ホルムズ海峡への派兵の動きが具体化する中、韓国政府はホルムズ海峡に現地調査団を派遣した。メディアは派兵の損得を連日報じている。
派兵が国にとって利益になるのなら、派兵は正しいのだろうか。法理論家アラン・シュピオは「効率的契約破棄理論」を紹介している(『法的人間 ホモ・ジュリディクス』)。その理論は、約束を破ることが利益となるのであれば、利益の追求を当然の行動だとして奨励する。シュピオは、今日そのような法概念が広まっているのは、信念を計算できない価値とみなし、取るに足らないものだと考えているからだと批判する。そして「自身に有利な時にのみ約束を守る世の中では、言葉は何の価値も持たなくなる」と警告する。
「効率的契約破棄理論」を殺人や戦争に適用したらどうなるだろうか。殺人や戦争の方が利益になるのなら、それをやることこそ合理的なはずだ。幸いにも、人間の倫理と法律はおおむねそれらを禁じているが、例外的に許される場合がある。自分の命が脅かされている時だ。韓国にとって米国・イラン戦争はそのような事態なのか。イランにテヘラン路を占拠でもされたのか。
2003年3月、改革国民政党代表のユ・シミンはイラク戦争を大義名分のない戦争と規定し、派兵に反対した。しかし、開かれたウリ党の国会議員となった2004年6月には派兵賛成へと転じ、2004年12月の追加派兵の際には派兵反対へと再び立場を変えた。さらに1年後の2005年12月にはまたもや覆し、追加派兵に賛成した。考えが変わったというだけでは説明がつかない奇怪な軌跡だ。わずか2年あまりの間に派兵反対と派兵賛成の間を息を切らして行き来する様子は、チャートの変動に一喜一憂しながら売買を繰り返す株式投資家を連想させる。
ホルムズ海峡への派兵をめぐって意見が食い違うことはあり得る。ただし、ユ・シミンのような態度は最悪だ。そのような優柔不断な姿勢そのものが、韓国は最低限の原則すらない信頼できない国だと認識させてしまいうる。20年前に社会的対立を引き起こし莫大な血税が注ぎ込まれたイラク派兵が残した結果は、惨憺たるものだった。文在寅(ムン・ジェイン)元大統領は自叙伝で「イラク派遣を機として北朝鮮の核問題は望んでいた通りに進んだ。米国の協力を得て、6カ国協議という多国間外交の枠組みを作り上げた」と自画自賛しているが、実態は真逆だ。北朝鮮は核保有国となり、南北関係は破綻状態だ。
ホルムズ海峡派兵の代償は、イラク派兵よりはるかに巨大な災厄になるのは明らかだ。イラク戦争は、国連安全保障理事会の決議(1483号、1511号)という最低限の国際法的根拠と米国議会の承認があったが、今はそれすらない。イランの周辺国およびホルムズ海峡における船舶に対する攻撃を糾弾する安保理決議2817号は存在するが、どこにも軍事的介入は明記されていない。米国のイラン侵攻は議会の承認もなくトランプ政権が繰り広げた軍事作戦であり、当然ながら国連軍も平和維持軍も存在しない。韓国軍がホルムズ海峡に行けば単独参戦になる。敗戦すれば敗戦国の責任まで背負い込むことになる。
また、ホルムズ海峡派兵は違憲であると同時に、大韓民国の歴史の否定でもある。憲法5条1項は「大韓民国は国際平和の維持に努めるとともに、侵略的な戦争を否定する」と明記している。イスラエルのガザ虐殺、米国のイラン侵攻は国際平和を破壊する侵略の典型であり、ホルムズ海峡への派兵は当然にも憲法違反である。ましてや大韓民国は、帝国主義列強の侵略によって苦しめられ、彼らによって国土が分断された国だ。米国とイスラエルが主導する戦争への加担は、大韓民国の歴史的苦しみがどこに由来するのかを忘却した行為だ。
派兵は市民の命を死地に追いやることになるだろう。イラク派兵のザイトゥーン部隊などは主に復興と安定化という任務を担った。しかし今、ホルムズ海峡は実際に交戦中の戦闘現場だ。死亡確率はあの時とは比べものにならないほど高い。すでにイランが公然と警告したように、艦艇を1隻でも送った瞬間、韓国は米国とイスラエルの軍事同盟国かつ交戦当事国とみなされるだろう。そうなってしまうと韓国はホルムズ海峡だけでなく、イランに近いフーシ派の影響力の及ぶ紅海航路まで往来が困難になる恐れがある。
韓国が絶対にこの戦争に足を踏み入れてはならない理由は山のようにある。だから、派兵の損得を天びんにかけるようなまねはやめよ。同胞の命と引き換えにできる国益など存在しない。道ははっきりしている。ホルムズ海峡派兵反対。戦争反対。
パク・クォニル|メディア社会学者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )