本文に移動

国際不平等パネルの設立、韓国政府の支持を期待する【寄稿】

登録:2026-11-04 07:23 修正:2026-11-04 08:30
ジョセフ・E・スティグリッツ | 米国コロンビア大学特別教授・ノーベル経済学賞受賞者
2025年11月4日、ノーベル経済学賞受賞者で米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ特別教授(右)が南アフリカ共和国のケープタウンで、ラマポーザ南ア大統領にG20不平等特別委員会が作成した報告書を手渡している/新華社・聯合ニュース

 私たちは不平等を、現代経済における不幸ではあるが避けられない特徴であり、経済成果のために甘受すべき不可避の妥協だとみなしている。しかし、そのどちらも事実ではない。不平等は、税制、労働市場、公共投資、経済運営の原則をめぐる政治的選択が生み出した結果だ。過去数十年間、こうした選択の多くは、資本に対抗する労働の力を弱体化させてきた。また、企業や超富裕層が税制の抜け穴を悪用することを放置し、公共投資の基盤を脆弱なものにしてしまった。

 筆者は、2025年の主要20カ国・地域(G20)議長国である南アフリカ共和国の委任により発足した「G20不平等特別委員会」の委員長として、この1年間、経済学者や専門家らとともに世界の不平等の現状を調査した。不平等がきわめて深刻であるだけでなく、その推移も危険なものであるという事実を確認した。これを受け、委員会は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)を参考に、「国際不平等パネル(International Panel on Inequality: IPI)」の設立を公式に提案する。IPIは、世界の不平等の規模と変化、原因と結果、対応の成否を科学的に厳密に評価し、定期的に発表する予定だ。この分析は、不平等の緩和を推進する政策立案者や各国政府、多国間機関にとって貴重な資産となるだろう。

 統計は現実を如実に示している。2000年以降に創出された富全体の41%が上位1%のものとなった。下位50%の取り分はわずか1%に過ぎなかった。個人資産が数千億ドルに上る人がいる一方で、世界人口の4人に1人にあたる23億人はまともな食事ができない。一部の国では、中産階級の崩壊を示す明白な証拠もみられる。まじめに働いても、薬を買ったり暖房を使ったりする余裕さえない人たちが増えている。

 不平等は経済成果を阻害するにとどまらず、民主主義に対する深刻かつ直接的な脅威となる。億万長者は超豪華ヨットや専用機を購入できるが、より大きな問題は、意思決定に過度な影響力を行使し、政治的な議題を形成できるほどの権力を金で手に入れることだ。世界各地で、企業や富裕層のエリートは、自分たちに有利な方向に法律や規制、通貨・財政政策を変え、強大な影響力を行使している。富の不平等が世界を理解するための情報経路を支配することにつながる点も重要だ。世界の10大ソーシャルメディア(SNS)プラットフォームのうち9つを超富裕層6人が支配しており、全世界のメディアの半分は億万長者が所有している。21世紀の公共圏は少数によって占有されている。これは私たちの社会の基盤を弱体化させ、政治に対する信頼を崩壊させる。

 極端な不平等は必然ではなく、各国政府が意図的に選択した政策の結果だ。政策によって生じた不平等は、政策によって解決できる。第一段階は、不平等の危機を科学的に厳密に追跡することであり、IPIがその役割を果たす。研究者たちの卓越した成果にもかかわらず、国内および国家間における不平等の変化やその原因と結果について共通の合意は足りない。人種、階級、性別による不平等の様相や、これを軽減する政策についても同様だ。これは、政策によって分配への影響が大きく異なる可能性があるため重要だ。税制改革はある分野での不平等を軽減できる一方で、別の領域では不平等を拡大させる可能性がある。貿易協定は経済全体には利益をもたらすかもしれないが、労働者の実質所得を減少させる可能性もある。技術の進歩は生産性を高める一方で、環境の持続可能性を損なう可能性もある。政府は決定を下す前に、こうした影響を把握しなければならない。数十年後に初めて判明するようなことがあってはならない。

 韓国でも不平等は重要な懸案事項だ。韓国銀行は、国内の富と所得の格差が拡大していると警告した。現在、韓国の上位10%が全資産の3分の2を保有しているのに対し、下位50%の保有割合は2%にも満たない。韓国政府が不平等の解消を優先課題とし、経済成長の恩恵がごく少数の最上位層にしか行き渡らない「K字型」経済の問題を指摘したのは妥当だ。過去にも韓国政府は、世界的な不平等の解消と持続可能な開発目標(SDGs)の第10目標(不平等の解消)の履行を支持してきた。

 この1年間、当委員会はブラジル、南アフリカ共和国、スペイン、ノルウェーの各国政府と協力し、IPI設立に向けたロードマップを策定した。この構想は、各国政府や国際機関、国連事務総長から強い支持を得ている。IPIの設立を推進する4カ国の政府は、9月末の国連総会で世界の指導者らとIPIの設立について協議した。李在明(イ・ジェミョン)大統領は、IPIの早期設立を支持することで、深刻な不平等に立ち向かう国際的な取り組みを主導する重要な機会を迎えている。李大統領と韓国政府の支持を期待する。

//ハンギョレ新聞社

ジョセフ・E・スティグリッツ | 米国コロンビア大学特別教授・ノーベル経済学賞受賞者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1285442.html韓国語原文入力:2026-11-03 08:12
訳M.S

関連記事