月15日午前、大統領府で開かれた国情院・検察・警察改革戦略会議で冒頭発言をしている=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 「検察が自ら過去事に対する真相調査を進め、正す作業をしたのは初めてだ。国情院や警察などは行ったことがあるが、検察はまったくしなかった。検察の過去事真相調査がほぼ最終段階にあると聞いたが、真実や正義を立て直すことももちろん必要だが、再発防止に向けて、しっかりと制度的な装置を講じるところまで進めなければならない」

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は15日、大統領府で主宰した「国家情報院・検察・警察改革戦略会議」でこのように述べた。検察が過去を反省したからといって、検察に力を集中させた法と制度を改正せず、そのまま放置すれば、「水の掻き分け」や「引っ張ったゴムひも」のように、結局元通りになりかねないとして、「心配だ」と語った。大統領は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の死去後、2011年に出版した共著『検察を考える』でも、「警察はある程度過去事の清算を行ったが、検察はまったくしていない」とし、これを「既得権守護」だと批判した。

 検察はこれまで、過去の事件に対する反省の“例外”だった。盧武鉉政権が力を入れていた高位公職者不正捜査処(公捜処)の設置も暗礁に乗り上げた。文大統領にとっては、“友人”の死につながった盧武鉉政権の検察改革の失敗が、痛恨として残っているのかもしれない。「いま検察改革ができないのではないかと心配している」という文大統領の発言には、盧武鉉元大統領から文大統領自身につながる17年にわたる検察改革構想を、今回必ず完成させるという強い意志が込められている。

 文大統領が言及した国家情報院と警察の過去事真相調査は、盧武鉉政権当時行われた。文大統領が大統領府民政首席に続き、市民社会首席を引き受けた2004年11月、「国家情報院の過去の事件の真実究明を通じた発展委員会」と「警察庁の過去事真相究明委員会」が相次いで発足した。両委員会は、文大統領が再び民政首席と大統領秘書室長を務めた時期に本格的な活動をした後、盧武鉉政権の最後の年である2007年末、3年間の活動を終えた。

 文在寅政権が構想した検察改革の第1段階も、過去の検察権乱用事例に対する徹底した真相調査と、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の新設だった。検察の弁明の余地のない“捜査の素顔”を公開し、これを国民世論のテコにして、失敗と未完の歴史として残った検察改革を実現しようという構想だった。文在寅政権では、2017年12月に発足した法務部傘下の検察過去事委員会(キム・ガプペ委員長)にその役割が任された。

2017年12月、政府果川庁舎の法務部大会議室で行われた法務部「検察過去事委員会」の発足式で、キム・ガプベ委員長がパク・サンギ法務部長官と握手を交わしている=法務部提供//ハンギョレ新聞社

 法務部はこれに先立ち、2017年8月に法務・検察改革委員会(ハン・インソプ委員長)を立ち上げた。同委員会は、約1カ月で公捜処の新設勧告案と検察過去事委員会の設置勧告案を発表した。特に、検察過去事委に対しては「検察権乱用の再発防止のための根本的な対策の樹立」を最終目標として提示した。検察過去事委の委員長には、盧武鉉政権時代に国情院過去事委員や真実・和解のための過去事清算委員会の常任委員を務めたキム・ガプベ弁護士が就任した。キム委員長は「検察が過ちを自ら正す能力があるかを示す試験台になるだろう」と述べた。

 検察過去事委員会が約1年3カ月間の真相調査活動を終え、来月31日に解散する。運営の成果は、検察改革のテコにするという当初の大統領府の構想には及ばないという指摘が多い。にもかかわらず、文在寅政権3年目に入った今こそが、検察改革の最後のチャンスだという点には異論はない。政界はもちろん、法曹界と市民社会では「過去事の真相調査の結果を通じて、検察改革が必要なさまざまな部分に対する診断が出ただけに、国会立法につなげなければならない」という声が高まっている。

