検察の「国家情報院特殊活動費の大統領府への上納」事件の捜査が、カネの実際の受領者である朴槿恵(パク・クネ)前大統領に向け直進している。40億ウォン余り(約4億円)に達する巨額資金の用途の調査が進行中である中、朴前大統領と大統領府が昨年の総選挙当時、世論調査などを通じてセヌリ党の党内選挙に介入した疑惑など、公職選挙法違反の疑いも「もう一つの雷管」として浮上した。
5日、検察の主な関係者は「イ・ジェマン、アン・ボングン元秘書官の拘束収監で、朴前大統領を賄賂罪で処罰するための大きな峠を越えた」と評価し、「(40億ウォンの秘密資金の)用途はまもなく確認できるだろう」と明らかにした。国情院から「裏金」を受けて保管して出金する過程すべてが「朴前大統領の指示によるもの」という供述と証拠などを確保したため、容疑の立証に支障はないと見ているものだ。
検察は週末の間に上納金用途の精密究明および追加容疑を確認するための「念押し捜査」に力を入れた。この事件を受け持ったソウル中央地検特殊3部(部長ヤン・ソクチョ)は、拘束収監されたイ元秘書官、アン元秘書官を連日呼んで補強捜査する一方、イ・ヨンソン元大統領府警護官にも出頭を通知した。イ元警護官は在職時代に「注射おばさん」、「気治療おばさん」などの大統領府出入りを助け、他者名義の携帯開設にも関与するなど、朴前大統領のひそかな金遣いをよく知る人物に挙げられている。6月に法廷拘束され収監中のイ元行政官は、この日まで検察調査を拒否している。
検察は昨年4・13総選挙の直前に、大統領府が大邱(テグ)・慶尚北道(TK)地域のセヌリ党の党内選挙世論調査を行い、国情院に費用を代納させた事件の捜査にも拍車をかけている。検察は、セヌリ党の党内選挙に大統領府が介入しようとしたこと自体が公務員の政治的中立義務を違反したものと見ている。また、世論調査もやはり朴前大統領の指示があったという供述を確保したという。現行の公職選挙法(第86条)は、公務員が特定の政党や候補者の支持度を調査してはならないと規定している。
検察は特に、党内選挙の通過がそのまま総選挙の勝利につながる可能性が大きい大邱・慶尚北道地域で「秘密調査」が行なわれたという点に注目している。2カ月の間20回あまりも世論調査を行ったことから、いわゆる「真朴」候補に対する違法選挙支援があった可能性も念頭に置いている。「真朴」は「真実(忠実)な親朴槿恵」という意味で、2015年11月に朴前大統領が「真実(忠実)な人たちだけが選ばれるようにしてほしい」と発言し、登場した言葉だ。
捜査のスピードからして、朴前大統領の収賄や公職選挙法違反の疑いに対する直接調査も時間の問題だという観測が出ている。検察は拘置所訪問調査を含めて調査方法・時期などを検討中だ。朴前大統領が検察庁に出たのは、3月21日のたった一度きりで、3月末に逮捕収監後には5回とも拘置所訪問調査を受けた。