 検察過去事委員会は先月、李明博(イ・ミョンバク)政権時代の首相室の民間人不法査察事件を捜査した当時、検察が大統領府など上層部による介入の究明に消極的だったという真相調査の結果を発表し、公捜処(の設置)の必要性を勧告した。「政治的中立性を失った検察を牽制し、国家権力の違法に対して厳正に検察権を行使するためには、公捜処が設置されなければならないという点が明確に確認された」ということだ。さらに「大統領など政治権力に対する消極的な捜査と真相の隠蔽など、検察の問題点が総体的に表れた」と指摘した。当時、検察はこの事件を3回も捜査したが、大統領府の関連性など“上層部”を十分に捜査しなかった。文大統領が大統領府会議で「本来、公捜処は大統領を中心とする最高位層の権力者に対する特別司正機関」だとし、公捜処の新設に関する法案の年内の国会議決を強調したのも、同じ脈絡だ。

 検察の刃先は大統領府に向かわなかったものの、逆に大統領府と政府による捜査への圧力は、検察首脳部を通じてそのまま一線の捜査チームに伝わった事実も、検察過去事委員会を通じて明らかになった。先月、真相調査の結果が出た李明博政権時代のMBC(文化放送)「PD手帳」事件が代表的な事例だ。検察過去事委は、検察首脳部が当時、米国産牛肉のBSE(牛海綿状脳症)の危険性を報道した「PD手帳」制作陣の捜査チームに、「起訴と関係なく逮捕しろ」、「無罪判決でも構わないから、起訴しろ」と指示したことを明らかにした。また、検察の捜査権が犯罪容疑を明らかにするためではなく、政府政策への批判に対するいわゆる“お灸を据える”レベルの捜査だったという判断も下した。この事件は1審や控訴審、最高裁(大法院)で無罪判決が言い渡されたが、検察権の乱用に対する責任は誰も負わなかった。

検察=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 このほかにも、検察過去事委の調査は、検察の捜査慣行と立ち遅れた組職文化を再確認させた。捜査中の苛酷行為(カン・ギフン遺書代筆事件)を行っただけではなく、拷問の事実を知りながらも目をつぶっており(キム・グンテ拷問隠蔽事件、パク・ジョンチョル拷問致死事件)、警察の違法な捜査(三礼ナラスーパー事件)を統制できず、ずさんな捜査指揮(薬村五差路殺人事件)で真犯人を逃した。刑事処罰が難しいことを承知で、政権の意向に沿って逮捕・捜査・起訴(「KBS」チョン・ヨンジュ元社長の背任事件)した。同事件も同じく1審・控訴審・最高裁で無罪が言い渡された。検察過去事委はこうした検察権の乱用を統制するため、「法歪曲罪」の導入を積極的に検討することを勧告した。検事などが特定の人に有利に法を歪曲・解釈した場合、処罰するものだ。

 法務部は来月、最高検察庁を相手に検察過去事委の制度改善勧告の履行状況を点検する予定だ。これと関連し、チョ・グク大統領府民政首席は15日、大統領府会議後のブリーフィングで「文大統領は、法律改正前でも行政府にできるあらゆる努力を尽くすよう指示した。捜査権の調整に関する法律改正の前でも、検察自ら捜査権を制限できる」と説明した。その一方で「法律改正に比べると、限界がある」とし、「立法だけを残している」と強調した。

 検察改革立法を担当した国会司法改革特別委員会は、与野党の対立の中で空転している。文大統領と共に『検察を考える』を書いた仁荷大学法科大学院のキム・インフェ教授は17日、「検察過去事委などの制度改善勧告内容を誠実に履行した後、検察改革を含む権力機関の改革に積極的に取り組むべきだ」と指摘した。参与連帯の共同代表で、2013年に最高検察庁検察改革審議委員を務めたハ・テフン高麗大学法科大学院教授は「今後、検察権乱用が再発しないよう、改革案を設けることがより重要だ。公捜処の設置や検察に対する外部牽制など、様々な案が国会で議論され、立法されなければならない」と強調した。

 一方、参与連帯と民主社会のための弁護士会などは18~19日、公捜処の設置と国家情報院改革などを要求する国会立法要求市民行進をソウル汝矣島(ヨイド)の国会周辺で行う。

チェ・ウリ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/882497.html韓国語原文入力: 2019-02-17 21:44
訳H.J

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